死闘!!ヘビィボウガンVSサボテン野郎
≪ストーリー≫
咄嗟の、やむを得ない判断であった。≪あなた≫はディアブロスの縄張りで立ち往生したクエスト依頼人の救助にやってきていた。しかし、≪あなた≫が現地に到着したときには既に、依頼人はディアブロスに襲われて動けなくなっていた。≪あなた≫は負傷したクエスト依頼人を背負って安全な場所まで撤退するため、愛用の武器を砂原のど真ん中に放り出してきてしまった。
≪あなた≫は砂原地帯から離れ、岩窟に身を潜めると、依頼人の応急手当てを行った。まだ息はあるが、意識は戻っていない。適切な医療を施さなければこの先どうなるかは、なんとなく想像がついた。
クエストにはヘビィボウガンの使い手が同行していた。彼はこの救護時間を稼ぐため、角竜に対して無茶な挑発をし続けてくれた。角竜の猛攻に晒され続けた彼があとから岩窟に転び入ってきた時には、既に満身創痍であった。
「通常弾をたんまりご馳走してやったぜ…なあ、おれの得物を持っていけ…後を頼んだぜ…そいつ、死なすなよ…」ガンナーはそう言い残すと気を失い、不穏ないびきをたてはじめた。
≪あなた≫はガンナーのフクズクにギルドへの救難要請を括り付けて飛ばした。だが、岩窟の外では、怒りを湛えた角竜が縄張りを荒らす不届き者を探している。かの暴君が去らなければ、救援はおろか、何人たりともこの地に立ち入ることはできないだろう。
≪あなた≫はディアブロスを排除しなければならない!
1
〜ルール〜
物語の途中で提示される選択肢に応じて、指定された番号のパラグラフへ進み、よい結末をもたらせ。このテクストはゲームブックの形式をとっているから、伝統的作法に則って、次のパラグラフには手動で飛ばなければならない。目次とブラウザバックをうまく使うのがコツだ。わかったか。
【わからない→1へ】
【わかった→2へ】
2
≪あなた≫は気絶ガンナーの装備をあらためた。彼が携えていたのは、存在する空間に緊張をもたらすような、洗練されたフォルムの、雌火竜素材のヘビィボウガンであった。その銃口は岩窟の入り口から射す光を受け、鈍く、美しく、輝いていた。ガンナーの弾薬ポーチを持ち上げてみるとずしりと重く、まだまだ十分な弾丸が残っているようだ。
≪あなた≫は
【このヘビィボウガンを借りる気にならないので、このまま岩窟を出て、自分の武器を拾いに行くことにした→17へ】
【このヘビィボウガンを借りて角竜を討つことにした→6へ】
3
≪あなた≫は無事にリノプロスを見つけると、ヘビィボウガンによる渾身の殴打で仕留めた!これしきで銃身がへしゃげたりはしない…!ヘビィボウガンは頑丈だ!
≪あなた≫は剥ぎ取った生肉を肉焼きセットに載せて炙りはじめた。たちまち、脂の焼ける旨そうな匂いが立ち込めた…多くのモンスターにとっては、それは火竜や蛮顎竜のような、「火炎を扱う上位捕食者の存在を知らせる、警戒すべき匂い」だ。捕食者たちが火を扱うのは完全に臨戦態勢のときであり、不用意に近づけば死の危険がある。
一方で、捕食者がその場を去れば、後には"おこぼれ"が残されている可能性もある。ゆえに、有象無象の小型肉食モンスター共は、脂の焼けるの匂いに対しては「嗅がぬフリ」をし、後でこっそり現場の様子を見に行くのである。
もちろん、逆に縄張り意識の強いモンスターを誘き寄せてしまうこともあるが、≪あなた≫は経験則により、今この瞬間の肉焼きは安全であると判断したのであった。いざとなれば、邪魔物はこのヘビィボウガンで始末すれば良いのだ…!
【→15へ】
4
≪あなた≫は砂原地帯を見下ろす崖上に到達した。下の様子を窺うと、ディアブロスはこちらに尻尾を向け、サボテンを貪っている最中だった。腹ごしらえが必要なのは人も竜も変わらない。ディアブロスから少し離れた砂地には、≪あなた≫が置き去りにしたなんらかの武器が落ちている。それは存在する空間に緊張をもたらすような、洗練されたフォルムの、なんらかの武器であった。その表面は砂原の照りつける陽光を受け、鈍く、美しく、輝いていた。
≪あなた≫は崖から降り、ディアブロスの近くまで忍び寄ると、岩影からその様子を注意深く観察した。ディアブロスの尻尾の付け根、そして翼膜には砂塗れの赤黒い抉れ傷があり、おびただしい量の出血があったことが窺い知れる。これは紛れもない『致命の弾丸』の着弾痕であった。
【→11へ】
5
空腹と極限のプレッシャーで突然あたまがおかしくなってしまった≪あなた≫は、四つん這いになると無我夢中でヘビィボウガンに齧り付いた!硬い!ヘビィボウガンはおいしそうだけど、食べちゃいけない食べられない!≪あなた≫の背後に突然のはぐれジャギィ!!
