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いつか見たオオサンショウウオ(クリエイティブライティング講座より)
田口ランディさんのクリエイティブライティング講座に参加中。
前回講座内で20分ほどで書いたもの
↓
「いつか見たオオサンショウウオ」
オオサンショウウオが流れていった。
暗く重く、テラテラしたぬめりを伴って。
圧倒的な質感のそれは、目の前の小さなドブ川の浅い流れの上を直線に、滑るように流れていった。
左から右へ。
迷いなく。
私は胸にオオサンショウウオが入ってきたような気がして思わず息を飲んで、そして何か凄いものを見たと思った。
私は何か常ならぬものに遭遇したのだ。
兵庫県西宮市のごく普通の住宅街に生まれた私は全く喋らない小学生の女の子だった。
どれくらい喋らなかったかというと、誰かに話しかけられてもとりあえず黙殺した。
何か不安がそこにあったわけではない。
ただ、その行為の意味がわからなかったのだ。
他者の言葉は私に投げかけられたものだとは思えなかったのに、どうしてそれに応える必要があるだろう?
私の中はいつも真空で、暗く、しんと静まり返っていた。
誰も私の心に入ってきて触れることはなく、私も誰かの心に入って触れようとは思わなかった。
私の周りにある世界はいつも生き生きしていて、色づいていて、
私はいつもそれを静かに見ていた。
私は私でいて、世界は世界だった。
オオサンショウウオが足元を流れて行ったのを見た時、私の体温が少し上がった。
西宮の街中の、自宅の前の浅いドブに天然記念物のオオサンショウウオが流れるわけがない。
でも私はそれがオオサンショウウオだと一目でわかった。
流れに乗って左から右へ、あっという間に行ってしまったけれど、
大きな頭、ぬめる黒褐色の太い体躯、短い手足に太い尾。
化け物オタマジャクシのようなそれは、体長40センチほどのオオサンショウウオだった。
見たのは多分私だけ。
一瞬で行ってしまった。
私に特別なことが起こったと思った。
この特別なことは私の心を温めて、私を特別な女の子にした。
私は白昼夢を見ていたのだろうか?
しかし大人になってから近所の川の上流にオオサンショウウオがいたという新聞記事を見た。
ああ、その可能性はゼロではなかったんだ。
大人になった私の中ではあの出来事は白昼夢か、夢で見たことだったんじゃないかと思えていた。
(※ほんとはこの後にまだ数行続いたんだけど、小説としてだったらこれ以降は要らないとのことでした。)
(※その数行はコレ↓これをつけるとエッセイや随筆のカテゴリーになるそうです)
ひたすら寡黙な少女だった私は
その後中学生になり、やはり寡黙ではあったけど、
人の語る話に心を開き、耳を傾け受け入れることで世界と交わるようになっていった。
(※自分でも書いてて、この最後の後日談的なのはまとめすぎた(余分)かなと思ってました)
(※ふんわりとしか内容確認せずに申し込んだんですが、「クリエイティブ」ライティング、つまり文章の創作講座だったことに参加してから気づきました)
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