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佐和島ゆら
2016年12月26日 14:13
頭をあげると、雪が降っていた。マリカは自分の手のひらに息を吹きかけ、喫茶店に入る。すると編集者の谷曽が、硬い表情で待っていた。「ごめんなさい。お待たせしてしまって」「いえ、僕も来たところですよ」 谷曽は小さく笑った。だが、その笑みにも強ばりが消えない。それもそうだろう。谷曽は、マリカに離婚届を突きつけてきた夫。香坂弥一郎の従兄弟にあたるからだ。マリカと弥一郎が、何故破局を迎えたのかは、親族