【→8へ】
6
≪あなた≫はヘビィボウガンをその背に負おうとしたが…その前に、弾薬ポーチの中身をあらためた。そして目当てのもの、回復弾を取り出すと、ヘビィボウガンに装填し、ガンナーと依頼人に向けて発射した。回復薬の経口摂取が困難な意識不明の負傷者に対しては、有効な処置である。
弾薬ポーチの中には一通りの弾丸のほか、『旧LV2 貫通弾』など、数種類の珍しい弾丸も入っていた。これはモンスターの牙や脊椎から作られた弾丸であり、かつてはギルドストアでも取り扱いがあったものだ。しかし、弾丸製造のための小型モンスター乱獲が問題視されたことや、流通網の拡大により異なる地域間で規格の違う弾丸が出回ることを懸念したギルドは、これらの製造を全面的に禁止した。
現在ではどの地域でも、新製法の『LV1 通常弾』をベースとした、モンスター素材を材料に使わない弾丸が出回っている。ただし、ギルドが禁止したのは製造のみであるため、すでに市場に出回っている分の旧式弾丸の処分方法は、各地域のハンターズギルドの裁量によることとなった。
≪あなた≫の所属するカムラの里のギルドでは、一部のハンターに対して、通常の携行許可数の上限を超えてこの旧式弾丸をクエストに持ち込み、現行規格の弾丸に混ぜて消費することを許可している。老獪なギルドマネージャーの打ち立てた「現行規格の弾丸の節約になるでゲコ!」というとんでもない建前論が罷り通っているのだ。許可は三段階のライセンス制であり、このガンナーはおそらく、所持弾丸の20%の『弾丸節約』が許された、上級ライセンスの所有者だ。
残念ながら、他者へ譲渡した旧式弾丸はライセンスの適応外となる。≪あなた≫は弾薬ポーチから旧式弾丸を全て取り出し、ガンナーの側にそっと置いた。
ガンナーの表情は、心なしか、安らかになった。
【→19へ】
7
≪あなた≫が翔蟲を解き放つと、翔蟲は驚くべき速度で鉄蟲糸を噴出し、ヘビィボウガンと大地とを縫い合わせた!鉄蟲糸技アンカーガード!!鉄蟲糸は砂中で網目状に展開し、砂を取り込んで即席の砂嚢を形成する!この砂嚢が角竜の地中急襲の威力を大きく減じるのだ!
大地の振動が一瞬止まり、直後、≪あなた≫の足元からねじれた片角が突き出した!アンカーガードにより、その威力は十分に軽減されている!≪あなた≫は鉄蟲糸を纏ったヘビィボウガンを盾とし、突き上げから身を守った!!
怨敵を貫殺すべく、地から天へと真っ直ぐに突き立てられる悪魔の片角!だが、ヘビィボウガンの比類無き堅牢さがそれを許すことは決して無い!角の先端は火花を散らしながらヘビィボウガンの表面をなぞると、その向きを変え、恨みがましく虚空を切り裂いた!その衝撃は鉄蟲糸に吸収され、ヘビィボウガンの内部へと余すことなく伝達されていた!
鉄蟲糸はヘビィボウガンの機構内部にまで浸透し、砲身の最奥部に繭のような弾丸と、それを撃ち出す弦を編み上げていた。繭弾は火薬の力を使用せず、強靭な鉄蟲糸の張力のみで発射される。その機構はあまりにも原始的、まさに巨大なスリングショットであり、投石器である…!だが、人間の膂力では、この鉄蟲糸の弦を引き絞り、繭弾を装填することは叶わない。装填には、強い衝撃の利用が必要なのだ。そして今、繭弾の装填は成った…!
ヘビィボウガンの鋼鉄の砲身は、極限の負荷に鳴動していた。≪あなた≫の眼前では、砂から這い出でたディアブロスが、無防備に喉元を晒している。
≪あなた≫は決断的に引鉄を引いた!!!
【→14へ】
8
≪あなた≫はジャギィにおしりをかじられてしまった…
【クエスト失敗/ゲームオーバー】
9
≪あなた≫はヘビィボウガンを折り畳んで背中に…否、振動が近い!間に合わない!≪あなた≫は咄嗟の状況判断でヘビィボウガンをその場に放り捨て、回避行動を取った!
