なぜ音楽ホールという『場』を創るのか
前回、福知山音楽堂プロジェクトの進捗についてこれからどんどん発信していきます!という記事を書いたところ沢山のあたたかい反応をいただきました。
中には投げ銭をくださった方も...!
本当にありがとうございます。
福知山音楽堂プロジェクト実現のための資金として、大切に使わせていただきます。
さて、今日はなぜ私が建物=場を創ろうとしているのか?ということをお話ししていきます。
2010年から演奏会を継続して見えてきたもの
わたしは2009年3月に大阪音楽大学を卒業し、1年間私立高校で非常勤講師として働いていましたが、1年で退職しフリーランスの演奏家としての活動を始めました。
そして音大を卒業した翌年にあたる2010年から、フレッシュコンサートという自主企画公演をこれまで13回にわたり継続して行ってきました。
また、ただ演奏会を行うだけではなく、福知山の魅力を伝えていきたいという想いから、Pick Up!福知山というコーナーを設けていました。
Pick Up!福知山のコーナーでは、事前に福知山の店舗に取材を行い、お客さまに紹介しました。
この“独自の目線で福知山の魅力を伝えたい”という思いは、現在わたしが代表をつとめる(株)Locatellが運営している、福知山のウェブマガジン『ふくてぃーやま』の立ち上げのきっかけにも繋がりました。
また、福知山に興味を持ってくれる人を増やしたい、演奏者のみなさんに楽しみながら福知山のまちについて学んでほしいと思い、福知山の歴史を題材にした4楽章からなる吹奏楽曲、交響詩「福知山」の制作を作編曲家の福田洋介氏に委嘱。
福知山市内の福知山成美高校吹奏楽部の生徒を中心に初演しました。
また別の機会には、落語家の桂三扇氏に新作落語『ふくちよいとこ』の制作を委嘱しました。
今から6年前に開催した第13回フレッシュコンサートの休憩時間には福知山のスイーツを楽しんでもらいたいと思いロビーでに出店をしていただいたこともありました。
このように「音楽を通じて福知山の魅力を発信する」ということをコンセプトに、企画内容の立案や集客など、様々な壁にぶつかりながら継続してコンサートを開催しました。
次第に福知山市外からお越しいただけるお客様も増え、公演日だけでも福知山に賑わいがある状態を嬉しく思っている自分がいました。
しかし、2016年にコンサートをしているときにステージから客席を眺めて演奏をしながら“わたしは本当に一時的な賑わいを求めているのだろうか?“と思ったのです。
わたしが本当に人生をかけてつくっていきたい福知山のまちの風景は、一時的な賑わいではなく、継続的な賑わいであると感じたのです。
それは音楽家として出来る様々なことに挑戦した先に見えた景色であり、音楽家として出来ることの限界と、今後何をしていけばいいのか?具体的なビジョンが描けなくなった時でもありました。
1日で終わるコンサートではなく、継続して人々の暮らしに文化芸術による体験を届けること。そんな、まちの文化や暮らしそのものを変えていくためには、母体となる運営団体の設立や人が集い、発信する場が必要だと感じたのです。
福知山音楽堂プロジェクトの始動と法人設立
その後、2017年から3年間フランスのパリに移住することになり、福知山での活動はしばらくお休みすることに。
ヨーロッパで様々な芸術文化に触れた経験は、今のわたしの価値観を支えてくれていると感じています。
そして、もともと3年間と決まっていたパリでの生活を終えて2020年3月に完全帰国しました。
そんなコロナ禍で2020年、福知山音楽堂建設プロジェクトがゆっくりと始まりました。
2021年には、ふるさと福知山の文化振興に寄与することを目的に、一般社団法人 福知山芸術文化振興会を設立。また、地域活性化事業と音楽マネジメントなどコンサートの裏方業務を一貫して行う株式会社Locatell(ロカテル)を設立しました。
なぜ既存の施設を利用するのではダメなのか?
「音楽ホールを創ります」というと、福知山にはホールはないの?と聞かれます。結論から言うと、ホールはあるのです。
福知山市には現在市内で最も大きな多目的ホールである福知山市厚生会館(1000席)をはじめ、約300席の多目的ホールも3つほどあり、行政が運営しています。
残念ながら、文化芸術に専門的な知識や経験のない行政職員が出来ることは限られており、積極的な自主事業展開は行われていません。
専門的な知識と経験を有する人材と、人材を活かせる母体(事業者)の欠如。
芸術文化の側面だけではなく地域振興計画の視点を持って運営しているホールはなく、今後の10年後、20年後の福知山の未来を見据えた計画が具体的に見えないことが現在の福知山市の文化シーンが抱える問題です。
福知山音楽堂では、主催者が専門的な知識や経験があるスタッフに企画内容について気軽に相談できるようにすることで、主催者や演奏者は公演開催に集中でき、お客様にはより質の高い公演をお届けすることが可能となります。
また、京都府北部の芸術文化振興の拠点として、独自の主催公演の開催や貸館事業をとおして、次世代を担う芸術家、職員の育成を行うと共に、幅広い年齢層の方々の人生を豊かにする文化体験を届けたいと考えています。
未来の福知山をどんなまちにしたいのか?そう考えた時に、福知山音楽堂という「場」は、お客様として来てくださった方々の暮らしをより彩り豊かなものに出来るような存在でありたい。
わたしが目指す福知山音楽堂の役割は、単なる文化発信拠点の場ではなく、地域創造の場になり得ると確信しています。