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星の郷八ヶ岳野辺山高原100kmウルトラマラソンにチャレンジ

いつかは野辺山・・・

いつかは出場したい!そう漠然と望んでいたウルトラマラソン。
でも、誰が言ったかは知らないが、曰く「野辺山を制する者はウルトラを制する」と聞くとちょっとビビってしまう。
ウルトラ初心者時には、完走できる気がせず出場なんて考えられなかった大会。
今回、ウルトラマラソン出場が節目の10回目となった星の郷八ヶ岳野辺山高原100kmウルトラマラソンの感想を綴ろうと思う。


出場を考えた背景

ウルトラマラソンという競技があることは知っていた。NHKのドキュメンタリー番組「明日はどっちだ」でサロマ湖ウルトラマラソンの様子が放送され興味深く観たことを覚えている。
でも、そんなクレイジーな100kmも走る大会に自分が出走するとは、当時夢にも思わなかった。それも横綱と称されるウルトラ界最高峰とも目される大会にだ!
なにせランニングを始めた切掛がダイエット、その当時は身長167cmにして体重85kg、お腹はでっぷり、少し運動すると大量の発汗、まごうことなきメタボの中年親父だったのである。
ひたすら痩せるために近所の周回7kmのコースを50分以上かけてえっちらおっちら走るレベルなのだから、ハーフやフルはおろか、ウルトラなんて思いもよらないのも当然である。
それが不思議なもので、フルマラソンを4時間切る程度の走力が付いてきた頃には、次の目標としてウルトラマラソンが視野に入ってきた。
ウルトラマラソンは全国各地で種々の大会が開催されており、それぞれに独自色がある点も興味を惹かれた点だ。旅を兼ねて大会に出場できるのも大きな魅力だと思う。
また年令(現在50才)を言い訳にはしたくないが、心肺に大きな負荷をかけるフルマラソンやハーフは中々にシンドイ。引き続き記録向上は図りつつも、心肺には優しく(反面、身体の負担は大ですが)ノンビリ走れるウルトラも良いかなぁと未経験の自分は考えていたのだ。(実際にはノンビリ走っていてもかなりハードで膝、腰、太腿など疲労感は凄い)
ある種の勘違いがきっかけだったわけだが、結果的にこれは良い勘違いだったと思っている。

ウルトラマラソンの魅力

いろいろとあるのだが、ザクッと表現するとランニング=旅。走ることが旅みたいな物だと感じている。
この感覚は、車でドライブ、バイクでツーリング、もしくはハイキング等も似たような感じだろうか。
レースではあるのだが、景色を眺めながら100kmもの距離を走りつつ、ご当地を堪能する(景色やエイドで供される地元食材など)、つまりレースと観光を同時に愉しめる最高に効率の良いアクティビティなのだ。
勿論、レースの終盤には腰とか足の痛みが出てきて、苦しいな、辛いな、もう止めたいなと言う感情が湧いてくることはある。大体毎度のことだ。でもその苦しさの先に、何とも表現しがたい達成感があることを知ってしまうと半ば中毒気味に次のレースに向かってしまう。もう抜け出すことの出来ない沼なのだ。
沿道の声援や、ゴール間際の頑張れの声掛け、見ず知らずのオッサンでしかない自分に掛けられるエールに元気が出るし、事実これがかなり嬉しく感動すら覚えるのである。

東の横綱

各地に大会がある中で「東の横綱」と評されるこの大会。最高峰というのは直ぐに分かる。
こんなの気軽にチャレンジできるものではない(なんと言っても横綱だ)。
しかもコース全体が準高地にあり、八ヶ岳の麓でアップダウンを繰り返す累計の獲得標高は2000Mを超える。そのハードさは推して知るべしである。
怖いもの知らずの若い時分ならいざ知らず、オッサンになるにつれ慎重(ビビり)になったがゆえに、完走できそうだと思えるほどの力を付けた後に、いずれは挑みたいとは思っていた。具体に計画を練った訳ではなく漠然とだが…
ただこの「いずれ」の部分が大事で、いつ挑むんだとは思うのである。1年ごとに、年を重ねて基本的には体力は低下傾向になる。ならば、なるべく早く準備して挑んだ方が良い。その考え自体は間違いではないだろう。かつて流行した言葉ではないが、「いつやるの?」って話である。
もうここはDNF覚悟で挑むしかない。それも含めて経験だ!と割り切ってエントリーすることにした。