間一髪!ねじれた片角が大地を穿ち、≪あなた≫のいた地点の砂が爆ぜた!≪あなた≫は既に走りだしている!その視線の先には、≪あなた≫の武器!なんらかの!
≪あなた≫が前傾姿勢でなんらかの武器に手を伸ばしたまさにその時、≪あなた≫の後頭部に衝撃が走った!そのまま力なく崩れ落ちる≪あなた≫の眼に映ったのは、ディアブロスに空高く撥ね上げられ、落下し、≪あなた≫の後頭部に直撃した何かであった。それは存在する空間に緊張をもたらすような、洗練されたフォルムの……………≪あなた≫は気を失った。
ディアブロスは低い唸り声を上げながら、倒れて動かない≪あなた≫を睨み続けた。己の片角をへし折った怨敵の姿形を、決して忘れないように。記憶の奥底に深く深く刻みつけるように。…やがて、角竜は足を引き摺りながら去っていった。
この地に歪に捻れた片角を持った角竜が現れ、数多の狩人を葬るようになるのは、また別のお話だ。角竜が去ると、砂中からデルクス達が顔を出し、≪あなた≫を取り囲んだ…。
≪あなた≫はデルクスの群れにおしりをかじられてしまった…
【クエスト失敗/ゲームオーバー】
10
≪あなた≫はなんらかの武器を納めながら、やっぱりマイ武器が一番だぜ的なニュアンスのことを言った!ヘビィボウガンであろうとなかろうと、強い武器は強い!!
【クエストクリア/その武器愛を大切にねエンド】
11
≪あなた≫はかつてウツシ教官にさまざまな武器の特性について教わった時に、こんな話を聞いたのを思い出していた。ヘビィボウガンは、理論上は十発かそこらの弾丸でモンスターを仕留められる武器なのだ、と。
火薬の力で撃ち出され十分な回転を得た弾丸が、モンスターの特定の部位の鱗や甲殻の僅かな隙間に、適切な角度で着弾した場合、弾丸は体組織の奥深くまで突き進み、生命維持に直結する器官を破壊したり、腱を断裂させて、モンスターに激甚なダメージを与えられる場合がある。
ディアブロスの場合であれば、翼の付け根にある体液の分泌腺がそうだ。角竜種はここから体液を噴出し、蒸発させることで気化熱による体の冷却を行う。この器官に不調が起きると、ディアブロスは体温調節が利かなくなり、やがては行動できなくなってしまう。一部の特殊な個体はこの分泌腺の異常発達により爆発的な体液噴出を行うため、注意が必要とされる。
また、尻尾の付け根には、比較的浅いところに動脈が通っていて、ここは剣士が狙う弱点でもある。幾度とない斬撃や打撃によって甲殻の外から体組織を少しずつ破壊してゆき、最終的には動脈を断裂ないし圧壊させ、失血死を狙うのがセオリーだ。
一方、『致命の弾丸』であれば、そうしたプロセスを無視して、体内器官に直接弾丸が届く。原理としては、モンスターの死体に剥ぎ取りナイフを上手に突き立てれば、外殻の強度に関係なく肉を裂き、解体ができるのと同じことである。
もっとも、いくら優れたガンナーであろうと、狙ってそうした部位に弾丸を撃ち込めるわけではない。だから数十発、数百発の弾を撃って、試行回数によって、この『致命の弾丸』の着弾確率を上げていくのだという。
「もちろん、そんな数の弾を浴びたら、大抵のモンスターはその蓄積ダメージ自体が原因で倒れちゃうんだけどね。ヘビィボウガンは強い武器だからね。」理論は理論でしかないことに、教官は念を押していた…
いま、≪あなた≫の目の前にいるのは、明らかに『致命の弾丸』をその身に受け、生命力を大きく減じているディアブロスである。あのガンナーはあの僅かな撤退戦の間に少なくとも二発、『致命の弾丸』を当てていたことになる。運か、実力か…いずれにしろ、これはヘビィボウガンの強さの成せる技だ…ヘビィボウガンは強い。
ヘビィボウガンの強さのおかげで、ディアブロスは間違いなく弱っている。もうあとひと押しで、すぐにでも討伐できそうだが…
【この機を逃さない。狙撃竜弾で狙い撃つ!→12へ】
【この機を逃さない。自分の武器を拾う!→16へ】
12
≪あなた≫は動作音に細心の注意を払いながら狙撃竜弾を装填すると、岩影から半身を出し、狙撃の態勢に入った。
狙撃竜弾の中身は螺旋状に巻かれた爆薬である。着弾の慣性により螺旋がほどけてモンスターの体表に付着し、連鎖的に爆発する仕組みとなっている。狙いさえ正確ならば、飛竜種の尻尾への着弾でも頭部にまでダメージが届き、衝撃で脳震盪を引き起こすことすらも可能だ。
尻尾をこちらに向け、頭を低く下げてサボテンを食むディアブロスは、まさに狙撃竜弾の絶好の標的であった。≪あなた≫は尻尾の付け根、『致命の弾丸』の着弾痕に照準を定め、引鉄を引いた!
