【百合】四日間の恋人【台本】
柏崎音羽(かしわざきおとは)(♀)
高校二年生
小さめで可愛い外見ではあるが、中身はばりばりの子供っぽさとガサツさがある女の子。故に身近な人間からは女の子とは思われてない。
惚れっぽく、すぐに告白もするが毎度振られてしまう。
全然気にしてはいないというフリをしてるが、毎度ショックを受けている。
姉下鈴子(あねもとすずこ)(♀)
高校二年生
中肉中背の側から見ると普通の女の子だが、音羽が本気で好き。
周囲からも分かるほど、音羽にラブコールを送っている。
告白じみた言葉をかけては音羽にすげなくされるのはお約束。
音羽の人を思う気持ちが強いことを知っており、そこに惚れた。
春川成都(はるかわせいと)(♂)
高校二年生
音羽が好きな相手
しかし音羽を身近においていたことより、彼女のがさつさで友人にしか見えなくなった。可愛いのに、もったいないと思ってる。
モブ女生徒(明菜)(鈴子と兼役)(♀)
(成都の同級生)
ナンパ師の男(成都と兼ね役)
シーン1
音羽「なんかさ、思ったんだけど」
成都「何だよ」
鈴子「何?」
音羽「透けるブラの色にも品があると思うんだ、アレだよ、正直言えば黒はあざとい」
成都「……」
鈴子「急にどうしたの? 音羽」
音羽「んー、別にこの間ドラマ見ててさ。シャツ下のブラが透けてたの」
鈴子「ああ、あのドラマのヤツでしょ。お色気シーンだったからじゃない?」
音羽「そうなんだけど、すごく黒ってあざとくない? 赤よりはマシなのか……」
成都「俺は教室でそんなことを語り出すおめーの神経がわかんねーよ」
音羽「え、大事よ。そそるシチュってあるでしょうが。私はピンクが可愛くて好き」
成都「そ、そっか」
音羽「鈴子はどう思う? あんた紫が好きよね」
鈴子「私そんなことを考えたことないなぁ」
成都「そんなことに着目するヤツって、逆にどんなヤツだよと思ってしまう」
音羽「成都は興味ないの、そういうの?」
成都「あっても、ここでは言わない」
音羽「え、何で」
成都「何でも……はああ、お前ってほんとにさぁ」
音羽「何」
成都「いやー、絶対まだ男に生まれた方が良かったろー」
音羽「えええ、やだよ。女の子の方が可愛いじゃん」
成都「ああ……お前はだいぶ可愛い方だな……あぁ……うん」
鈴子「成都君、なんかげんなりしてない?」
成都「ああ、うん……こういうのを残念って言うんだなと思っただけ。別に良いけど」
音羽「何よ、それー! あんたなら分かってくれると思ったのに」
成都「まあ、分かるよ。うん、分かる……って、そういえば音羽、あの件なんだけど」
音羽「えっ、あ、うん!」
成都「……放課後に話がしたいから、よろしく」
音羽「こっちこそ、よろしく……」
成都「うし、じゃあちょっと、バスケしてくるわ。じゃあなー、音羽、鈴子」
音羽「いってらー」
鈴子「またねー」
時間経過
音羽「あー」
鈴子「あー?」
音羽「かー」
鈴子「かー?」
音羽「鈴子、いちいち私の言葉に反応しなくてもいいんだよ」
鈴子「あ、ごめんね? なんだか面白くて」
音羽「あんたって変だよねー。私の言葉なんて真に受けない方が、楽だよ」
鈴子「もーすぐに音羽はそう言って。私は好きだよ、音羽のー……」
音羽「ちょ、ちょっ! めっちゃ近すぎ! 私は百合じゃないから、そういう人じゃないから!」
鈴子「むー、残念。私ってそんなに駄目?」
音羽「駄目とか、そういうわけじゃないけど……何というか、私、告白したばっかだし」
鈴子「え!」
音羽「そんな、驚く? 鈴子って良い子よね……」
鈴子「そ、そりゃ驚くって。音羽のことだもん」
