日本酒を編集し、身近なものに。 「きょうの日本酒」の3年間と、これから。
2021年11月に創業したきょうの日本酒株式会社が、昨年末に3年を迎えました。
3年前、こうできたら良いなとぼんやり描いていたことが、少しずつですが実現できていることを嬉しく思うとともに、より具体的に、そして大きくなった目標を見据えて、まだまだここから20年30年やっていくぞ、というのが今の素直な気持ちです。
この3年を振り返ったときに、本当にたくさんの方に支えていただきここまでやってこれたということを改めて実感し、感謝の気持ちをお伝えしたく、今回noteにまとめることにしました。
また、「きょうの日本酒」がこれまでやってきたこと・今後目指す方向性や、日々なにを考え、なにを大事にしているかなど、まとめて発信する機会もこれまでなかったので、
創業から3年が経ったいまの、ありのままの姿・考えを記録に残しておきたいと思っています。
ブランド立ち上げ時に、「なぜ一合瓶の日本酒ブランドをやるのか」を書いて以来、2年半ぶり2本目のnoteです。
(発信するのが得意ではなく、どうしても億劫になってしまうのですが、2年半前のnoteもいまだに見ていただけているのが嬉しく、今回ようやく決意して約3年分の振り返り書くことができました)
仲間である酒蔵は6蔵から18蔵に
きょうの日本酒は最初、2022年6月にMakuakeでのクラファンで始まりました。
当時は6つの酒蔵さんとご一緒させていただく形で始まりましたが、現在は18蔵と3倍になりました。
北から順に、南部美人・大納川・土田酒造・富美菊酒造(羽根屋)・本田商店(龍力)・板倉酒造(天穏)と、本当に錚々たる蔵のみなさまが、実績もなにもない私たちを信じてご一緒してくださり最初の6蔵となってくださったこと、今振り返っても奇跡のようなことだと思っています。本当に感謝でいっぱいです。
そして、現在ご一緒させていただいている18蔵は、全国各地の蔵にお伺いし、蔵元・杜氏・作り手のみなさまとたくさんお話しさせていただきながら、ぜひお届けしたいと思ったお酒とひとつひとつ出会い、そのご縁の積み重ねでいまに至ります。
思い入れがあり、魅力的な個性溢れる酒蔵さん・お酒たちです。
わたしたちの活動を信じて協力してくださる酒蔵のみなさまあっての、きょうの日本酒です。
これからも、美味しいお酒をきょうの日本酒のお客様にお届けしていけることを嬉しく思っています。
ご縁の積み重ねで、きょうの日本酒をお届け
きょうの日本酒は、2022年12月に本ローンチをしたのですが、そのときローンチパーティをしたのが日本橋兜町にあるHOTEL K5でした。
ローンチパーティ時にHOTEL K5のGM渡邊加奈子さんと出会い、ブランドに共感いただき、なんとそのままHOTEL K5に導入いただくことになるという、ご縁に恵まれたスタートでした。
その後も、あらゆるご縁の積み重ねで、蔦屋書店様(代官山・二子玉川・中目黒・柏の葉)、FOOD&COMPANY様、成城石井様、伊勢丹新宿店様、MOO:D MARK by ISETAN様、東急百貨店様、と、これ以上ないほど素晴らしく、相性のよい店舗のみなさまに、現在お取り扱いいただいています。
ひとつひとつのお取引が現実になる度に、創業当初から夢見ていた売り場にきょうの日本酒を置いていただく日がくるなんて、、!と、感慨深い気持ちでいっぱいでした。
イベントを通して形づくられた、きょうの日本酒の世界観
きょうの日本酒は、実店舗を持っていません。
そんな中で、これまで20回以上のイベントを実施できたのは、ご一緒させていただいたブランド様・ホテル様・飲食店様のおかげに他なりません。
20名くらいのサロンのような形でゆっくり向き合ってお話しさせていただくものから、ナチュールワインと日本酒を飲み比べる200人規模のお祭りのようなイベントまで。
時には、ベトナム料理とペアリングしたり、アイスクリームに日本酒をかけてみたり。
直近では、作家さんにご協力いただき、30種類ほどの一点物の酒器をさまざまに試しながら23銘柄を飲み比べるという贅沢な企画や、荒木町のスナック「猫目」さんでの1日限定の日本酒会など。
ひとつひとつ、ぜんぜん違うものに聞こえるかもしれませんが、一貫してやりたかったのは、日本酒をより自由に愉しんでいただく、ということでした。
わたしたちは「愉しむ」という言葉をよく使うのですが、「楽しむ」と比較してより能動的にお酒に向き合いその面白さを感じていただきたいという思いであえて使っています。
日本酒はこうしなきゃいけない、日本酒はこうあるべき、という考え方は取り去る。
同時に、日本酒の由縁や酒蔵さんの想いや個性、ひとつひとつのお酒の面白さはしっかりとお伝えし、その情緒も含めて味わっていただく。
日本酒をトニックウォーターで割った日本酒トニック、ほうじ茶の茶葉を日本酒で抽出した日本酒カクテル、茶道具で日本酒を点てて味の変化を愉しむなど、実験的な試みも様々にしてきました。
そういった数々の活動を通して、日本酒に真剣でありながら、自由さ・新しさを取り入れつつ、これまで日本酒に興味を持たなかった方たちにも日本酒に触れるきっかけを持っていただくという、きょうの日本酒らしいあり方が築かれてきたと思っています。
改めて、きょうの日本酒に共感いただきイベントをご一緒してくださったみなさま、本当にありがとうございました!
