バンコクのローカル市場で発見。日本の体操服【中学・高校】
今や世界は、大量消費型社会からサステナブル型社会へと転換した。その最たるものは、古着のリユースだろう。兄ちゃん姉ちゃんのお下がりを着る文化は世界各地で共通だという。棄てる必要のない衣類は循環して着用し続ける。これは良いことだ。
ところで、タイは古着の聖地の一つである。高額なビンテージ古着を扱う店舗が多数あることで知られるが、なにもそれだけではない。そこかしこにあるタラートと呼ばれるローカル市場では、安価な古着が販売されている。そしてその中には、あっと驚く古着に出合えることもある。
これがまた面白い。
今回は、タイのローカル市場で見つけた「日本の学校指定体操服」をレポートする。
激安古着がたっぷり。パタヴィコン市場
アクセスの悪さなどから、これまでは地元民しか利用していなかったであろうパタヴィコン市場。その所在地は、日本人旅行者が多く宿泊するバンコク中心部やスクンビット地区からは、約20キロほど離れている。タクシーで行くのがベストだが、渋滞なども生ずるため、とても気軽に行ける市場ではない。
しかしここ最近では、古着熱の高まりを受けてか、激安価格の古着を求める日本人の姿をしばしば見かけるようになった。
わざわざパタヴィコン市場まで行き、私たち日本人がどれだけ安くても買わないであろう古着。それが学校指定ジャージではあるまいか。
直射日光を浴びて絶賛販売中。日本の体操服たち
ニキビ華やかなりし頃の私たち。地域によっては体操着と呼んだり、体育着と呼んだり、いくつかの呼び名があるようだ。自分自身が着用したそれらを思い出す時、教師にコラーと怒られてゲンコツを頂戴した、頭の痛みも蘇ってくる。
時を経た今、体操服は日本を離れて海を渡り、タイの強い日差しに耐えながらも、新たな “生徒” が現れるのを待っていた。
「登校時には制服を着用しなければならないが、途中で体育の授業があった場合、それ以降は体操服で授業を受けても良い」このような学校独自のルールがなかったであろうか。
新たなデザインが採用される際、体育科の教師が意見を出し合い、校長がそれを決裁したであろう体操服。先生方の苦労と、それを決定した校長のセンスも伝わってくる。
「あれはどこの学校だ?」市内の小中学生が集う体育大会などでは、見慣れない各校の体操服が新鮮だった。
さて、気になるのはお値段だ。いくらで売られていたかというと、概ね50バーツ(約220円)だった。道路沿いの歩道に、強引に吊売りされている体操服。
皆さんは、これを高いと考えるであろうか、それとも安いと考えるであろうか。だが、体操服には青春の汗と涙が染み込んでいる。もし、当のご本人が異国の地でそれに再会したとなれば、かけがえのないプライスレスな一品である、と言えるのでなかろうか。
どういう経緯でタイに流れ着いたのかしら
紛れもない日本の体操服が、どういう経緯で、どういうルートで、タイまで流れてきたのだろうか。プラスチック容器に手紙を入れて川に流したところ、どこか遠い外国で拾われて連絡が届いた、とかいう小話を聞いたことがあるが、日本で不用品として出された体操服が、周りまわってタイで再販されているという事実。どこか、ロマンを感じてしまう。
さて、私たち日本の学校体操服は、現地タイ人の目にはどのように映るのか。
「動きやすく、デザインが良い」
このような評価を得ているのかもしれない。実際にそれを着用してショッピングを楽しむ、タイの紳士を見かけたことがある。
ほんのノスタルジー。古着には、歴史とロマンが詰まってる
たとえ高価なビンテージTシャツでなかろうと、その古着には、歴代着用者の人生の1ページが詰まっているのである。新品の衣類からは感じることのできない魅力が、古着にはある。
使い古された体操服。
友達の顔、先生の声、体育館の匂い、夕暮れの自転車置き場……。あの日の思い出が、一気に蘇ってくる。
なんだか胸がドキドキしますね。ノスタルジーですかね。