音羽「んー、なんかさ、そうしてるつもりないんだけどね。明菜からだと、定期的に告白してるようにしか見えないらしくて……なんかため息つかれた」
鈴子「は、はあ」
音羽「恋に恋して追いかけてるオヤジらしい」
鈴子「ワードの威力が大きい……」
音羽「でも、今回は多分大丈夫……うまくいくと思う」
鈴子「えぇ……。なんで分かるの」
音羽「ふっふふ、そりゃ成都に告白したんだから。あいつとは長い付き合いだよ、私についてはもう十分でしょ」
鈴子「……そ、そう。音羽には、そう見えるんだ……」
音羽「あいつは良いやつだし。きっとうまくいくよ! はぁああ、ちょっと緊張するけどね」
鈴子「うまくいくといいね」
音羽「うん、ほんと。あー! 楽しみだ!」
シーン2
校舎裏にて、成都、音羽。
成都「お前から告白されて考えたんだけどさ、普通に無理だよ。友達としてはいいけどさ、彼氏彼女とかムリムリムリムリ」
音羽「な、なんで……」
成都「お前はさー。外見はマジ可愛いのよ、分かってる? ホントに可愛いの。下手なアイドルより可愛い……けど発言が残念すぎるの。俺は昼間の教室でブラの透け加減について語る女を、どんなに可愛いとしても女としては見れないの」
音羽「そんなあんたなら分かってくれると」
成都「分かるけどさ、お前のそういうとこ、どうにかしたほうがいいぞ。すぐに惚れて告白するところも、何だかなぁと思ってたし」
音羽「うっさいな! 良いものはすぐに手を伸ばさないと手に入んないじゃん。セールの卵はすぐに売り切れるでしょ!」
成都「男選びというか恋人選びと卵を同列にすんなや」
音羽「ま、まあ、確かに……」
成都「とにかく友達では良いけど、俺はお前と付き合えません。以上です」
音羽「そ、そんな。じゃあ彼氏はいつになったら……私は」
成都「お前の今の性格とか、そういうのを受け止めてくれるヤツがいたら、出来るんじゃね? いるのかなと思うけど」
音羽「……」
成都「悪いけどこれから用事があるから……また明日な」
音羽「……うん」
時間経過
音羽「帰ろう……」
教室に音羽は荷物をとりにもどります。
音羽「えっ」
鈴子「あ……遅かったね。音羽」
音羽「遅かったって言うか、まだいたの、鈴子」
鈴子「ごめん、ちょっと寝てた。いけないねー教室は眠くなっちゃうよ」
音羽「別に一緒に帰るとか言ってないじゃん」
鈴子「うん」
音羽「何でよ」
鈴子「はは……音羽を迎えたかったの。で、どうだった?」
音羽「駄目でしたね、いつもどおり」
鈴子「いつもどおりか」
音羽「あー、あー……」
鈴子「あー、あー」
音羽「真似すんなし」
鈴子「……頑張ったね、音羽」
音羽「え」
鈴子「音羽はそういうとこあるから」
音羽「何言ってんだか。別にぃ、平気ですよぉ、フラれの達人ですから私は」
鈴子「うんうん」
音羽「いやー、また伝説を築きましたね。うんうん」
鈴子「ふふ、音羽」
音羽「ん?」
鈴子「私は音羽の、そういうとこ、好きだよ」
音羽「……馬鹿」
鈴子「馬鹿かなぁ」
音羽「あれだよね、鈴子が彼氏だったら最高だよね。どんな私でも受け入れてくれそう」
鈴子「うん、受け入れる」
音羽「ほんと、ぶれないね」
鈴子「私なら恋人になれる可能性は、ある?」
音羽「さあ、わかんないねぇ。女の子って考えたことないし」
鈴子「そっか……そうだよね」
時間経過。
廊下に出て、下駄箱向かう二人。
鈴子「あれ……あそこにいるの」
音羽「あ、うん……」
二人の視線の先に、成都と女生徒(明菜)
成都「なんでそんなに持っているの……職員室までそれで行くつもりなの?」
明菜「いや、いけると思ったんだけど……やばいね、これ、こんなに重いの?」
成都「他の委員会の奴らもいただろ、やらせればいいじゃん」
明菜「えー、でも忙しそうだし」