▼イベントの様子はこちら
日本酒業界の外側から日本酒を見つめ、日本酒人口を増やす
イベントもそうですが、きょうの日本酒は常に、「日本酒に馴染みのない方にきっかけつくる」ことを指針に活動しています。
毎月3蔵が廃業している日本酒業界です。20〜30代の70%・全世代の女性の74%が、1年以内に日本酒を飲酒していないというデータもあります。(参考:楯の川酒造株式会社 飲用実態調査 / 2022年2月)
20~30代の70%が1年以内に日本酒を飲酒していないということは、「日本酒を普段購入する人」はおそらく10%に満たないのではないでしょうか。ならば、90%以上を占める「日本酒を普段購入しない人」に向けて、日本酒を手に取ってもらえるようにきっかけを作ろう、というのがきょうの日本酒の考え方です。
日本酒業界の中を向いて活動するのではなく、外を向いて、より大きな層である「日本酒に馴染みのない方」に向けて活動することが、日本酒人口を増やし、業界を活性化することに繋がると思っています。
わたしは大学生のときに日本酒に出会い、以来10年以上、いち日本酒好きとして日本酒に親しんできましたが、3年前にきょうの日本酒を創業するまでは、日本酒の仕事をしたことがあるわけでもない、いわゆる業界の外の人でした。
きょうの日本酒を一緒に立ち上げ、ここまで作ってきたメンバーたちも、それぞれクリエイティブ・エンジニア・日本の文化を伝える仕事など、日本酒とは関わりのないバックグラウンドを持った人たちです。
異なるバックグラウンドを持った人が集まるチームが、酒蔵を訪ね、蔵元・杜氏・作り手のみなさんと対話を重ね、たくさんのお酒と日々向き合う中で出会う「日本酒の面白さ・魅力・伝えたいストーリー」は、時に日本酒業界にとってはずっと昔から当たり前にあるものだったかもしれません。
「酒蔵さん・作り手のこういう姿・想いを伝えたい」「日本酒に馴染みのない方に伝えるにはこういう見せ方・伝え方ができたら良いのでは」というように、わたしたち自身が体験した面白さや魅力を、自分たちの視点で編集していきます。
間口は広く、体験は深く
商品作り・ECサイトも同じです。
日本酒を普段購入しない方が手に取りやすい一合瓶。
日本酒の知識がなくてもお酒を選ぶことができ、愉しむ補助線となる酒読。(瓶首の140字の言葉)
銘柄ではなく、直感(色)でお酒を選ぶ酒色や、シーンでのお酒選び。
どれも、日本酒をより身近にし、手に取りやすくするための仕組みです。
有難いことに、きょうの日本酒ではじめて日本酒を買った、という声をとてもよく聞きます。まさに、そういったきっかけ作りを目指して活動しているので、嬉しい限りです。
同時に、「xx酒造のお酒が美味しかった。柑橘の香りだったから、今回はこの料理にあわせてみた。xx酒造の情景を感じて、ファンになった」のような、能動的に愉しんだ上でのご自身の体験からくる言葉をいただくことが、本当に嬉しいです。
わたしたちは、日本酒を身近にし、魅力を広く伝えるために、間口を広くすることを目指していますが、同時に深さのある体験を提供したいと思っています。
お店の大将が日本酒について紹介してくれると、途端にその美味しさを見つけやすくなり、印象深くなるように、
丁度良い情報が補助線としてあると、体験はぐっと深まり、印象に残ります。
自分たちが日本酒を愉しんでいてぐっとくるのは、やはり酒蔵さんの想いやこだわりに触れた時でした。だからこそ、そういった情報を「余すことなく丁度よく」お伝えできるように、紙筒の140字に込めたり、自分たちで撮った写真に言葉を添えて、お酒に同梱しています。
ちなみに、きょうの日本酒のECサイトでは、米ぬか蝋で作られたキャンドルも取り扱っていたりします。
日常を潤す道具のひとつとして、日本酒も手にとっていただきたいという考えから、日本酒とキャンドル等を並べて販売しています。これはまさに、間口を広くするためのものです。
