見出し画像

#SaveOurVoice - 代官山 Weekend Garage Tokyo(ライブダイニングカフェ)【後編】「今ここを閉じたとしてもまた違う形で再開できる」

Speaker : 稲垣 BEN 勉(代官山 Weekend Garage Tokyo)
Interview & Text : Nozomi Nobody
※このインタビューは2021年1月18日に収録したものです

Weekend Garage Tokyo
代官山の線路沿いにあったライブも出来るダイニングカフェ。六本木のARK HiLLS CAFEなど8つの飲食店(2020年Weekend Garage Tokyoを含む2店舗が閉店し、現在は6店舗)を経営するW’s Company系列店として2013年にオープン。天井が高く、広々とした店内でゆっくりと食事をしながら音楽を楽しめる場として多くのライブイベントを開催してきたが、新型コロナの影響を受け2020年12月29日をもって閉店。

▶︎前編はこちら

「違う形に生まれ変わる」っていうことを考えるとちょっと楽になる

ーー秋に会社から言われるまでは閉店するかもとは考えてなかったですか?

それが思ってなかったんだよね。不思議なもんでやっぱりこういうのって自分は大丈夫だろうってなんか思っちゃうんだろうね。災害とかもそうだと思うんだけど。会社が融資を受けたっていうのは聞いてたからすぐに倒産することはないって思ってたし、WGTは会社のアイデンティティのすごく大事な部分だと思ってたからここを無くすことはないだろうって思っちゃってたんだよね。だから少しでも収益上げて出血を止めるように、ここで自分の出来ることを精一杯やろうって配信やってたんだけど。周りのライブハウスの状況ももちろん見聞きしてるし、なんだけど、でもやっぱり閉まるとは思ってなかったんだよね。やっぱり大きい会社だし直接すべての経営を見てるわけじゃないから、そういう部分もあったのかもしれない。

ーーもしこういう風だったらお店残ったかもなとかありますか?どうしても無理だったと思う?

そうだなぁ。閉店の可能性も含めてもっと早めに会社内じゃなくて外に対して動いていれば変わったかもしれない。母体が音楽じゃなくて飲食の会社だからこそ、音楽業界の中では面白い箱だなって思われてるなっていうのは感じていて、大きい会社が視察に来たりすることもよくあったし、だからもっと早く動いてれば、もしかしたら例えば収益性の高いイベントを入れ込んだりして協力し合って共同で経営していくとかそういう体制に持っていけた可能性もあるけど…ただコロナだからやっぱりどこも今体力がないんだよね。これが単純にうちの会社が経営が良くないっていうことだったら「引き取りたい」とか「共同経営にしましょう」とか、それで存続させるパターンもあり得たと思うけど。結局音楽業界はどこも大変だからいずれにせよ避けられなかったのかなと、今となっては思うかな。これが自分がオーナーとかだったら多分続けたかもしれないけど…

画像1

2020年12月29日に閉店し、機材等を運び出しスケルトンになったWGT店内

ーーうん。何とかして。

そうだね。もうお金じゃないじゃん。ライブハウスの人たちみんなそうだと思うんだけど、お金だけじゃないんだよね。もちろんそれが自分の仕事にも直結してるから、想いだけじゃなくて本当にシビアなお金のことも考えた上で続けた方がいいかどうかっていうのは、今のライブハウス業界の人はみんな考えてると思うし、正直辞め時もみんな考えてると思う。

ーーそうですよね、ここを超えちゃったらもう無理だっていうのはありますよね。

そう、辞めるのにもやっぱりお金かかるから。最初は「何とか続けよう」っていう気持ちがあって、次に現実的なお金の問題があって。ただその時に、次の選択肢として「違う形に生まれ変わる」「今ここで辞めてもまた別のところではじめられる」っていうことを考えるとちょっと楽になるんだよね。

ーー固執しないってこと?

うん。一回執着を断ち切るようにしないと、お店の継続が本当に難しくなったときに精神的にやられちゃうから、一回冷静になって「今ここを閉じたとしてもまた違う形で再開できる」っていうことを考えてみる。それもいろんな形があると思うけど、僕もそれを考えて「WGTは閉店して違う名前になるかもしれないけど、違う場所の仕事はまたできるだろうな」って思ったら少し楽になった。「今ここに執着して出口のないところで悩むよりは前向きにどうしたらいいか考えよう」っていう。僕は家族がいるから自分の想いだけでっていうわけにもいかないし、色んな選択肢の中で最善なものを考えようっていうことを毎日考えながら過ごしてたかな。その時点でお店の継続は難しいだろうなとは思ってたから、「だったら切り替えよう」って。

画像4

みんなただ辞めるだけじゃなくて、その次をどうするかって考えてその選択をしてると思う

ーー今はどんな感じですか?

