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ファイナンシャル・インディペンデンスとは?~経済的自立のその先にあるもの~
最近「Financial Independence, Retire Early」(=経済的な自立と早期の退職)の頭文字を取ったFIREという考え方をよく耳にします。
これはつまり、定年退職を待つのではなく、会社員として束縛される生活から、より自由度の高い生活を目指すものです。
そういった生活を目指すのに、鍵とされるのが「不労所得」です。
ここではその正確な定義より、給料ではなく、株式投資の配当金や家賃収入のことだと捉えていただければ十分です。つまり会社からの給与収入に頼るのではなく、十分な預貯金、もしくは投資や資産収入によって経済的に自立し、残りの人生を充実させようという生き方です。
ここ数年、本屋に行くとほぼ必ずFIREに関する本や雑誌を目にします。
このnoteというプラットフォームにも、FIREをなし遂げるための具体的な金額や、それを手にするための方法論、戦略論が溢れています。
必要な資産額は生活スタイルによって異なりますが、一般的には5000万円から一億円が必要と書かれていることが多く、早期退職とまでは行かなくとも、定年退職後には少なくとも2000万円、インフレを加味して3500万くらい必要とされます。
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FIREは仕事でのやりがいや出世よりも、ワークライフバランス、プライベートの時間がより重視されるようになった現代においてこそ、注目されている生き方なのだと思います。
この記事を読んでくださっている方の中にも、FIREを仕事のモチベーションにされたり、目標にされている方もいらっしゃると思います。
ただ、ここでは経済的自立自体を目標とするのではなく、もう一歩踏み込んで考えてみましょう。
まず十分な資金があり、晴れて早期退職をしたと仮定して、その先になにを求めるのでしょうか。
お金はあくまでも手段です。
私は仕事上、毎日たくさんの方と、投資について、お金について話す機会があります。働かなくても生活できるぐらいには、十分なお金を持っているなんて方は実はたくさんいらっしゃいます。
そして羨ましく見えるかもしれませんが、そのような方はだいたいお金の使い道がなくて困っていらっしゃいます。
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いくら貯金があっても、不安な人は変わらず不安で一杯です。
悩みの種が変わるだけのようです。
お金があっても不安は解消されず、また肝心なものはお金で買えない。
→したがってお金は大切ではない。 ということではありません。
もちろんお金は大切です。
ただ、お金という手段があっても、肝心の欲しい物がわからないのです。
それは、ブランドバックや旅行といったように、物質や体験に留まらず、人生規模で追い求めたいことです。
そして、追い求めたいもののためのお金の使い道の方向性は自分にしかわからないということです。まずはその方向性をしっかりと把握する必要があるのだと思います。
例えば自由を得るためには、大金なんて必要ないかもしれません。
私もさわかみ投信に入社する前は公務員を辞めて、パソコンで小遣いを稼ぎながら、組織に縛られない生活を2年間経験しました。その間に作曲家のショパンを追いかけて、たどり着いたワルシャワのホステルで、ウクライナ難民の方々とほとんど共同生活と言えるような、貴重な経験もしました。
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しかしそんな一見自由な生活は、最初は楽しくても、一年もすれば飽きはじめ、逆に自由がつらくなってしまいました。
もちろん皆が皆、そうなるとは思いません。
例えば、退職後にマレーシアでの優雅な生活を満喫している人もいるでしょう。
でも、他人は他人です。私の場合、公務員の安定した生活も、個人事業主の自由さも、人から影響された理想で、自分が欲しいものではなかったのだと思います。
経済的自立のために、ある程度のお金は必要でしょう。しかし具体的な金額はそれぞれの生活スタイルや目指す方向によって大きく異なります。
自立とは会社に頼らないことでも、不労所得で生活費を賄えることでもありません。
お金という燃料があっても、自由に航海できる時間があっても、行き先がない船は結局さまよいます。
自分が求めていることをしっかりと理解し、そのための手段を必要に応じて調達することができる。
それが私の考える経済的自立です。
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あなたはどんな未来を求めますか、どんな環境を作っていきたいですか。
ここを考えるのは難しいです。
正解がないからです。お金のようにわかりやすい指標があるわけでも、ネットに答えが書いてあるわけでもありません。
それでも、それと向き合うことは自分だけの大切な地図と方位磁石を持つことになります。
長期投資をすることが、その肝心な点を見つめ直すきっかけとなれば幸いです。
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