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ブレンドしているのは、コーヒー豆だけはない。

教会みたいだ。

はじめてそのカフェに入った瞬間、まっさきにそう思った。キリスト像があるわけではない。ステンドグラスも、燭台だってない。神保町駅から徒歩8分ほどの場所に位置する、千代田区にある都会のカフェだ。おおよそ教会とは不釣り合いな立地と言ってもいいだろう(偏見)。だけど、一歩そのカフェに入ったときから、あの聖なる異界に入り込んだような安堵感を覚えた。

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そのカフェは奥に向かって長く伸びていく長方形の形をしていた。手前は、木製のテーブルと椅子が配置されている喫茶スペースで、目の前のカウンターには男性店員がいる。ひとまず私は、一杯のホットコーヒーを頼んだ。

一際目立つのは、カフェの奥側のスペースだ。そこには4人ほどの従業員が座っていて、何やら黙々と作業をしている。テーブルの上には無数のコーヒー豆があり、どうやら選別をしているようだ。

「不良豆を除去しているんです」と、できたてのコーヒーを提供しながら、男性店員が話しかけてきた。「そうすることでコーヒーの雑味が消えて、クリアな味になります」。一口すすったコーヒーは、なるほど驚くほど澄んだ味がした。

せんてい

実はここ、就労継続支援B型事業所も兼ねていて、障害のある方の作業スペースがカフェと同居している。コーヒー豆の選別を行っているのは、障害のある利用者さんだ。

男性店員が言った。「質の悪い豆を、確実に分けていくのはかなり難しいんです。僕も油断すると見逃すことがあります」。

よくよく見ていると、発達障害や知的障害がある利用者さんは、驚くほどの集中力で欠点豆を除去していた。私の存在などどこ吹く風で、目の前の作業にただただ没頭している。

そのとき、ふいに気づいた。

どうしてこの場所が、教会のように感じたのか。

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それは、彼らがかもしだす空気が、「祈っている」空気感に類似していたからだ。過去の煩わしさや、未来の不確かさには目を向けない。ただただ、この一瞬という刹那に己のすべてをぶつける。その姿は敬虔なクリスチャンのようにも見えた。

彼らはそこで、雑味を取り払っているだけではない。この世の雑念もとり払っているのかもしれない。

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そのカフェの名前は、「ソーシャルグッドロースターズ千代田」。興味のあることに集中力を発揮し、高い感性を持つ障害者の特性をフルに活かす「新しい職場」としても注目を集めている。

そこでブレンドされているのは、コーヒー豆だけではない。障害のある利用者さんの並々ならぬ情熱や、代表である坂野拓海さんの「障害のある方の仕事の選択肢を増やしたい」という信念もブレンドされている。

5月20日、新しいプロジェクトが始まった。"COFFE FOR FUKUSHI"。ソーシャルグッドロースターズのコーヒーを買うと、売上の一部が #福祉現場にもマスクを に寄付され、福祉現場にマスクが届けられるという、ソーシャルアクションだ。是非これを機に、「極上のブレンドコーヒー」を味わってみませんか。

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