成都「ほんと、お人好しだなぁ。よっ、と」
明菜「あ、ちょ、ちょっと……」
成都「これくらい持たせろって。ここで黙って行かせたら、人としてどーよ」
明菜「ああ、なんか、悪いなぁ……でも、ありがと」
成都「ん、うん」
明菜「よーし、じゃあ持ってちゃいますか。そしたら一緒に帰ろ」
成都「ああ、じゃあ帰り本屋に寄らせて……参考書買わないといけなくてよ」
明菜「うん、もちろん」
時間経過
成都・明菜は後ろから音羽と鈴子が見ていることに気づかず、廊下の奥へと進んでいく。
音羽「あー、うん」
鈴子「音羽?」
音羽「なんか失恋するより、ショックかも」
鈴子「音羽……」
音羽「あいつ……あんなに優しいとこあったんだ。知らなかったよ」
鈴子「そうだね……」
音羽「ははは、ほんとに私、そういう対象じゃなかったんだ。なんで勘違いしちゃったのかね。ちょっと、馬鹿だよね」
鈴子「そんなこと……」
音羽「無理してかばわなくていいよ。これはあれだねぇ、いよいよ私は一生一人とか? なーんちゃって」
鈴子「(真面目な声で、音羽の言葉を遮るように)音羽」
音羽「な、何よ。急にそんな声だして」
鈴子「音羽は一人じゃないよ、私が居る」
音羽「またぁ、それ? 百合っぽいやつでしょ、分かるよ。鈴子そういうのが好きなんでしょ」
鈴子「違うって。私は女の子だからで人を好きになってないよ」
音羽「……あのさぁ、あのさ、私だよ、わかる? フラれまくりの残念なヤツなんだよ」
鈴子「じゃあ私とお試しで付き合って。数日だけでいい、今日は木曜日だから日曜日まで……それだけで、いいから」
音羽「え」
鈴子「私、音羽がそんな風に言われる人間だなんて思わないよ」
音羽「がちで言ってるの……私、女の子と付き合ったことなんて。あ、男の子もなかった」
鈴子「じゃあ、何かの予行練習でもいいから。それに悔しくない? 誰とも付き合えないみたいなこと言われるの」
音羽「まあ、かなり失礼な……」
鈴子「うん、音羽。名誉は挽回していこう!」
音羽「確かに!!」
鈴子「じゃ、握手! 利害が一致したね!」
音羽「おうっ! ってなんかさ……ちょっと笑えない? まるで契約みた……」
鈴子「っ……」
音羽「あ……鈴子」
鈴子「え、何かな?! あ、ごめんね。握手、長すぎた?」
音羽「いや、そんなこと……ていうか、あんた顔が」
鈴子「あ、あ、私……ちょっとトイレー」
音羽「う、うん……(間を置いて)すごい、真っ赤だったよね……鈴子。え、あの子って、ホントの……?」
シーン3
付き合い始めて二日目の教室。
昼休みの喧噪に包まれている。
音羽「あー、うん、うん……」
鈴子「どうしたの? 音羽」
音羽「いや、カップルって何してんの。日常的なことで」
鈴子「うーん、普通だと思うけど」
音羽「普通? 普通とは……」
鈴子「だって四六時中、キスとか抱きしめ合ったりするわけにいかないでしょ」
音羽「確かに……」
鈴子「そんな緊張しなくてもいいんだよ」
音羽「別にそんな緊張なんてっ。たかだか二日目じゃん、余裕余裕」
鈴子「そっかー。って、そろそろご飯食べなきゃね」
音羽「そうだね、購買混んでるんだろうな」
鈴子「まあ、いつものことですね」
音羽「よし……いくかぁ」
鈴子「待って」
音羽「な、何? いきなり引っ張って」
鈴子「これを見てください、音羽」
音羽「え? 何、それ……サンドイッチじゃん」
鈴子「うん、うっかり二人分つくってね。一緒に食べよ」
音羽「え、マジで。うわぁ、鈴子様ぁああ、ありがとー」
鈴子「ふふ、一回やってみたかったの。うまくいってよかった」
音羽「そうなんだ、ほんと嬉しい。でもさ、もしかして指先けがしてるのって、サンドイッチのせい?」
