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捨てる女神

村上龍を持ち出すまでもなくあまねく男は「消耗品」であり、必要なときに必要な分だけ使い、そしてポイッと捨てればそれでいい。男という生き物など凡そこの世界に存在している意味もなければ価値もなく、唯一あるとすれば、それは女にとって便利な道具ということでしかない。

言うまでもなくその使い途はお金である。現実的、かつ、安定的なキャッシュ。どれだけ彼らからお金を吸い取れるか、最終的にはそこに尽きる。そして、映画監督になりたいとか小説家になりたいとか起業して世界を変えたいといった幼稚な夢を捨てさせ、彼らが持つお金を全てこちらに回さなければならない。

現実的な私は最初から映画監督も起業家もスポーツ選手も狙っていない。そんなのは到底無理だからである。成功者である彼らは警戒心が強く、時間が掛かる。そして何より数が少ない。しかしこの地球上にはまだ唯一の生き残りである、お金はあるが無防備でバカ丸出しのナイーブな生き物がいる。

そう、サラリーマンである。

そして私のターゲットは、大企業、もしくは一流企業に勤める、世に言うハイスペ男子だが、おかげさまであまねく彼らはどうしようもないバカなのでやり方さえ間違えなければ大抵はごっそりと頂ける。彼らがバカたる所以は、この世界で数少ない、自分達が賢いと思っている人種だということで、そんな希少種を狙わない手はない。映画監督も起業家もスポーツ選手も、いわゆる成功者は自分が賢いなど一ミリたりとも思っていない。だからこそ成功者なのだが一流企業のサラリーマンはバカなのでそこをわかっていない。片腹痛いがそれが私の金蔓である。

男はいつまでも少年だとか、プライドが高いとか色々と言われるが、もっと簡単に言ってしまえば、特にハイスペ男子というのは常に「負い目」を感じている生き物ということだ。そこをうまくカバーすれば問題はない。一流企業の彼らは特に、趣味や芸術や旅に、それらを生き甲斐に自由に生きる人物に強烈な負い目を感じている。自分にないものがある、できないことをしているという、単なる無い物ねだりではない。「ハイスペ」というその状態が、彼らにとっても、ただひたすら、そして、恐ろしく「だせえ」のだ。

一般に男という生き物は「だせえ」と思われることを極度に嫌う。そしてどんな分野で成功しようがそこから逃れることはできない運命にある。金持ちになって金を失うのが怖いのではない。金持ちが「だせえ」と思われるのが怖いのである。偉くなって失脚するのが怖いのではない。偉くなろうとすることが「だせえ」と思われるのが怖いのである。世間に媚びた拝金主義、教科書通りのつまらねえ奴、組織の犬、ミーハー野郎、ジャンルの下僕、等々。大企業の社長はピエロだが、路地裏の頑固オヤジはいつまでも孤高の存在なのだ。

彼らは勉強を頑張ったところでガリ勉と嗤われて育ち、仕事に奮闘すれば常に上司のポチだと蔑まれる状態にある。そして根底には、小さいときからあれだけ頑張ったのになんでこんなことをしているのか、なんでこの程度なのかといった、成功者や自由人に対する救いようのない嫉みがある。それを理解した上で、うまく転がし、ガス抜きさせれば何も問題はない。

もちろん彼らがやっていることを理解する必要はない。理解したふりをする必要もない。放っておけばいいのだ。「私にはわからないから」とやらせておけばいい。無理に理解しようとすると、対抗心に火を点けてしまい、延々と蘊蓄を聞かされ、地獄のような時間を過ごすことになる。「私にはわからないことをやっている」というスタンスが重要である。そして、彼らがなんとか心のバランスを取ろうと周囲にアピールする「やんちゃ」な趣味を認め、ソロバン塾に行っていたのに「昔はワルだった」というどうしようもない嘘を聞き流す。決して彼らの前で成功した芸術家や俳優や冒険家やyoutuberを褒めてはならない。

余りに酷使するとハイスペ男子は簡単に死んでしまう。挫折の経験が少なく、喧嘩すらしたことがない可能性もある。お坊ちゃま学校に行っていれば、友達も皆、ハイスペ、クソみたいに退屈な連中しかいない。壁にぶつかっても彼らは『ジョージソロスの投資術』みたいな本しか読まないので、世界が自分の手には負えないことをわかっておらず、自己撞着の中で電車に飛び込むか、ビルから飛び降りる。

貢がれる前に死なれてはそれこそ物質としての存在意義すらない。所詮男などただの炭素だが、燃やすエネルギーがもったいない。うまく転がし、上手に使い、金を巻き上げなければ資源の無駄遣いである。究極的には男は金になど興味はない。宵越しの金は持たない、つまりは、彼らは貯金すら「だせえ」と思っているのだ。そんな男達のツボを突けば、喜んで彼らの方からジャブジャブとお金を注がれるだろう。豚ではなくても簡単に木に登る。登りたいのだ。登りたくてうずうずしている。登った豚は最後にポイッと捨てればそれでいい。


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石鹸師
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