【→18へ】
13
ジャギィ達を返り討ちにした≪あなた≫は、砂原地帯の近くまで戻ってきた。フクズクの知らせでは、ディアブロスは一帯を徘徊したのち、先程遭遇した地点に戻っている。決戦が近い。
((グルルルルルル…!))どこからともなくおぞましいモンスターの唸り声が聞こえた…ように感じたが、音の発生源は、≪あなた≫のおなかであった。食糧の持ち合わせはない。何かを食べてスタミナをつけたいところだが…
【ハンターの基本は肉焼きだ。周辺の草食竜を探す→3へ】
【もしかしてヘビィボウガンって食べられるのでは…?食べてみるしかない!→5へ】
14
凄まじい炸裂音が、ディアブロスの小さな断末魔をかき消した。アンカーガードに続く必殺の射撃、カウンターショット。射撃の反動で真後ろに吹き飛んだ≪あなた≫は受け身を取り、前方を見据える。砂漠の暴君は、その身を熱砂に横たえた。数度身じろぎし、そして、動かなくなった。
狩りは終わった。角竜の縄張りに踏み入ったのは人間の方であるが、その代償が命であるというならば、甘んじて支払う道理は無い。咄嗟の、やむを得ない判断であった。
≪あなた≫は自分の武器を拾いに向かった。≪あなた≫はまだ砲身に熱を持ったヘビィボウガンをいちど地面に置き、なんらかの武器を拾い上げた。武器に異常がないことをあらためると、堂に入った納刀をおこなった。
ガンナーのフクズクが戻ってきた。どうやら少し前から上空を旋回し、降りるタイミングを待っていたようだ。フクズクは小さな巻き紙を≪あなた≫の掌に落とすと、鎮座するヘビィボウガンのスコープ部に着地し、誇らしげに胸を張った。
巻き紙には「角竜を仕留めたようだな。我々は無事だ。このまま救助を待つ。もし私のヘビィボウガンに砂泥のたぐいや血液が付着している場合は、落とすのが大変なので、乾燥する前に早めの拭き取りをお願いしたい。狙撃竜弾の巻き直しや、点検などは私が行うので、そのまま返却して頂いて結構。使用弾薬数もこちらで報告をあげておくから、弾薬ポーチもそのまま返して欲しい。」と書かれていた。限られたスペースにはもっと他に書くべきことがあるように思われた。
砂原地帯から離れた沼地では、群れからはぐれたジャギィがリノプロスの死体を見つけ、その腑にありついていた。いちばん柔らかくて美味しい部位の肉は、だれかが先に食べてしまっていた。
【クエストクリア!/ヘビィボウガンを信じた結果エンド】
15
岩窟のガンナーはそろそろ目を覚ます頃だろうか。ジャギィ達の死体が手に入ったのは僥倖であった。あれを見せしめに捨て置けば、少なくとも、岩窟に立ち入れるサイズの肉食生物は、あの場所に近寄らないだろう。
≪あなた≫はしばらく無言で肉焼きセットのハンドルを回し続けた。腹が減っていては狩りはできない。緊迫した状況下であっても、否、緊迫した状況下であるからこそ、狩人は腹を満たさなければならない。
…やがて、肉が焼けた。それは存在する空間に緊張をもたらすような、洗練されたフォルムの、こんがり肉であった。その表面は砂原の照りつける陽光を受け、鈍く、美しく、輝いていた。
≪あなた≫は肉に喰らい付いた。パリパリに焼き上がった表面を食い破ると、中からアツアツの肉汁が溢れ出した。一口目を飲み込む前に、二口目に齧り付く。三口!四口!腹の底から活力が湧き上がってくる!やがて肉を食べ終わった≪あなた≫は口元を拭い、骨を地面に突き立てると、ディアブロスの待つ砂原地帯へ駆け出した!腹ごしらえは済んだ!角竜を討つべし!
【→4へ】
襍ォ閠?