鈴子「へっ」
音羽「その顔は図星だな……ちょっと絆創膏も取れかけてるし……張り直すよ。一応ね、絆創膏は持ち歩いてるんだ」
鈴子「う、うん」
音羽「うっかりでけがすることあるから、持ち歩く癖はついてたけど、こうして役に立てるとはねー」
鈴子「そうなんだ。あのね、音羽」
音羽「んー?」
鈴子「そういうとこ、ちょっとやばい」
音羽「何よ、やばいって」
鈴子「(耳元でささやくように)すごく、好きがあがっちゃう」
音羽「え」
鈴子「……」
音羽「そ、そう。あはは、私ちょっと、す、すごすぎかなぁ……あ、私、さきに校舎裏に行ってるねー!」
鈴子「うんー」
時間経過
音羽「う、わわわ、あんなこといわれたの、はじめてだよ……もう、なんて顔をすればいいの」
時間経過
音羽、鈴子は校舎裏で食事をとる。
音羽「はー、おいしい。卵のヤツ、最高じゃん」
鈴子「良かった、喜んでくれて」
音羽「鈴子がこんなことができるって、マジで知らなかったよ」
鈴子「ちょっと、内緒にしてたからねぇ。作るんだったら、彼女にやりたかったし」
音羽「彼女って……ああ、そうだね……彼女だわ……私」
鈴子「そうそう……だから嬉しいの」
音羽「ほんと、あんたって私が好きよね」
鈴子「うん、そうだね。大好き」
音羽「超真っ直ぐ」
鈴子「こういう気持ちは、真っ直ぐじゃないと。チャンスを取り逃がしちゃうから」
音羽「そうなんだ……そう」
鈴子「うん。ほら、あれだよ。フリマの値引きは、言わなきゃやってくれないでしょ」
音羽「……」
鈴子「音羽?」
音羽「っぷ、あはははははは、も、もうなに? あんた、私とそっくりじゃん!」
鈴子「ええ?」
音羽「いや、ちょっとね……似てること、私も言っててさ。成都は呆れてたけど」
鈴子「なんて言ったの?」
音羽「えっとねぇ……」
時間経過。
鈴子「ふふ、あはははは。私たちそっくりだね……でも、そう思っちゃうんだから、しょうがないじゃん」
音羽「だよねー、分かるわぁ。成都はどうして分かってくれないのか」
鈴子「そうだねー。ん、音羽、口元に卵が」
音羽「うわ、んんー、とれた?」
鈴子「舌でどうにか出来てないよ、音羽」
音羽「うわ、マジで?」
鈴子「ふいてあげるよ……じっとしててね」
音羽「え、いいよ。鈴子、自分で……わ、わわっ!」
鈴子が音羽の口元を拭こうとする。
それに慌てて身を引いてしまう音羽。
結果として、鈴子は音羽の上にでのしかかる。
音羽「あいたたた、ごめんー。びっくりしちゃって」
鈴子「……う、うん。大丈夫だよ音羽」
音羽「鈴子、どうしたの。そんなマジマジと……」
鈴子「音羽……綺麗だね。すごく、可愛い」
音羽「ええっ、急にどうしたの……別に……外見だけだよ、私は」
鈴子「(小声で)そんな……そんなことないよ(キスする音)」
音羽「え……鈴子?」
鈴子「……あ、ごめんね。起き上がれる?」
音羽「うん……って、あんた今私に」
鈴子「あぁ……うん」
音羽「うんって……」
鈴子「音羽が可愛くて……つい」
音羽「いや、私その初めてのキスだったんですけど」
鈴子「……駄目だった? そこはNGだった?」
音羽「えーと、うまく言えないけどぉ、びっくりしたし、びっくりしたし……超びっくりした」
鈴子「びっくりしたんだね、つまりは」
音羽「そりゃそうでしょ、そうなるわ」
鈴子「あぁ……嫌だった?」
音羽「それは、その……ええと、あれ? あれれ?」
鈴子「どうしたの?」
音羽「い、いや、何でもない!!」
音羽M「鈴子の唇はとっても柔らかくて気持ちよくて……私は初めてのキスを勝手にされたというのに、全然、嫌じゃなかった……何で、なの……」
シーン4
三日目です(土曜日)