日本酒を探している方が辿り着くだけではなく、日々を潤したい・ケの中のハレを作りたいときの道具としての日本酒という形で、より多くの方に日本酒を身近に感じていただきたいと思っています。
「間口は広く、体験は深く」を、これからも作って参ります。
デザインのちから
ここまでやってこれたのは、デザインの力も大きいと思っています。
きょうの日本酒は「一合瓶の日本酒ブランド」ですが、同時に、「日本酒に関する体験やコミュニケーションを編集・デザインしているブランド」です。
従来の一升瓶や四合瓶ではなく、一合瓶だから生まれる体験。家にきょうの日本酒をストックして、きょうはどれにしようかなと選んだり。
誰でもわかる言葉で140字に凝縮した、蔵とお酒の情景を伝えるコミュニケーションが瓶首にあるから、体験が深まり印象に残る。
この体験とコミュニケーションの設計に、とことんこだわっています。
瓶・袋や各種ツールのデザインは、KAAKAさんというデザインチームが創業時からずっと二人三脚で作ってくださっています。
「小容量で、日本酒を身近にしたい」「誰でも日本酒の魅力を味わえるようにしたい」など、ブランドを通して作りたい価値を見事に実現していただきました。
はじめてきょうの日本酒の商品ビジュアルの提案資料をみたときから惚れ込んでいましたが、3年たった今、当事者である自分自身がまだまだプロダクトを見飽きることなく、心から良いものだと思えることが実はとても嬉しかったりします。
そんな圧倒的なデザインの力もあり、きょうの日本酒はこれまで、有り難いことに数々の賞をいただきました。
・グッドデザイン賞2023
・日本パッケージデザイン大賞2025 金賞
・TOP AWARD ASIA
・ガラスびんアワード
最強のチーム
3年前に描いていたことをひとつひとつ達成し、ブランドとして着実に力を積み上げられているのは、日々一緒にもがき考え進み続けてくれる、最強すぎるチームのおかげです。
実はきょうの日本酒はとても小さなチームでやっています。
その分、ひとりひとりがブランドへの深い理解と当事者意識を持ち、さまざまな角度から異なる視点を持ち込むことで、力強く新しい挑戦を続けることができていると思います。
このチームがいまのきょうの日本酒を形づくる根幹でもあり、本当に良いチームで取り組めていることに日々感謝でいっぱいです。(これ以上ないチームを作れたことを、個人的にもとても嬉しく、誇りに思っています)
前述した通り、きょうの日本酒チームは、クリエイティブ・エンジニア・文化を伝える仕事など、異なるバックグラウンドを持った人たちの集まりです。
ただ、共通しているのは、お酒や食への貪欲なまでの熱量と、良いと思ったこと・面白そうだと思ったことをとりあえずやってみる姿勢だと思っています。そして、全員がきょうの日本酒の「編集者」の目線を持とうとしています。
酒蔵を訪ねる際やイベントの際、全員カメラを持ち、それぞれが魅力だと感じたものを切り取ります。
SNSは、ブランド人格を保ちつつ、実はチーム全体で運用しています。誰が投稿しても、「きょうの日本酒」らしい投稿になります。
webサイトの商品説明や文言は、誰が書いたかわからないくらい、ブランドとしての言葉を全員が自然と書けるようになっています。
イベントや試飲会でのお酒の提供も、それぞれの言葉を使いつつも、全員が同じ深さで語っています。
人が作るブランド・プロダクトなので、作り手の人格や姿勢は必ず滲み出ると思っています。長く愛されるブランドを作っていけるように、これからも自分たち自身が成長しながら、ぶれずに挑戦し続けるチームでありたいと思っています。
<きょうの日本酒チーム>
・奈雲政人(クリエイティブディレクター)
・南部旭彦(事業開発・エンジニア)
・小川絵理奈(PR/SNS・酒蔵さん連携・在庫管理)
・石津衛門(在庫管理・SNS・ webサイト分析)
・山内祐治(日本酒ディレクター)
・濱道佐和子(創業者・代表)
ここには書ききれないですが、これまできょうの日本酒に携わり、一緒に作ってくれた方ひとりひとり、みなさんに感謝でいっぱいです!!