今はね、でも楽になったと思ってるよ。解放されて。

ーー会社は今月いっぱい?

籍は今月いっぱいだけどもう有給消化に入ったから、別の仕事もちょこちょこ始めてる。

ーーそっか。新しい仕事も今のところ配信がメイン?

うん、オフィスライブの配信をやっていこうっていう企画があって、それを進めてて。

ーーへ~タイニー・デスクみたいな?

そうそう。もちろんバンドがっつりは難しいと思うんだけど、アコースティックなもの中心に。配信だけど「場所」っていうものにあえてフォーカスしてやっていきたいなって思って。結構周りからも反応があって「面白そう」って言ってもらってるから期待値は高い気がしてて、今その準備してる。配信サービスで何か新しい価値観を作れたらいいなって。

ーーそれは楽しみですね。やっぱりライブっていうことで言ったら当面は配信を頑張っていくしか活路がないのかなぁ。どう思いますか?

いわゆるライブハウスっていう業界だと活路はなかなかないと思うね、まだ当面は。3月の年度末はまた結構閉まると思うし、正直みんな辞め時を見定めてると思う。ただ、みんな辞めるにしてもその次をどうするかを考えてその選択をしてると思うから、後ろ向きだけではないと僕は思ってる。ライブハウス業界ってそもそもブラックな部分も多い業界だしやりがいだけでやってるような人も多いから、もちろん大変ではあるけどみんな音楽好きだからやめないと思うんだよね。何かしらで関わっていくんじゃないかなと思う。

画像3

「これからに生かせるように」っていうことだけ

ーーそうですね。やっぱり箱が閉まるの結構きついなって思ってて、悲しいし、でも今日ベンさんから前向きな言葉が聞けてよかったです。

そうだね。そうせざるを得ないところもあるんだけど、あとは性格的にも基本楽天的だし。やっぱり前向きじゃないと毎日の生活が暗くなっちゃうなーって。自分もいろいろ執着する質ではあるんだけど、それを一回断ち切って…まぁ簡単ではないけどね。

ーーそうですね。でも割り切れない人もきっといますよね。

それは間違いなくいると思う。

ーーそういうことを思うとやっぱり苦しいなって思っちゃうけど…

とは言え、頭で考える以上に直面しちゃうと割り切らざるを得ない部分も出てくるだろうから。

ーー確かにね。でも「しょうがない」って、それで済ませたくないっていう気持ちもすごいあるっていうか。

うん、それはね。

ーーだからそれをどういうふうに受け止めたらいいかっていうのはちょっとずっとわからずにいるんですよね。

もちろんこうすれば良かったっていうのは色々あるだろうけど、「これからに生かせるように」っていうことだけかなーと今は思う。

ーーそうだね。それしかないよね。ありがとうございます。でもベンさんは今年楽しみだね。逆に身軽になって出来ることも増えるかもしれないし。どんな感じですか?わくわくしてる?

わくわくしてる部分もあるね。いつか、いつかっていうのは夢とかじゃなくて、WGTのようなお店をもう一度やろうと思っていて、それを一緒にやりたいっていう人もいるから、その人と一緒に、2年後なのかもっと先かわからないけど、そういう動きをしてこうと思ってる。それ以外にも来た仕事は基本全部打ち返すつもりだし自分からも動くし、身軽になった分色々やろうっていう感じではあるかな。だから今はすごくとても前向きにこれからのことを考えながら過ごしてるかな。

画像4

WGT店内にて。一番左がベンさん。

ーーうん。良かった。大変でしたね、本当に。

大変だったよ(笑)

ーーお疲れ様でした。たくさんお世話になりました。

こちらこそ。まぁでもこれまでもずっとやっぱり音楽が好きだから頑張ってきたから、それは多分これからも変わらないから。

ーーそうだね。

なんとなく自分の役割というか、そういう場所を作るのがもしかしたら自分の天命みたいなことなのかなって。日常の中に音楽の“場”というサードプレイスを作ること、WGTやってる時もそんなことを思いながら、なんとなく、こうしたらいいかなっていうのを積み重ねて形になってきて、だからこういう仕事が自分の人生の役割なのかなって思えるようになってからまたちょっと変わったというか、そういう部分があって。だからそのマインドでこれからのこともやって行こうかなって。いろんなところで輪を作って音楽をいろんな人に広めていく。そういうポジティブな感じでございますよ!いいことも嫌なこともあると思うけど、楽しいことはやっぱり作り出していかないと。嫌なことって勝手にやってくるんだけど、楽しいことってやっぱり作り出していかなとなかなかないからね。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?