補習のために午前中、教室に来てる音羽、鈴子。
音羽「あー、眠い」
鈴子「眠いねぇ……土曜なのに学校に来なきゃいけないなんて」
音羽「いや、それもあるけど。昨日眠れなくて……」
鈴子「え、なんかあった?」
音羽「あんたが言うか」
鈴子「あ……もしかして、キ(ス)」
音羽「(ス)にかぶせるように)あーあー何言ってんの!」
鈴子「まあ、そうだね……えっと、気をつけるね」
音羽「(ため息)……私さ、あんたと付き合って、ちょっと分かったことがあるわ」
鈴子「え? わかったこと?」
音羽「私、多分ホントに人を好きになったことないわ……」
鈴子「……」
音羽「恋をしたかっただけだと思うよ私って」
鈴子「そう、なんだ」
音羽「鈴子みたいに私は誰かを思えるのかな」
鈴子「期待してるよ、私は」
音羽「はは……恋って、どんな感じなのかね」
鈴子「うーん、きっと……」
音羽「きっと?」
鈴子「戻れなくなるよ」
時間経過
音羽「はーやっと、補習が終わったぁ……鈴子はどこだろ」
廊下にて。
鈴子は明菜と会話をしており、音羽が目撃します。
鈴子「明菜、またそんなこと言って、あはははは……うんうん、大丈夫。また一緒に遊ぼうねぇ」
音羽、鈴子に声をかける。
音羽「鈴子、ここにいたんだ。明菜もお疲れー」
鈴子「ちょっと、聞いてよ。今明菜が面白いことを言ってて……」
音羽「あ、そうなんだ……なんか、二人って意外に仲いいんだね」
鈴子「え? ああ……なんか気が合うんだよね」
音羽「そ、そっか……ごめん、先に教室戻ってるね。鈴子」
時間経過
教室にて
音羽「あー、うん……うん」
成都「なんだよ、お前。魂抜けたみたいな顔をして」
音羽「いや、さあ……めっちゃなんかもやっとするの」
成都「また何で」
音羽「いやーべつにー。鈴子と明菜って仲いいんだって知っただけなんだけど」
成都「あー、鈴子はお前にべったりだもんな。そんな意外だったのか、あの二人の仲」
音羽「ま、まあ……何か心にとげが生えたみたい。チクチクする」
成都「ふうん、んー、ちょっと新鮮だな、まさか音羽にそんな感情があるとは」
音羽「え、何ソレ?! 私をなんだと思ってるの!!」
成都「相変わらずだなーそういうとこ。それってあれだろー嫉妬だろ」
音羽「へ……」
成都「鈴子が明菜に取られた気がしたんじゃないの? でも音羽でも持つんだな、そういうのって……どうした?!」
音羽は勢いよく席から立ち上がってます。
音羽「いやいや、そんな……そんなわけ……」
回想
鈴子「音羽が好きだよ」
鈴子「可愛くて……つい」
鈴子「数日だけでも……恋人にならない?」
鈴子「音羽……」
教室にて
音羽「嘘だぁ……嘘だってっ」
成都「どうした、風邪引いたのか。顔真っ赤だぞ」
音羽「私は別に……そんなことない、はずなのに……あれ? あれれ……?」
成都「調子悪いのか、お前。大丈夫か」
音羽「ち、違うの……なんでこんなに胸が痛いのかって思って……こんなの、こんなの私じゃないよぉ」
成都「え、お前どこ行くの?!」
音羽、教室を飛び出す。
音羽「わ、わかんない!! 誰か、助けてっ」
鈴子、教室にはいる。
成都、鈴子に声をかける。
成都「おい、鈴子……なんかあったのか、音羽と」
鈴子「え、何かあった?」
成都「いや、鈴子と明菜のことについてあいつと話してたんだけど、急にあいつ、おかしくなって」
鈴子「うん……」
成都「まるであれってさ」
廊下にて。
音羽は走り続ける。
音羽「鈴子鈴子鈴子鈴子っ!! 頭から全然、消えないよぉ、どうしてなの!!」
教室にて。
成都「……なんか、恋みたいだな」
廊下にて。
音羽「もう、やだぁあああああ!」
時間経過
屋上にて
鈴子「あ……発見。ここ、立ち入り禁止だよ」