≪あなた≫は岩窟を出て、ディアブロスを討伐するべく移動している最中であった。先ほど依頼人を背負って走った路を戻るだけの行程であったはずだが、どこで道を間違えたのか、予定と違うエリアに到達してしまっていた。≪あなた≫は首を傾げて地図を広げた。
ここは、本来辿り着くはずのない場所であった。不思議な星の巡り合わせが≪あなた≫をここに導いた。そして星は、本来この地に来るはずではなかった者をも招いていた。
≪あなた≫は奇妙な甲高い音を聴いた。音はずっと昔に、ずっと遠くから発せられた、古い情報であった。その者は音よりも速くこの地の上空に飛び来たり、今はもう、地表への衝突に備えてその速度を緩めている最中なのだから。
≪あなた≫の正面至近距離で、赫色の大爆発が起こった。≪あなた≫は芸術的な錐揉み回転をしながら弾丸の如く吹っ飛ばされ、ソウソウ草の茂みに頭から突っ込み、おしりを突き出した格好で気を失った。
天より来たりし凶星…バルファルクは、なんらかの目標を達成したかのように満足げに唸り声をあげると、何処かへと飛び去っていった。
【クエスト失敗/ゲームオーバー】
16
≪あなた≫はその場にヘビィボウガンを置くと、ディアブロスの視界に入らないよう姿勢を低くして、なんらかの武器まで近づいていった。武器まであと五歩。四歩。三歩…ディアブロスの動きが止まった。…気づかれた!
サボテンから首を上げてゆっくりと振り返ったディアブロスは、憎悪の唸り声を上げると、真っ直ぐ≪あなた≫に突っ込んできた!
≪あなた≫はなんらかの武器を拾い上げると、なんらかの技を放ってディアブロスを迎撃した!右角粉砕!
≪あなた≫はなんらかの武器を持ち替え、なんらかの技を放ってディアブロスを追撃した!左角粉砕!
≪あなた≫はなんらかの武器を持ち替え、なんらかの技を放ってディアブロスを追撃した!眉間に直撃!ディアブロス死す!
【→10へ】
17
≪あなた≫は岩窟を出ようとしたが…その前にアイテムポーチの中身をあらためた。そして目当てのもの、回復薬を取り出すと、フタを外し、ガンナーと依頼人にだばだばとふりかけた。回復薬の経口摂取が困難な意識不明の負傷者に対しては、さほど有効な処置ではない…が、やらないよりはマシであった。
ヘビィボウガンを持たずに岩窟を出て歩きはじめた≪あなた≫を、岸壁の上からじっと見張る影がひとつ。それは狡猾なる狗竜の群れの斥候であった。「アォ!アォ!」≪あなた≫がひとりであることを認めるや、斥候は仲間を呼び寄せた!
ジャギィの群れは驚くべき跳躍力で≪あなた≫をとり囲む!少しでも隙を見せれば一斉に飛びかかってくるだろう…もうおしまいだ!なんという失態!武器を持たずに狩場に出ることを楽観視すべきではなかった!ヘビィボウガンさえ持っていれば…!
【→8へ】
18
放たれた狙撃竜弾は狙い過たず着弾!おしりのやや上から脳天にかけての連鎖爆発が起こり、ディアブロスは悲鳴をあげながらサボテンの上に転倒!!ねじれた右角は根本から爆発四散し、素材価値のない欠片と化した!!なんたる過剰火力!!狙撃竜弾は強い!!ヘビィボウガンは強い!!狙撃竜弾は強い!!!
さらに≪あなた≫は狙撃竜弾の廃莢と同時に前転し、立膝の姿勢となってありったけの拡散弾を撃ち込んだ!情け容赦ない爆炎の嵐がディアブロスを包む!全てを消しとばすこの圧倒的火薬量、もはやディアブロスは生きてはいまい…!
やがて、煙が晴れた。そこには黒焦げになって力尽きたディアブロスの哀れな死体が横たわって………否!死体が無い!!
ディアブロスは最期の力を振り絞って潜行し、追撃を逃れたようだ。大地から振動を感じる…奴は逃げてなどいない!地下からの急襲が来る!
【来るなら来い!!壮絶なる反撃の剛弾をお見舞いしてやる!!→7へ】
【ここは納刀して逃げる→9へ】
19
岩窟を出て歩きはじめた≪あなた≫ を、岩壁の上からじっと見張る影がひとつ。それは狡猾なる狗竜の群れの斥候であった。「アォ!アォ!」≪あなた≫がひとりであることを認めるや、斥候は仲間を呼び寄せた!≪あなた≫は借り受けたヘビィボウガンで迎え撃つ!
