羽菜と雄7
すっかり緑が生い茂り、日差しが夏色を帯びてきた5月の連休。
「落ち着いて…大丈夫…大丈夫…っ」
羽菜は、どきどきと跳ね上がる心臓をなだめつつ、一軒の花屋へ向かっていた。
…向かっていたというか、行ったり来たりしているというか…。
何度か目的の花屋の前を通っているのだが、入ることなく通り過ぎてしまう。
よし、今度こそ、と心を決めた時、後ろから声をかけられた。
「…三島?」
「うひゃぉおおう!?」
驚いて変な悲鳴を上げて振り返ると、そこには悲鳴に驚いた顔をした雄がいた。
「たったったっ立花くん、こんにちは…!」
「あ、ああ、こんにちは…。…ちょうど店の前を三島が通り過ぎるのが見えたから…分かりにくかったか?」
そう言って雄は羽菜の手に握られた紙片を見る。
この間、雄自身が書いて渡した、簡易的な地図と店の名前のメモだ。
「あっ、いえっ、そんなことなかったです…」
緊張してなかなか入ることができなかっただけで、と口にすることが出来ずまごつく羽菜。
「……まあいい、こっちだ。」
案内する雄に、恐る恐るついて行く羽菜。
…そう、羽菜は、花屋で雄の手伝いをする申し出をしていたのだ。
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