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実写ドラマ「十角館の殺人」原作未読の民のネタバレ感想。

原作未読、なんならあらすじもほぼ見ずに騙されにいこうと見始めて、めちゃくちゃしっかりばっちりめためたに騙されました!

4話ラスト、守須くんが名乗るシーンでびっくりしすぎて一時停止。
「は?え?! ……ええええええ????!!!」という声を上げてしまい、真相がわかった後も、俳優さんが同じ人に見えない!笑
違う人じゃない?え?なんで?似てないよ???と思いながら、最終話の5話はほぼ放心状態で見終わり、友人と感想を語り合って、朝になってもう一度、1話から見返してみると、ものすごく配慮された映像の数々!

ヴァンくんの登場シーンでは、引きの画面ではマスクを外して、カメラが寄るとマスクをする。
顔を見せているようで、実は全然見せていない。でも、顔をちゃんと見せているかのような錯覚。
もちろん、ヴァンくんが犯人とわかっている人にはバレバレなんだけど、初見で見ると全然わからない。
あと、ヴァンくんはスウェット姿で、おなかまわりもダボついていて、なんだか体形がもっさりして見える。
一方の守須くんはシャープなアゴのラインが強調される服装や銀縁メガネ、そしてオールバックと、かなり知的でクールな印象にまとめてある。
もっさりスウェットのヴァンくんと印象が全然違う!!!
風邪だからという言い訳も理にかなっていてニクイ。

あと、ドラマおたくにありがちなキャストからの犯人推測を完全に封じられていて、私は孤島側の登場人物の俳優さんがほぼわからなかったです。
唯一、長濱ねるさんだけは名前を知っていましたが、顔はあまり覚えていないぐらいでした。

逆に本土側(と過去の人物)には、有名どころがそろっていて、真犯人級でもおかしくない。
仲村トオルさん、前川泰之さん、草刈民代さん、角田晃広さん、濱田マリさん、全員名前も顔も一致していて、いかにもありそうなキャスト陣。
正直、真相がわからなさすぎて、青木崇高さんや奥智哉さんも疑いました。
それぐらいキャストからは読めない。いつものドラマ名探偵ができない!!!笑

見返していて気づいたのですが、ヴァンくん役の小林大斗さんは、声に特徴がないんですよね。
覚えにくい声というか、同じ人だと思って聞いても、なんだか同じと確証が持てない。
もしかしたらオーディションでは、そういう点も考慮されたのかなと思いました。

全体的に、違和感やおかしい点、犯人だろうなと推測はできるのに、証拠が出ない感じ。
守須くんの前髪が落ちるシーンは、見上げる目線も込みでゾゾゾゾゾ……っと恐怖すら感じました。

シンプルな話なら、もっとヴァンくんに注目もできたんだろうけど、話が飛びまくるし、登場人物全員のキャラが濃いので、そっちを追うとどうしてもそこまで気を回せない。
エラリイの演説やアガサのヒステリーなど、おもしろいので脳内でついついそっちにツッコミを入れていると、ヴァンくんをスルーしてしまう。
そういう情報統制の演出が素晴らしかったなと思います。

ちなみに、私はモーリス・ルブランもヴァン・ダインの名前も知らなかったのですが、コナン=江南という関連のあるあだ名だという思い込みは、見終わった後もずっと残っていました。
なんなら、守須くんとヴァン・ダインという名前が関連があるんだとさっきまで思い込んでいたぐらいです。自分が知らないだけで、ミドルネームやヴァン・ダイン作品の登場人物にそういう名前の人がいるのかな?と思っていました。
原作のネタバレなどを読んでいて、そこ(関連があるという思い込み)が肝なんだと知り、え?今の今まで騙されていたの?と、自分のうかつさに驚いたほどです。