≪あなた≫が放散弾を乱射すると、ジャギィの群れは端から吹き飛んでいった。後には死体の山と、鉄と火薬の匂いが残された…!ヘビィボウガンは強い…!!
【→13へ】
---ゲームパートはここまで---
≪作品解説≫
ドーモ、ヘビィ・ニンジャです。おれはゲームブック形式のテクスト・アドベンチャーゲームを作ってみたかった。あなたがたはゲームブックを知っているだろうか?ゲームブックとは、文中で提示された選択肢に応じて、次に読むページや、物語の結末が変化する書籍のことだ。最初の選択肢以降の展開はバラバラに綴じてあることが多く、ページを進めたり戻したりしながら、その本のどこかのページにある真のエンディングに辿り着くところに楽しみがある。このルールを理解せずに1ページ目から順番に読んでしまうと話のつながりがわからなくなるため、遊ぶのには高い知能指数が必要だ。また、ページめくりの最中に未読のページをうっかり直視すると、ミーム汚染により初見攻略が不可能になるため、精密なページめくり動作が要求されるエクストリームスポーツでもある。
さらに、文中で正しい選択肢を選べなかった場合は、ただちに主人公が死ぬ。ゲームブックというのは、ライフポイント制などの惰弱なシステムは取っていない、情け容赦ないDESU-GEMUなのだ。世の中にはPTAの目を欺いて児童書に擬態したゲームブックが広く流通しているが、かいぞくのお宝を求めて無人島に出向いた主人公がワニの餌になったり、どくヘビに噛まれたり、おそろしいガイコツに襲われるなどの陰惨なゲームオーバーを迎え、全国のお子様にスリルとショックと深いトラウマを与えるのは日常茶飯事だ。おれは主人公が環境問題に取り組んで地球を救うという内容のゲームブックを遊んだことがあるが、おろかな人間どもの森林伐採を武力によって阻止しようとしたら、次のページで地球は滅んでしまった。おれのせいで、地球がほろんだ…おれは愕然とした。選択肢ひとつで地球が滅ぶ、それがゲームブックなのだ。
だが、おれは作者としてあなたがたに謝らなければならない。上で公開したゲームには、クリアが困難になる致命的なゲームバランス上の欠陥があるのだ。おれは入念なテストプレイを行ったが、何度遊んでもヘビィボウガンを食べようとしてしまい、ジャギィにおしりをかじられてゲームオーバーになってしまった。ディアブロスを討伐するエンディングは2種類のはずだが、どうやってもクリアフラグが立たないのである。アドベントカレンダーの公開日はきまっているので、納期に迫られてやむを得ず公開に踏み切ることにした。あなたがたもついにクリアできず、幾度とないゲームオーバーを迎えた後に、攻略を諦めてこの作品解説を読んでいることだろう。あなたがたが全員ジャギィにおしりをかじられてしまったのは、狩りの最中にヘビィボウガンを食べるという狂気の誘惑に抗えなかったからだ。クリアできなかったプレイヤーの990%がここで失敗したということをビッグデータが証明している。ここの攻略難度をもう少し簡単にするべきだった。
そもそも、あなたがたは何故武器であるヘビィボウガンを食べようと思ったのか?その原因に関して言えば、おそらくおれに非がある。おれは昨年2020年のアドベントカレンダーで、ヘビィボウガンを食べる記事を書き、食べられるヘビィボウガンを作ってしまったからだ。おれは記事の中で、「ヘビィボウガンが食べたいのなら、食べられるヘビィボウガンをDIYすればよい」的なことを書いたと思う。…だが、それはそう簡単なことではなかったのだ。あなたがたは食べられるヘビィボウガンにありつけず、飢えのあまりに凶行に及んでしまった。今回はジャギィにおしりをかじられるだけで済んだが、ゲームの内容次第では地球が滅んでしまう可能性もあった。おれは、地球に対して責任を取らなければならない…。
