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佐和島ゆら
2017年4月23日 20:03
神経が耐えかねるということはないだろうか。安純花(あずみはな)はバイト先で、顔を思わずしかめた。花はレストランのくせに、喫茶タイムをもうけているという店で働いているのだが、今日の店の混み具合はここ数日の中でも最高潮と言えるものだった。 三月の終わり、もうすぐ桜は咲くだろう。つぼみはいよいよ膨らんで、天に向いている、そんな時だった。「いや、ここまで忙しいのは異常じゃね」 花の仕事仲間
2017年1月30日 21:28
春になると憂鬱になる。美幸は重いため息をつく。とてつもなくいやいやそうに。 まず言っておこう。春という季節に罪はない。淡いピンクの桜が満開に咲いているところを自転車で駆けるのは爽快感があるし、暖かくなるのでついついお出かけしたくなる。町も春になると、どんどんとにぎわっていくのを感じるし、今日見かけたショーウインドウの春物のワンピースはとても可愛かった。それでも春は憂鬱だ。 春は学年のはじま
2017年1月24日 09:40
僕に彼女が出来たことを、母親経由で聞いた姉がこう言った。「はぁーあんた、頭が馬鹿になっちゃったの」 姉は頭がいいけど、人の気持ちが分からない。でもめちゃくちゃ頭が良くて、とある製薬会社で研究職についている。定時に帰れないし、始終難しい本やデータとにらめっこしないといけない職だけど、姉は楽しそうにやっている。人としゃべらなくていいから気楽よと姉は言う。姉は人とのつながりを宛にしていなかった。
2017年1月14日 20:45
「そばが食いたいなぁ、そばだよ。そば」 そう夫が言い出したのは、大晦日の夜。 大掃除もおせちづくりも終えて、二人でテレビを見ているときだった。私は歌唱する女性歌手を見て、それから時計を見た。後四時間で私たちは新年を迎えることになる。 私は呆れながら言った。「そばって、食べたじゃないですか」「食ったけど、あれはそばじゃない。生をゆでるのが嫌だって、お前が買ってきたカップめんじゃないか」