「医師で俳優」告白に周囲の意外な反応
皆さん、こんにちは。フリーランスの医師として訪問診療のクリニックで働きながら、駆け出しの俳優として活動しています、澤井一真です。
この連載では、医師と俳優という2つの職業を通じて日々発見する、新しい考えや思い、人との出会い、そしてやりたいことにチャレンジする楽しさについて、お伝えしたいと思います。
前回記事「俳優か医師か 進路を決めた面接官の言葉」では、医学部に進学し、諦めきれなかった俳優業に再度チャレンジするまでの過程をお伝えしました。
連載3回目となる今回は、研修医時代の進路に関する葛藤、そして、研修修了後に直面したフリーランスの現実についてお伝えしたいと思います。
「俳優といったら見放される」―研修医2年目、芸能との葛藤
前回までの連載でお伝えしたように、医学部に入ってからも俳優への夢を諦められなかった私ですが、とあるオーディションで、医師を目指すにしても俳優を志す一人としても中途半端である点を厳しく指摘されました。
そのことをきっかけに、まずは医師にきちんとなろうと決意した私は、医師国家試験に向け、必死に勉強をしはじめました。結果は無事合格――研修医生活が始まります。
研修医時代、殆どの人が経験したと思いますが、様々な科の研修中に「先生は何科に行くの?」と毎日のように聞かれます。(というか、上の先生と研修医の間を埋める会話は、大抵がこの内容ではないでしょうか。)
当時私は「俳優になりたいと打ち明けたら見放されてしまうのでは…」と考え、そのことを最初は言えませんでした。しかし2年目の後半ともなると、流石に進路をどうするのか伝えていかないと逆に印象が悪いと感じ、俳優としての将来を考えていることを様々な科で打ち明けました。
当然、そのことに対して良くは思ってない先生もいたとは思いますが、打ち明けた後は、上の先生方にもそんな自分を受け入れていただけましたし、なにより自分の心が晴れました。
私は自分の道を正直に言うことが、今までお世話になった皆さんに対し誠意をもってとるべき行動だと感じていたので、最終的に打ち明けて良かったと思っています。
求人は関東圏内でたったの4件
―医師と俳優の両立にはばかる厳しい現実
さて、無事周囲に打ち明け、幸運にもオーディションに合格し、私は研修医を終えた後、4月から芸能学校へ通うことになりました。
しかしここで、また厳しい現実に突き当たりました。進学予定の学校の授業料や生活していくために必要な、肝心のお金を稼がなければならなかったのです。芸能学校に通うため、医局に入って仕事をすることは当然出来ません。
そこでフリーランスの医師としてバイト先を探すことにしました。やり方は至って簡単です。「医師 バイト」で検索し、検索結果に出てきた大手の紹介サイトに登録します。あとは自分の条件をいれ、仕事を検索していく…一般のアルバイトを探す流れと一緒です。
そこで問題が起こります。
研修医修了直後という当時の条件でバイトを探したところ、関東圏内でヒットした‟面接に行ける仕事先”は、なんとたったの4件しかなかったのです。私の記憶だと、内科診療全般・外科処置不可で検索していたと記憶しております。面接に行くことが出来るのがたったの4件です。都内限定ではありません。もう一回書きます。関東圏内で4件です。面接でこれから落とされる可能性もあるのに、面接に行ける先が4件しかなかったのです。
その数少ない4件の中に、自分の出身県である千葉県内のクリニックがありました。どうせ働くなら地元が良いと感じ、検索結果の少なさに落ち込んだ気分を取り直して、現在も働く訪問診療クリニックへ面接に行くことにしました。
面接では俳優になるとは言えず、「別の仕事をやっております…」のようにちょっと濁してしまいました。有り難いことに雇っていただき、それが自分にとっての訪問診療との出会いになりました。
意外な反応―クリニックの皆さんにカミングアウト
いよいよ初日の診療日。クリニックの院長先生が「研修終わったばかりだから何か不安なことがあったら、いつでも気軽に連絡してね。また、何か分からないことがあれば聞いてくれて良いからね」と言ってくださいました。
研修医を修了したばかりで医師として十分な経験もなく、新しい仕事先で人間関係も一から作っていかなければいけない…と不安でいっぱいの自分でしたが、院長先生の言葉を聞いて大変安心したのを覚えております。最初の頃は、院長先生は勿論、運転手さんやその他様々な業種のスタッフ方々に疑問点をお聞きし、大変お世話になりました。
芸能の授業開始が5月中旬からだったこともあり、4月の最初の1か月間はほぼずっとクリニックで働きました。そのお陰で診療にも慣れ、クリニックの皆さんとも徐々に信頼関係をつくることができました。
分からないことがあるときは自分のプライドは捨てて、素直に分かる人に聞こう…そう心掛けて皆さんにいろいろ質問していたのですが、それが逆に良かったのか、周りの方々と上手くコミュニケーションをとれるようになっていきました。
そして、最初の面接でちょっと濁してしまった「俳優を目指している」ことについても、クリニックの皆さんに伝えたいと考え、不安はありましたが打ち明けました。
俳優の仕事が忙しくなれば、クリニックのお仕事でご迷惑をかけてしまう可能性もあります。
いざ伝えてみると、その反応は意外なものでした。
「面白い、何か出たら報告してください!!」と、なぜか皆さんが面白がってくれたのです。
私には意味のわからない反響でしたが、そこからクリニックの皆さんにはいつも応援をしてもらっております。有り難いことに、患者さんの中にも「先生がテレビに出るのが唯一の楽しみだから、報告してね!」と言ってくれる方もいらっしゃいます。
そんな風に言ってくれる患者さんのためにも、応援してくれる職場の皆さんのためにも、今後も「アクタードクター」として日々精進していきたいです。
次回、芸能学校の日々、そしてデビューまでの過程についてお伝えいたします。
最後まで長い文章を読んでいただきありがとうございました。ぜひ次回も読んでいただけるとありがたいです。ではでは。
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