元・刑務官(刑務所の看守)に話を聞いてみた。番外編

前編中編後編と3回に渡って掲載した元・刑務官Aさんへのお仕事インタビュー。ここでは、本編ではカットしたこぼれ話を掲載します。(取材・構成:西部湯瓜)


今日のお話はびっくりすることだらけでした。

A氏:そうでしょうね。私も驚きの連続でしたから。

そもそも、Aさんは、どうして刑務官になろうと思ったのですか?

A氏:うーん、正直に言うとね、そういう凄い世界に興味があったんですよ。

好奇心ってやつですか?

A氏:そうだね。だって関わることがないからね。人生に一度どこかのタイミングで見ておきたかった。それも、どうせなら一番強烈なところを見たいと思ってました。だから最初、配属の希望は東京にある一番ヤバいところで出したんですよ。

そんなにヤバいところがあるんですか?

A氏:ええ。本当の凶悪な人たちだけが集まるところがあって。でも配属の希望は通らなかった。

周りの同僚も同じような理由で職業選択したんですか?

A氏:それはないと思いますね。私が見た限り、ほとんどが国家公務員志望で、刑務官をすべり止めにしていた人たちが多かったです。だから「他の職種で落ちたから」という理由ですね。

今だから話せるエピソードってありますか?

A氏:ライターの話があって。私、タバコがすごく好きなんです。それでポケットにライターを入れてるんですけど、夜勤の勤務が終わって、家に帰ったら、無くしてることに気づいたんです。これはやばい、と。もし舎房で落としてそれを拾われて、火事でも発生したら…。

探しに戻れば?

A氏:でも、探しに戻る理由が無い。

正直に言って、探しに戻るしか…。

A氏:冷静に考えればね。でもその時は冷静な判断を失っていて。しかも、本当に外や家で無くした可能性もある。そうでしょう?で、翌日、いつもより早めに舎房に入って、探し回って、そしたら、廊下のゴミ箱に普通に入ってたんですよ。

おお良かった!

A氏:慌ててそれを取ってポケットに入れて。何事もなかったかのように持ち場に戻って(笑)。

いや、本当に良かったです。

A氏:しかもね。実は、もうひとつ心配なことがあって…。

え、なんですか?

A氏:そのライターめちゃくちゃ高いやつだったんですよ。

END