【音楽】くるり アルバム「感覚は道標」レビュー
10/4にくるりの14作目のアルバム「感覚は道標」がリリースされた。
多くのバンドやアーティストは長い間活動をしているとその音楽性やアプローチなどが変化していく事が多いが、くるりは特にアルバム毎で様々なジャンル、リズムを取り入れバンド編成含め変化の激しいバンドだが、その変化こそが魅力の1つと思っている。
今作はリリースの発表と同時に大きなトピックが2つあった。
今作は20年ぶりにオリジナルメンバーのドラム、森信行(もっくん)とともに3人で制作されているものという事。
今作の制作過程がくるり初のドキュメンタリーとして映画化される事(10/13公開)
もっとも、もっくんとは脱退後も3人で音博のステージに立ったりと共演をしている。しかし、作品、まして1枚のアルバムを3人で制作するというのはファンにとっても嬉しいサプライズだった。
くるりは今年いくつかのリリースをしており、まず年明けに映画タイアップになった「愛の太陽」を含む、昨年などにリリースしたタイトルを含めた「愛の太陽EP」をリリースしていた。
「愛の太陽」も個人的に大好きなのでまた別の所で書きたいと思う。
そして、アルバムリリースが発表された後、アルバムの先行曲として「In Your Life」と「California coconuts」がリリースされていたが、どちらの曲も素晴らしいものだった。
くるりの曲は所謂J-POP的な作り「Aメロ、Bメロ、サビ、大サビ」という概念を取り入れてないものが殆ど。ヴァース(=Aメロ)→コーラス(=サビ)という流れの曲が多いイメージ。
「ワンダーフォーゲル」などは敢えてJ-POP的な作りを意識されての楽曲なので、くるりのその他の曲と並べると少し特殊な存在に感じる(それはそれでまた良い)。
この先行曲2曲もコーラス(=サビ)と言われるものは曲中に1回出てくるだけで、トータルの尺も4分弱となっている。
個人的にポップ、ロックソングは短いものが良いと思ってる(映画もそう)。
ダラダラと続くのではなく、本当に最高な瞬間が1回か2回あって、あっという間に終わる。
自分は人生において、こと芸術に関して刹那的な一瞬の輝きを閉じ込めたものに、強烈な生命力を感じて魅了される。もう少しこの感覚を味わってたい位が何事も1番良いのでは、と思う。
そういった意味でもこの2曲は秀逸で、バンドアンサンブルの心地よさを味わってる間にすぐ終わってしまう。最高。だから何度も聴きたくなる。
個人的にかなり期待が高まった中でリリースされたアルバムを聴いた。バンド、最高。めっちゃ良い、めっちゃ好き。
もっくんが脱退した後のくるりは新しいメンバーを入れてバンドになったり、サポートメンバーを入れての編成になったりと様々で、近年は3人組→2人組という形になっていたので、良いソングライティングに緻密なポストプロダクションという楽曲が多かった印象を持っていた。その辺は「ふたつの世界」がとても秀逸だと思う。
一方今作はバンドアンサンブル、リフやドラムを感じるアルバムになっていると思う。
バンドセッションから作られたものだけど、セッション感そのまま音数少なくパッケージング、というものではなく、バンドでの熱量と緻密な編曲の良さが融合した印象を受けた。
何よりシンプルに良い曲が多い。
冒頭のリフから掴まれる「happy turn」や、ギターのカッティングと鍵盤が「ばらの花」を思わせる「朝顔」。「世界はこのまま変わらない」は2ndアルバム「図鑑」の頃までのくるりを思い出した。上手く言葉では説明出来ないがとても「バンド」を感じる。あぁ、自分てやっぱりロックバンド好きだなぁと思ったし、聴いた後はギターが弾きたくなった。
確実に「TEAM ROCK」位までの感じの延長上にあって、止まっていた時計の針が動いた感じがするのだけど、あのまま3人だったらこういったアルバムは出来なかっただろうなと思うと不思議なものである。
『あの場所へ向かえば
あの痺れるような出会いを思い出せるかな』
という「In Your Life」の一節が特にエモーショナルに歌われる様に、昔からの友人達が集まって、敢えて当時と同じノリで同じ遊びをして楽しんでるみたいな、かすかにノスタルジーを感じる場面がアルバムのそこかしこにある。
自分がくるりと共に歳を取っていったからこそ、そこにとてつもなく感動を覚える。
とはいえ、くるりがこのまま3人組に戻るのかと言えば多分違うと思うし、また今後起こる変化もファンとしては楽しみだ。
しかし、今はこの特別なリユニオンを楽しみたいと思う。
リリースツアー行きたいなぁ。