音羽「うっさいうっさい、別に誰も来ないしいいでしょ」
鈴子「まあそうだね。鍵が壊れっぱなしで、それも放置してるしね」
音羽「そうそう、いいの」
鈴子「ねえ……音羽?」
音羽「何よ……」
鈴子「顔、上げて」
音羽「やだ」
鈴子「どうして?」
音羽「今、顔がおかしいから」
鈴子「そうなの?」
音羽「そうなの」
鈴子「……じゃあさ、どうやったら顔上げてくれる? 私どんなことでもするよ」
音羽「……ほんと?」
鈴子「うん、ほんと」
音羽「じゃ、ぎゅっと、して……」
鈴子「え?」
音羽「お願いっ……」
鈴子「……うん、もちろんだよ」
シーン5
夕方の教室にて(誰も居ません)
音羽「ご、ごめん……動揺して。なんであんなこと頼んだんだろと思ってる……」
鈴子「うん、なんかあったの……心配したよ」
音羽「わかんなくなったの……なんか、どうすればいいのかって思っちゃうし……鈴子の顔がね、頭から消えないの」
鈴子「それは……」
音羽「(遮るように)ねぇ、鈴子」
鈴子「な、何?」
音羽「どうして、鈴子は私を好きになったの。きっかけとか、あったんでしょ多分だけど」
鈴子「あー……はは、たいした理由じゃないかもだけど、あるね」
音羽「どんなの? どうして鈴子は私を」
鈴子「うーん、きっかけは高校の入学式だよ……ほんと、会ったばかりの時」
音羽「そんな前? なんかしたっけ……」
鈴子「ふふ、それくらいのことだったんだよ音羽にとってはね」
回想
鈴子「あ、うそ……ボールペン、忘れた……これじゃ、うーん……」
音羽「あ、何してんの。もう皆移動はじめてるよ」
鈴子「そ、そうなんだけど……ボールペンがなくて、名前が」
音羽「そりゃ大変だ。いいよ、貸すから使いなよ」
鈴子「え、でも……」
音羽「いいの、いいの。これから一緒のクラスじゃん、仲良くしてね」
鈴子「う、うん」
音羽「さ、書いた書いた。それで一緒に体育館に行こう」
鈴子「うん……!」
教室にて
音羽「それだけで……?」
鈴子「安直とか言わないでよ。あの時、入学したばっかりで結構不安だったんだから」
音羽「そうなんだけど」
鈴子「純粋にあの時から、音羽は良い子なんだなと思った。それからずっと仲良くしてるけど、どんどん好きになる。ちょっと、怖いくらいだね」
音羽「私さ、正直わかんないの……あんたへの気持ちが、ホントに……」
鈴子「そうなんだ……そういえば明日、日曜だよね」
音羽「え? ああ、そうだね……日曜……」
鈴子「早いね……もう日曜だよ」
音羽「うん……(自己確認するように)うん……」
音羽M「もう、時間がない……」
シーン6
土曜日、夜。
鈴子の自宅にて。
音羽と鈴子、電話をしている。
音羽「じゃあ、明日ね……ああ、でも大変だね、用事って。いいよ、夕方からでもいいから会おう……んじゃ」
電話が切れる。
鈴子「……音羽、変な感じだったな……ああ、うん……ちょっと刺激が強かったのかな。明日……明日……明日なんて、もう来なくてもいいのに……」
時間経過
音羽の自宅にて
音羽「はぁああ、眠れない……眠らなきゃ、いや、眠るんだよ……眠るの……(寝息に変わる)」
音羽の夢の中
夢の教室にて
鈴子「音羽、起きなよ」
音羽「へ、ええ?! うわ……寝てたんだ」
鈴子「うん、もうすぐ昼休み終わっちゃうよ」
音羽「ああ、ごめん……いけないなぁ」
鈴子「そういえばさ、音羽に言いたいことがあって」
音羽「え、何」
鈴子「うん、実は好きな人が出来て……」
音羽「え……」
鈴子「この間からね、付き合ってるの……これからちょっと、忙しくなるかも」
音羽「そんな、え? じゃあ私は……?」
鈴子「ああ……ごめんね」
音羽「そんな……」
