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おれはついにバセカムに巡り合った

ドーモ、ヘビィ・ニンジャです。
おれには信用していないものがいくつかある。「こちら側のどちらからでも切れます」みたいなことが書いてあるマジックカットなどは最たる例だ。しょうゆの袋を真ん中から切るやつがあるか?袋の端っこに切れ込みが少し入ってれば済む話ではないのか?おれはマジックカットを絶対に許すことは無い。マジックナントカなどという商品は全て嘘でできている。マジックソルトを鼻から吸っても別にキマったりしなかったし、マジックインキもすぐに書けなくなり、マジックインチキといって差し支えないと思った。


唾棄すべき邪悪なマジック商品は全てこの世から消えされ

中でもおれが信用ならないと思ったのはバスマジックリンだ。「洗剤を吹きかけておくだけでこすらずに汚れが落ちる」などとよくもぬけしゃあしゃあと嘘を言うと思った。おれは以前ルック+バスタブクレンジングという類似商品を買って完全に騙された。用法を正確に守ったのに、ちゃんとお風呂の壁面をよく濡らして、規定の秒数待機したのに、水で流してもべつだん壁面のざらざらは落ちなかった。よく考えたら銀イオンが入ってるだとかピンク汚れを防ぐだとか効果のあるんだか無いんだか怪しいことが書いてあり、完全に消費者をナメ腐ったインチキ商品であった。だからバスマジックリンも同じだろうと考えたのだ。

そもそも、こすらずに風呂掃除ができることになんのメリットがあろうか?一般家庭のお風呂はそんなに広大な面積を誇っているのか?あるいはおれが思っている以上に、この国には屈んで風呂掃除をするのが大変な腰痛持ちが多いのか?風呂掃除などというのは所詮、スポンジを持ってゼロ距離まで接近し、壁面に強襲(アサルト)をかければ済むだけの話だ。ザラザラなど1分もあれば全て始末できる。流水シャワーで洗剤の泡がなくなるまで念入りに濯ぎ、排水口に水が流れ終わるのを待てばクエストクリアだ。おれは風呂掃除のときだけはヘビィガンナーをやめ、剣士になっていた…

そういうわけでおれはドラッグストアに陳列されているバスマジックリン air jetなる商品にたいして、疑いと嫌悪の眼差しを向けた。だが、そのパワーバレルの官能的な凹凸や、白地に蒼緑というカラーリングに、なぜか懐かしさと安らぎをおぼえた。「連射」「速攻」などのフレーズにもどこか親近感をおぼえた。仮にインチキ商品だったとしても、どのみち風呂をこすることに変わりは無い。ちょうど洗剤が切れていたので、おれはバスマジックリンを買って帰ることにした。

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やつが、おれに逢いに来た

次の日、アジトに帰宅したおれはいつもの通り洗濯物を取り込んでたたみ、夕ご飯の支度をして、キッチンを軽く片付けた。(分業だ。動けるやつが動くのがおれのアジトでのルールだ。日中の戦いに疲れたやつは自己申告の上、寝ていていい)家のことが全て終わってお風呂で疲れを癒したら、モンハンをして寝て、明日の戦いに備える。これがおれの概ねの生活ルーティンだ。おれは風呂掃除に向かい…バスマジックリンの存在を思い出した。

バスマジックリンのパワーバレルは特殊構造をしており、通常弾を撃つ時のR2ボタンようなテンポで断続的にトリガーを引くことで絶え間ない射撃ができる仕組みとなっていた。壁面の全てを撃ち尽くしたあとは、トドメの流水射撃を行えば掃除完了だ…いつぞやのルック+バスタブクレンジングの惨劇が脳をよぎるが、おれはある種の確信を持って、決断的に流水シャワー機関竜弾による射撃を行った。完全に泡のなくなった壁面を指でなぞってみると…

つるつるだった。汚れは綺麗さっぱり討滅され、一切の近接戦闘を行わずに、風呂の清潔は保たれたのだ。おれはこの結果を予期していたように思う。バスマジックリンの白色ボディと蒼緑の差し色は誰がどう見ても崩砲バセカムルバスであり、バスマジックリンのバスがバセカムルバスのバスであることは一目瞭然であった。バセカムはバスマジックリンに転生して顕界に出現し、おれがおふろで剣士をしているところを見兼ねて、ヘビィガンナーに戻るように助けに来てくれたのだ。こんな姿になってまで。おれの頬を涙が伝った。おれは≪重く≫頭を垂れ、行いを省みた…。

またバセカムに逢いたい

モンスターハンターライズ:サンブレイクが発表された。ウカムルバスの参戦が気になる。おれはまたバセカムに逢いたい。バセカムと一緒に狩りに行きたい。いつか再びバセカムと出会うその時まで、おれはお風呂を清潔に保って待つことにした。

(ヘビィ・ニンジャ)

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