今後の挑戦:場づくり、「日本酒を遊び、文化を編む」、海外進出
実は、きょうの日本酒は今年、大きな挑戦をいくつか控えています。
まず、4月に池尻大橋にお店をオープンします。もう一年以上、ずっと計画していたものなのですが、ようやく場所も決まり、お伝えできるところまできました。
「日」:https://www.instagram.com/hi.ikejiri/
3年間、拠点を持たずに活動してきましたが、「間口は広く、体験は深く」日本酒を提案・提供したいと思ったときに、きょうの日本酒の一合瓶の商品だけでなく、自分たちの場が必要になり、少し前から考えていました。
日本酒に少し遊び心を加えた提案や、酒場としての気の利いた料理を提供します。(もちろん、シンプルにそのままの日本酒もしっかりとご準備しています。厳選した魅力あふれる日本酒を、その魅力が一番伝わる形でお出しします!)
日本酒に向き合ってきたチームとして、自分たちが提案したい体験を、場づくりを通して細部までこだわり尽くしてお届けしたいと思っています。
ちなみにお店の上の階には、工房のような場を構えます。
「日本酒を遊び、文化を編む」というコンセプトで、実験的な活動をしていきます。
日本酒人口を増やすことを考えた時に、前述の「間口を広げる」アプローチとともに、
もうひとつのアプローチとして、「他の文化との交わりを作る」こともあると思っています。たとえば、お茶x日本酒、本x日本酒、など。
他の文化と日本酒とが交わることで、日本酒をレンズとしながらその文化に対しての新たな発見があったり、逆に日本酒の新たな魅力をその文化との交わりを通して発見したり。
他の文化と交わるからこそ、文化としての日本酒をより意識・体験できると思っています。古来からの日本酒の役割・文化に敬意を持ちながら、自由さをもって愉しみ、現代における日本酒のある新たな景色を見つけていきたいと思っています。
そしてもうひとつ、来年は海外への進出を強化します。
先日11月に、香港でPOPUPの機会をいただきました。MIDWAYさんという、とても素敵なセレクトショップさんからのお声がけで実現した企画でした。
そこで感じた、香港での日本酒への熱量は想像以上で、海外でも一合瓶日本酒ならではのシーンがあると、改めて感じることができました。
来年は、より本格的に海外に進出をしていきます。
前述の通り、わたしたちは小さいチームなのですが、店舗オープン・海外輸出をはじめ、来年もいくつもの大きな挑戦が控えています。
きょうの日本酒が目指す形に共感いただき、まだ正解がわからないものにひとつずつ向き合って、一緒に形にしていく仲間を探しています!
(ご興味のある方、contact@kyouno.jp までご連絡ください!)
さいごに
きょうの日本酒がここまで来れたのは、日々ご協力いただいている酒蔵のみなさま、ご縁をいただいたお取引先のみなさま、イベントや企画などさまざまな形でご一緒させていただいたみなさま、そして常に一緒に挑戦し続けられる最強のチームがあってのことです。
今回のnoteに書ききれないエピソードもたくさんあります。
お世話になったみなさまへの感謝を、最後にお伝えさせてください。
有難いことに、外から見ると上手くいっているように見えると言っていただくこともたまにありますが、本当にばたばたで、常にぎりぎりで。個人的には3年間耐えた、という感覚です。笑
たまに立ち止まってみたときに、ここまでこれたことに感謝の気持ちとほんの少しだけの自信を持ちつつ、まだまだここから、さらに大きな目標を目指してぶれずに根気強く進んで参ります。
きょうの日本酒 代表
濵道佐和子