見出し画像

小さい宿屋がサウナを始めた裏話(1)

ここで、話をサウナ事業を始める経緯に戻しましょう。

私はサウナが好きではありませんでした。
温浴施設でもサウナのドアを開けることはありません。汗を出す?熱さを我慢して耐える?そもそも水風呂がある意味がわかりません。サウナに入る人の気が知れない、という感じでした。
どちらかというとサウナは嫌いな人でした。

現在の私の商いは、主に北関東の海無し県から来てくださる海水浴のお客様のための宿泊業です。
この辺鄙な海辺の町は「日本海側海水浴場発祥の地」として、実は130年以上の歴史がある、北陸日本海エリア屈指の海水浴場でした。今でこそ、寂れた海辺の町ですが、昭和からバブル景気に湧く頃までは、夏の1ヶ月で100万人の海水浴客が訪れる賑やかな場所でした。

当館も、昭和50年代には別館を建て、最大で1日100名近いお客様が宿泊するほど、村全体が活気にあふれていました。
あれから30年を経て、世の中は肌を健康的に焼く時代から、日焼けを嫌う時代になりました。若者のグループや、羽振りの良い自営業のお客様はやって来なくなり、週末しか旅行できないサラリーマンファミリーに客層が変わりました。平日の稼働率が大きく下がり、客単価が下がり、私が東京から新潟に戻った10年前(2009年)くらいから商いは厳しくなってきました。

そこへ追い打ちをかけたのが「新型コロナウイルス」です。

2020年春の事です。この夏、海水浴場は閉鎖こそされませんでしたが、それまで5軒ほどあった海の家は一軒も立たず、道路からビーチへの防砂フェンスは外されず、海水浴客は1日10名程度しか来ませんでした。文字通りの激減です。

10年前から「脱・海水浴」「海の価値創造」に取り組んできた私は、これで海水浴というレジャーに頼る観光がいよいよ終わる、と感じました。
しかし、この10年で取り組んできた事業は、まだ目論見通りの結果を残せておらず、課題も見えていたため、この海とビーチの新たな価値を見出す必要に迫られました。

そんな折、私が信頼する二人の「賢者」から、同じタイミングで「これから地方はサウナがいいと思うよ」と言われたのです。
2021年の7月でした。

小さい宿屋がサウナを始めた裏話(2)へ続く



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?