節目の10回目

初めて走ったウルトラマラソンが2019年11月の南伊豆みちくさウルトラマラソンで78km。以降足かけ5年で出走してレースは全部9つだ。このうち2022年チャレンジ富士五湖ウルトラマラソン118kmは無念のDNF。完走できない悔しさも味わった。それなりに経験は積めただろう。

◆昨年出走したレース
・南房総みちくさウルトラマラソン100km
→11時間47分で完走
・チャレンジ富士五湖ウルトラマラソン118km→13時間58分で完走
・サロマ湖ウルトラマラソン100km
→10時間50分で完走
・沖縄ウルトラマラソン100km
→10時間43分で完走
◆今年出走したレース
・大阪マラソン(フル)→3時間25分30秒
・ハセツネ30k(トレイル)→5時間55分56秒

何となく走力は付いた気がする。制限時間にも余裕を持つことが出来た。しかし数は走ったのだが、ウルトラに関しては肝心の累計標高はどれも低い。チャレンジ富士五湖ウルトラマラソン118kmでおそらく1000m位、その他もおおむね似たようなものだ。野辺山高原ウルトラマラソンの半分にも満たないのである。
ここの登坂能力を確認できていない、つまりアップダウン耐性の経験値の少なさがどう影響すのか?
言うまでも無くここが完走するための最大のポイントであることは間違いないだろう。


レース本番回顧録


レース前にどや顔で記念撮影。この後苦しむ事も知らずのんきな顔をしている

慣れるしかない

レースの序盤の10㌔過ぎからでダートコース、いわゆる砂利敷きの路面が出現。
走りにくいのは当然なのだが、この区間が結構長い。15kmくらいだっただろうか?普段走らない路面ゆえのストレスもあるし、バランスも崩しやすい。
こんな場合、トレーニングとかランニングフォームと言うよりも何度も走って経験値を積んで慣れるしかない。そのように感じた。でもね、こんなサーフェスの道ってないのだ、近所に。
しっかりと訓練をした経験値がものを言う、そんな序盤のダートコースは我慢の時間帯だ。

走り慣れない路面に悪戦苦闘、我慢の時間帯



最高標高1908m


野辺山高原ウルトラマラソンのコース序盤20km手前に現れる最高地点。多くのランナーさんが立ち止まって記念撮影。

スタート地点が1,355m。そこを起点に約20km程度走って、最高標高1,908m地点まで登っていく。
コース全体が準高地に該当し、いわゆる高地トレーニングを実施するのに適した高度らしい。全く知らなかったのだが、長野県内にはこのように高地トレーニングに適したエリアが沢山あるようだ。
しかし体感的には特段息苦しいなどは感じなかった。それはおそらく砂利敷きダートコースの走り難さが息苦しさを上回っていたのでは?と想像している。

我慢の中盤戦

レース前に、あるアドバイスを頂いた。この大会を20回完走すると授与される称号「ユプシロン」の方からの金言。
75km付近から急傾斜を登る馬越峠が待ち受けている。ピークとなる峠まで5km弱だが、ここでかなり足を使うので、気持ちの面では、ここで残り50kmあるんだ、と思えるくらいの余裕が持った方が良いとのことであった。
初のレースだし、馬越峠の恐ろしさも未経験。75km走ってなお残り50kmと想定できるメンタルも持ち合わせていない(125kmも走れない(^_^;)。そう考えると、なるべく自重して入り、つまりは序盤は走れる力があっても調子に乗らず行くしかないと判断したのだが、これが結果的には幸いしたのかもしれない。
最高標高を抜けて、ダートコースも終わり、42km地点までは長く続く下りで気持ち的にはかなり楽なのだが、馬越峠での余力を鑑みて極力無理なく進めることとした。