ここからは、めちゃくちゃ個人的な驚きとドラマおたく的見解なのですが、私が今回「十角館の殺人」を見ようと決めたきっかけは、監督が内片輝さんだったからです。
私は、内片監督のファンなのですが、地上波では「アナザーフェイス」や「シグナル」など、明るめの映像と人間の優しさやすれ違いにフォーカスした映像で、WOWOWではダークで重々しい映像と苦悩する人物像が特徴的だなと感じていました。
今回、どっちのタイプの演出でくるんだろう?と思っていたのですが、結果はどちらとも違っていました。
本格ミステリ的な、ある種の明るさがありつつ、人物描写にもある程度の重さとリアリティを乗せていて、とても素晴らしいバランスの演出になっていると思いました。

演出家の方は、けっこう自分の「色」みたいなものが出やすいと思うのですが、内片監督は、その作品に最適な演出方法を選択できる、とんでもない職人気質と作品愛にあふれた方なんだと、私は思いました。
本当に本当に素晴らしかったです。

【追記】2024/03/26
あまりにハマりすぎて、見返し3回してました。

初見で見た時、守須くんの肌色が印象として<白>だったのはなぜなのか考えていました。(実際は浅黒い褐色)
コナンくん・島田さんと室内でしゃべっているシーンで、守須くんの顔に強めのライトが当たって、白飛ばしされていることに気がつきました。
しかも、守須くんのライダースの服は黒。より肌が白く見えるように工夫されていました。
一方のヴァンくんは、薄いグレーのスウェットで、浅黒い肌が際立つような配色。十角館の暗い照明のせいで、より肌が黒く見える。
これ、あの有名な「明暗の錯視」!!

映像作品ならではの仕掛け、すごいですね!

日頃、屋内外で人物を撮影する際に、肌色の統一感などに苦労されてるんだろうなと思わせる技術力を感じました。あ~すごい!

あと、中村青司役を仲村トオルさんが演じることで、私はどうしてもそっちにつっこみを入れたくなってしまいました。
要所要所に出てくるキメキメの仲村トオルさんの写真が、なんか笑えてしまうんですよ(すみません笑)
中村=仲村効果は、コナン=江南のようなサブリミナルを私に与えていました。完全に。

まだまだ気づいてない仕掛けがありそうで、もっとじっくり見てみたいです。

【好きなキャラクター性】
好きなキャラはなんといっても島田潔です。
明るくて飄々としていて、いい加減でかっこいい。
彼は「楽しい」から行動するという、名探偵にふさわしい好奇心の塊で、私の一番好きなタイプの人物像です。
最終話、守須くんの回想シーンでは、疲労困憊でいら立つ犯人に向かって「暇だから」と言ってのけるカットは最高でした。

楽しくて暇な人間は、誰にも止められない。
あんなの相手にしたら、犯人は絶望だよねーと思いました。

それはエラリイにも思うのですが、彼はずっと謎解きを楽しんでいて、最後も睡眠薬で眠ったまま亡くなりました。
むしろ幸せだったんじゃないかとさえ思えます。

千織ちゃんの動機について。
一緒に見ていた友人(男性)は、千織ちゃんの動機がわからないと言っていました。ここはもしかしたら男女差が出るのかもしれないと、ふと思いました。
ドラマでは自らお酒を飲んだのではないか?という説で終わっていました。
私は、千織ちゃんの気持ちがなんだかわかります。
せっかくの誕生日なのに、恋人が帰ってしまう。そのことにすねていたような気がします。
本人も死ぬとは思っていなかったけど、少し具合が悪くなれば、心配して戻ってきてくれるかもしれない。そうしたら、みんなに二人の関係をバラせるかもしれない。そんな乙女心があったのかなと想像します。
そもそも、家庭環境も複雑な女の子で、20歳になったばかり。
そういうかまって欲しいという面倒な気持ちは、誰しも身に覚えがあるのではないかなと思います。
ただ、私の友人は「なんや、そんな女。うざいな」と身も蓋もないことを言っていました笑 ひどい。


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