ヘビィボウガンを一度食べてしまったら、その経験をおれたちは忘れることができない。ティガレックスがポポの味を覚えて雪山くんだりまで飛んでくるのと同じく、2度、3度、やがては毎日、毎食ヘビィボウガンを食べたくなるものだ。だが、食べられるヘビィボウガンの製造には高いコストがかかる。食用アルバレストのパワーバレルにはポッキーの希少部位を使うし、フレームに使ったチョコウエハースの加工は困難なのだ。当時、最寄りのスーパーでは妥当なサイズ感のチョコウエハースは鬼滅の刃コラボのビックリマンチョコしか売ってなかったのでそれを材料にしたが、ビックリマンチョコは無理な力を加えると簡単に砕けてしまうため、おれはヘビィボウガンのなり損ないを量産してしまった。おれは失敗を重ねるたびにそれらを残さず食べて2kgふとり、真のヘビィ・ニンジャとなった。鬼滅シールはいらないので、処分に困り、知り合いの子供に与えた。子供は3月になると、ひな人形の頭に鬼舞辻無惨を貼り、輪ゴムで撃った。
情けない有様だった。ヘビィボウガン食を提案しておきながら、おれ自身がヘビィボウガンに飢え続けていたのだ。「ヘビィボウガンが食べたい!ヘビィボウガンをくれ!」おれはおかしくなっていた。震える手でマッチをこすると、おいしそうなヘビィボウガンの幻影があらわれては消えていった。必要量を満たすヘビィボウガンを毎日たべるのは、むずかしいことだったのだ…。
だが、安心して欲しい。おれはついに解決策を見出した。おれも、あなたがたも、毎日ヘビィボウガンを食べられないのも今日までだ。それどころか、あなたがたはこれからのあらゆる生活シーンをヘビィボウガンで満たすことすら可能になると断言していい。今日はその秘技をお伝えしよう。
手順①
食べたいヘビィボウガンを決めよう
▲今回は、最推しヘビィの「崩砲バセカムルバス」にする。
https://note.com/satzdatz/n/n75b3cd61802c
手順②
決めたら、粘土を捏ねて、ヘビィ原型を作る
▲粘土をこねたりするのはじめてだけど、なんかやってみたら案外それっぽいものができた。ディテールがあまいのは今後の課題とする。アドベントカレンダーの「初めての創作も大歓迎!」みたいな趣旨に全面的に甘えた格好だ。グリップとかの細かいパーツはまだだ。
手順③
食品用シリコンでミニチュアヘビィから型をとる
▲シリコンで型を取ったりするのは初めてだけど、なんかやってみたら案外それっぽいものができた。型から外すときにバセカムが割れてしまった。これはアロンアルファでくっつければ済むのだが、おれは誤って指につけてしまい、剥がれるまでバセカムと合体して暮らした。
手順④
型にチョコとかを流し込んで冷やして固めれば完成だ
ヘビィボウガンが再び食べられる!!!
バセカムチョーウマイ!!!!!
バセカムは白いので、おれはホワイトチョコをつかった。ホワイトチョコの溶かし方を調べると、50度の温度管理をしないと固まらないとか、光沢が失せるとか、テンパリングをしろとか、レシピサイトはいたずらに不安を煽って、おれたちをだまそうとしてくる。おれはテンパリングなどにはだまされない。おれは丹念な湯煎をおこなった。
◆
お分かりいただけただろうか?どこのご家庭にもある粘土とシリコン型を使えば、食品をいくらでもヘビィボウガン型に加工することができるようになるのだ。これでいつでも食べたいときに、ヘビィボウガンを食べることができる。ヘビィボウガン原型はお部屋に飾ることで、眺めて楽しむこともできる。型の応用次第では、おれたちのこれからの生活がヘビィボウガンで飽和することは必定だ。これからはあなたがたも致死量のヘビィボウガンを毎日食べ、地球の滅亡を阻止して欲しい。
これが、昨年の今日、食べられるヘビィボウガンを世に放ってしまったおれの、ささやかな罪滅しだ。
【おまけ:その他の使用例】
ヘビィボウガン型にクエン酸、重曹、香料を詰めて押し固め、入浴剤を手づくりしてみた。液体ヘビィボウガンに肩まで使って全身の皮膚からヘビィボウガンを吸収することが可能だ!!!!炭酸浴でこの世のストレスを撃ち砕け!!!!
HEAVYYYYYYYYYY!!!!!
▲入浴剤になった崩砲バセカムルバス
名付けて「崩泡バスボムルバス」!!!!
これが言いたかったアアアッ!!!!!