苦しい時にこの景色が現れると幾分気持ちが穏やかになるから不思議



楽しいスライド区間

コース全体は基本的に周回なのだが、1カ所だけ選手同士がすれ違うスライド区間がある。北相木村役場を折り返す約10km程がその区間だ。
ここでは北相木村役場を折り返した選手と、折り返しに向かう選手双方が声を掛けて励まし合ったり、いわゆるエール交換が出来るような区間である。
自分は前泊で同部屋だった選手を探したのだが、ここでは見つけられず声かけは出来なかった。それは残念ではあったが、北相木村へ向かう際には自分より数㌔先を走る選手の力強い走りを見て自らに活を入れることができた。
スライド区間は苦しい中で元気を貰える刺激的な区間だ。


いざ馬越峠

このレースの山場、坂が好きな人からするとレースにおけるメインイベントなんだろう。ホントに坂好きな人は、M気質と言うか、苦しければ苦しいほどに燃えてくる変態じみた(尊敬の念を込めて)素晴らしい資質を持っている。
で、肝心の馬越峠。ここは簡単には姿を見せてくれないのだ。事前にコース図を入念に確認しておくべきだったと反省。
と言うのも、馬越峠入り口(ここから峠の起点となる場所)までも結構登らされる。てっきり平坦路を走った後に峠への起点があり、そこから急傾斜を登ると思いきや、実は峠への入り口に至るまでが中々ハードな登りなのである。自分などは、真の峠に至る道を、ここが噂の馬越峠だろうと錯覚してしまい、さすがは馬越峠、かなりキツいぜ、と的外れな苦しさと格闘してしまっていた。
ゆえに本番である馬越峠入口に到達し、ここからが本番スタートと知ったときには心底愕然とした。まだ登るのかと、更に傾斜がキツくなるのかと・・・

ピークとなる峠まで残り2km位の地点?見晴らしの良さが疲れを癒やしてくれる
イマイチ傾斜が分かりが、おそらく8%位。

峠の感想としては、キツいな。しんどいな。75km過ぎでこの登りはないよ〜等の泣き言ばかり。
峠の登り口に差し掛かり、足を残していいたつもりだったが、その傾斜を見て瞬間的に心がやられた。アカン、ここは全歩きに変更だ!
ただ5km弱全てを歩くと所要時間は1時間程度掛かってしまう。ちょっとそこまでの時間ロスは嫌だなとも思った。
少しでも良いから先に進みたい、たとえ5分でも。また、ここまでは走れる余力を残してはずなので、行けるところまでは行くんだと気持ちをリセット。
で、行けるところまで走ってみたものの、あえなく2kmで終了。ここはもうメンタルの問題。心拍数は130を少し超えるくらい。身体的にはまだ追い込めるはず。いつものトレーニングならば。ここで歩いてしまったのは精神的弱さの露呈してしまった。情けない限りだけど、気力が続かなったのだ。
その後は走ったり歩いたり、傾斜が緩やかなところは確実に走って、それ以外は休憩のつもりで歩いたりを繰り返しとなってしまった。

馬越峠リーダーボード

愛用しているアプリSTRAVAでは、コースに任意のセグメントが設定されており、そのコースを走った場合に自らの立ち位置が確認できるリーダーボードという項目がある。
これは全体順位のみならず、性別や年令、さらには今年や今日などのカテゴリー毎に順位が表示される仕組みだ。
いつも興味深く活用しており、今回もご多分に漏れず確認してみた。
今年の「馬越峠登り」セグメントでは、71位。走力の割には健闘した部類だろうと満足感はあった。歩く場面も多かったが・・・

このリーダーボードは馬越峠を今年走ったランナーのタイムをランキング形式にしたもの。自分は今年走った中では71位、タイムは46分39秒。ちなみにリーダーボードで2位の方は、第30回野辺山高原ウルトラマラソンで2位、リーダーボードで3位の方は女性優勝の強者だ。

