羽菜と雄3
美化委員の会議室で、一通り自己紹介が終わると、一年生はさっそく仕事を覚えるためという名目で中庭に連れていかれた。
除草に植え替えにゴミ拾いに、と、仕事は山ほどあった。
大半の者がやっつけ仕事というか、適当に終わらせようとしている中、羽菜はくるくるよく動いた。
「燃えるごみはこっちですね」
「スコップが足りないですね、置き場はどこですか?」
「あっ、それ、雑草じゃないですよ…!」
一方雄はというと、これまたよく働いていた。
言葉こそ少ないものの、肥料の袋を運び、植木鉢を移動させ、土を耕す。
「…立花くん、すごい…」
見た目通りと言うか、小柄な羽菜には力仕事が正直辛い。
淡々とそれをこなす雄に、羽菜は素直に感嘆する。
「三島こそ、仕事が丁寧だ。要点わかってるし」
雄は雄で、羽菜の知識量と手さばきに関心していた。
さすが自分から買って出るだけあって、庭仕事が好きなのだろう。それは見ていてすぐわかった。
「あっ…ありがとう…えへへ、まだまだ勉強不足なんだけど…」
照れて頬をかく羽菜。その頬に泥が付く。
「…軍手のまま顔触ると、汚れる」
雄はそう言って、自分のハンカチを羽菜に押し付けた。
羽菜が何か言う前に、先輩に呼ばれて雄は移動してしまった。
渡されたハンカチを見る。清潔な白いハンカチ、青いラインが入っている。
絶対洗って返そう、と心に決めて、羽菜も作業に戻る。
結局その日の働きっぷりで、羽菜も雄も、委員会の皆に一目置かれることになった。
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