現実
音羽の自宅
音羽「そんなぁああああっ……はあ、はぁ……胸が、痛い……やだ、鈴子、鈴子が……苦しい……苦しいよぉ」
シーン7
四日目の夕方
繁華街の中にある公園にて
鈴子「おいしかったね、さっきのお店。今度は服でも見る?」
音羽「そうだね、うん……おいしかった」
鈴子「なんか顔色、よくないねぇ」
音羽「あんまり寝れなくて……」
鈴子「あ、そうなんだ……コーヒーでも買ってくる?」
音羽「ああ、私の話だし、自分で買ってくるよ」
時間経過
自販機でコーヒーを買う音羽。
鈴子の所にもどる途中で、鈴子に男が話しかけているのを目撃する。
男「ねえねえ、君さ、ちょっとカラオケしようよ。一人でいても楽しくないでしょー」
鈴子「あ、あの私待ち合わせしてるんで」
男「またまたぁ。あ、でも待ち合わせしてるのって、男?」
鈴子「そうじゃないですけど……」
男「じゃあさ、せっかくだったら皆で盛り上がろう。俺、絶対楽しくさせるから」
音羽「どうしたの、鈴子」
鈴子「音羽……」
音羽「あの悪いんですけど、ナンパだったらお断りなんで、帰ってください」
男「そっけないなぁ。君ら友達同士でしょ、その中、混ぜさせてよー」
音羽M「なんだろう……それで、スイッチが入った」
音羽「ふざけたこと言わないで! 私たち友達じゃないから!!」
男「え、え……??」
鈴子「お、音羽」
音羽「デートの邪魔しないでくれない? うちの彼女にも声かけないでっ」
鈴子「あっ……」
男「お、おぉ……」
音羽「鈴子、行こう……むしゃくしゃする!」
鈴子「う、うん……!」
音羽と鈴子は男の元から去る。
時間経過
公園の端(人影がほとんどない)
音羽と鈴子は夕焼けを見ている。
鈴子「音羽……さっきはありがと」
音羽「え、別に何もしてないし」
鈴子「さっき、ナンパを払ってくれたじゃない」
音羽「ああ、あれ? 超イライラしたわ、あいつ」
鈴子「ちょっと、嬉しかったよ……彼女って、言ってくれて」
音羽「鈴子……」
鈴子「期間限定だったけど、恋人で良かったなって思った!」
音羽「鈴子……あっ……もうちょっとで日が、暮れるね……」
鈴子「うん、でも明日からも、よろしくね……また友達として」
音羽「無理だよ……」
鈴子「え」
音羽「私、そういうの嫌」
鈴子「それは……どういう」
音羽「もう、終わりにしよ。こんな関係」
鈴子「……」
音羽「駄目だよ、こんなの」
鈴子「そんな、音羽っ」
音羽「鈴子」
鈴子「っぅ……」
音羽「私と付き合って」
鈴子「え……」
音羽「私の本物の恋人になって」
鈴子「おと、は……」
音羽「好きなんだよ……鈴子が。こんなにおかしくなるとは、思ってなかったけど」
鈴子「成都が恋をしたみたいって言ってたけど……私、音羽の気持ちがよく分からなくて……ただ、この四日間を愛そうって思ってた」
音羽「もう、そんなこと考えなくて良いよ。もっと、仲良くなろ? ううん、好きになろう」
鈴子「うん……うんっ」
時間経過
公園の端にて
音羽と鈴子は抱き合ってる
音羽「……あのさ、鈴子。ひとつお願いがあって」
鈴子「ん、なぁに?」
音羽「あの、その……キスして(消え入りそうな声で)」
鈴子「うん、もちろん」
音羽「へへ……嬉し……んぅ(キスされてます)」
鈴子「ん……」
音羽「……あー」
鈴子「どうしたの」
音羽「あー……最高」
鈴子「ふふ、私も」
鈴子M「こうして、私たちの物語は期間限定じゃなく続く」
音羽「明日、一緒に学校行こう」
鈴子「そうだね、行こう」
音羽M「……ねぇ、鈴子。早く、明日が来ないかな」
おわり
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