なんとか馬越峠のピークまでは辿り着いた。タイムも良くはないけれど、全歩きしなかったので悪くはない。大きな山場を超えた安堵感を得られた。
その後は当然ながらハードな下りが待っている。峠なんだから。おおよそ5kmを一気に下る、これもなかなかの過酷な設定である。
過去のウルトラマラソンでは80kmも過ぎると膝や大腿四頭筋が痛んでおり、特に下りの際はこの痛みが増幅されて苦行となることがしばし、いや毎度のことと言って良いだろう。
しかしこの日は自分でも驚くことに痛みがほぼなく、普段通りに足が動く。これは本当にビックリした。今回限りの事なのか、それとも走力が付いてきたことの証左なのか、それは現時点では分からないが、とにかく痛みが無いのは嬉しく、軽快に気持ちよく走れた。間違いないこのレースで最も楽しめた区間だった。

ラスト10kmまで到達するもそこからがキツかった

軽快に走れたことで勘違いしてしまい、自分に取ってはオーバーペースで進んでしまった。序盤の自重した展開とは打って変わり、一気にゴールまで駆け抜けるぞ!的な勢いで飛ばしすぎたのである。足の痛みがなく、調子が良かったのでゴールまで十分に足が保つと判断したのだ。
しかしそんな甘い考えで済むほどに野辺山は優しくなかった。残り10kmから緩やかなもののゴール手前3kmまでの7kmがずっと登り。平坦な箇所もあったのだが、疲れのせいか記憶があやふや。
とにもかくにも最終盤に来ての登り、これが本当に辛かった。
馬越峠では準備できていた気持ちの余裕が、この終盤では持ち合わせておらず、その分精神的にキツかったのである。
所々歩きながら、距離を消化しつつゴールを目指しも、この10kmが今回のレースでも最も辛く長く感じた。先程までの勢いはどこへやら、最後まで甘くないものだ。

感動のゴールへ!

ゴール前最終エイド地点で残り3km、これくらいの距離は何とか走りたい。既に登り坂は終了し平坦路だけだ。身体は疲れているけれど最後に自らに課題を与えた。
㌔6分後半、いや7分に近いペースで淡々と進む。ゴールも近そうで遠い。ただ確実に近づいていると思うと気持ちは元気になってくる。
ゴールまでの直線路には地元の方達や、先にゴールし終えたランナーの皆さんが暖かい声援を送ってくれる。
この瞬間が一番好きかもしれない。いや、間違いなく好きだ。これが苦しくとも辞められない快感となっている気がする。見ず知らずのオッサンに掛けてもらえる声援、これは病みつきになっても仕方がない!

知っていたけれど足短いな!

レース終了

ゴールテープを切る瞬間は、やっと苦しさから解放された安堵感と、走りきった達成感。そしてこのレースへの参加は今回でおしまい、苦し過ぎて来年は無理、だった。
東の横綱に挑み、ボコボコにされながらも稽古に耐え抜いたけれど、もう1回チャレンジするとなると、やはり相応の覚悟もいる。ホントに正直な感想は、もう無理だし、満足したし、お腹いっぱいだったのだ。

レース終了から10日経過して

なんだろう、この感覚

GARMINで計測したデータや、STRAVAでのセグメント順位の確認、また最近はレース動画をYouTubeでアップされているランナーさんも多いので、それらを酒のつまみとして視聴しているうちに、湧いてくる変な感覚。
それはつまり、もっと出来たんじゃないか?苦しくとも我慢して坂を上れなかったのは何故なんだ?とか、やりきったはずなのに悔しさに似た感情が湧いてきたのである。

おそらく来年も

走ることになりそうな予感。今はその気持ちが強い。
10日以上経過していろんな課題も見えてきたし、その改善の為のトレーニングを開始しようと思っている。もっと坂路トレーニングを取り入れたり、基本的な体幹レベルもアップさせる必要があるだろう。
そしていつか、デカフォレスト(野辺山高原ウルトラマラソンを10回完走した人に授与される)の称号を目指すなんて事もあるかもしれない。
随分先の事でもあるし、そのためには健康無事であることが必要なわけで、案外それが大きなモチベーションになりそうな気もする。
まあデカフォレストなんて大それた事は現時点では言うつもりもないけれど、まずは来年に向けて決意を新たにチャレンジすることを宣言し、今回の振り返りを終えたい。

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