ヘビィボウガン残り湯は翌日排水溝へと流れていった。ヘビィボウガンは下水処理場から河川へ、河川から海へと流れ、生命を育み、蒸発して雨雲となり、やがて雨雪となっておれたちの街へ降るのだろう。
だから、雪の日には思い出してほしい。あなたの手のひらにおっこちて、静かに融けゆくまっしろな結晶はかつて、いっときの間、確かにヘビィボウガンであったのだと。
(ヘビィ・ニンジャ)
-BONUS TRACK-
≪ヘビィガンナーのモノローグ≫
おれたちが砂原地帯を見下ろす崖の上に到達した時、遺跡に身を潜めて救難を待ってるはずのそのクエスト依頼人は、今まさに角竜の尻尾の殴打を受けて吹っ飛ばされている最中だった。あたりには依頼人の収穫物と思しき、色とりどりの植物やら鉱石やらが散乱している。何故合流ポイントから動いて特産品を集めていやがるのかはサッパリわからんが、おおかたは角竜の縄張りに立ち入って、餌場のサボテンに手をつけちまった、ってところか。
角竜は領域の侵犯者に対して、威嚇による縄張りからの放逐だけでは済まさずに、過剰な攻撃を加え続ける場合がある。一見エネルギーの浪費にも思えるが、この異常な攻撃性は、過酷な砂漠地帯の生態系にとっては重要な意味を持つ。角竜は草食の竜だから、獲物を殺して食べたりはしない。だが、奴が葬った生物の遺骸は、生態系全体にもたらされる養分となる。生物を領域内で仕留めることは、巡り巡って奴の餌であるサボテンを育てることに繋がるのだ。つくづく、自然とは不思議なモノだ。よくできている。感心する。今はそんなことを考えている場合ではない。
今はそんなことを考えている場合ではないが、こうした生命や自然への畏敬は念頭に置いて行動しているつもりだ。ハンターたるもの、モンスターのことをよく見、聞き、知り、学び、狩場で起きている事態の本質の理解に努める義務がある。モンスターが何故、何に対して暴れているのか、どうすればそれを鎮められるのかを考えなければ、ギルドの理念たる自然との調和など、とうてい達成し得ないからだ。殆どの場合、考えた結果が「狩猟」の二文字に帰結するとしてもだ。
「救護を!陽動は任せろ!さっきの岩窟で合流だ!」おれは叫びながら疾駆けで崖を飛び出し、角竜めがけて空中からクナイを連投した。同行者はおれが叫び終える前に、既に依頼人の方向へ飛んでいた。おれはトゲトゲがおおい鎧を着ていて、同行者はトゲトゲのすくない鎧を着ているから、怪我人(生存は希望的観測だが)を運ぶのにこの分担は妥当だろう。トゲトゲが刺さったらあぶないからだ。
クナイが角竜の甲殻にトストスと突き刺さる。だが、角竜はおれに見向きもせず、依頼人に対して突進の構えをとった。角竜種は一度怒ると我を忘れる性質があり、外からの刺激にも無頓着になる。潜行時に音爆弾が効かなくなるのもこのためだ。つくづく、食い物の怨みは恐ろしい。
着地からの射撃は間に合いそうにない。痛いのはいやだが、人命第一。おれは空中で体を捻って、突進を開始した角竜の進行方向へ鉄蟲糸を飛ばした。激突の瞬間、疾駆けの慣性を載せて妃竜砲を振りかぶり、右の翼に叩き降ろした。
おれは吹っ飛ばされ、ワンバウンドして砂原に転がった。全身に激痛が走り、呼吸が止まりかける。だが、角竜のほうも無視できぬ質量の不意打ちに怯み、突進にブレーキをかけていた。やつは、ここではじめて、おれの方を見た。…それでいい。
おれは血反吐を吐きながら立ち上がると、依頼人が角竜の対角線に位置するように後転し、間合いをとった。足元は不安定な砂地だが、鎧のトゲトゲが砂に食い込むので、前転・後転による移動に問題はない。
角竜はおれを見据えながらも、まだ攻撃はしてこない。その眼には侮りの色が浮かんでいた。「失せろ。これ以上処刑の邪魔をするなら、おまえから殺す」とでも言いたげだった。
角竜の後方では、同行者がジェスチャーで依頼人の生存を伝えてきている。そして、躊躇なくその場に己の武器を放り出し、依頼人を背に負った。好ましい迷いの無さだ。あいつ、アクシデントに燃えるクチか。
同行者は撤退を開始した。角竜は俺から目を逸らして、そちらへ首を向けた。おれはその横っ面に通常弾を撃ち込んだ。そして、穴の開きそうな肺に限界まで息を貯めて、叫んだ。
「おまえの相手はおれだ!腰抜けサボテン野郎!!おれの妃竜砲と勝負しろ!!」
角竜は想定していない距離からの想定していない衝撃に戸惑いを見せたが、瞬時にそれは怒りと憎悪の感情に上書きされた。奴はぎろりとおれを睨むと、おれの怒声に応えるかのように、猛々しい咆哮を上げた。チョロい。畢竟、野生動物よ。
おれの役割は陽動だ。同行者の離脱を見届けたら、おれも頃合いを見て撤退しよう。
だが、この角竜はおれを侮っていた。
おれを侮るということには、おれのヘビィボウガンを侮るということだ。
ヘビィボウガンを侮るやつは絶対に許さん。
だからこいつには、もう少し付き合ってもらう。
ヘビィボウガンの味を、おしえてやる。