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スカム/アラン・クラーク

DVDの説明欄によればイギリスの『気がめいる陰鬱な映画トップ30』の第19位らしい。

理不尽なストーリーだけど映画自体はよくある自己満胸糞系じゃなくてカウンターカルチャーって感じで良かった。

暴力描写で有名らしく、トリアーとかアリ・アスターみたいな美的実存絶望系が好きな層にしか届いてないから、そういう意味でガッカリみたいな評価が多いけど私はそこらへんはどうでも良い。

以下ネタバレです

この閉鎖空間では問題解決という意味で生き延びる術を学ぶ事は出来ない。

その中で主人公カーリンとアーチャーがそれぞれ別の生き方をしていて、それが憂さ晴らしをずっと見せられ続ける様な、問いを丸投げするスタイルのこの映画のキーになっている。

主人公カーリンは体制側について暴力を振るう事で生き延びようとするんだけど、人間らしさを失っていく。

最終的に食堂の暴動シーンでは人間としての感情を優先し、結局は懲罰房に入れられる。

最後の整列シーンはメトロポリス(1929)の労働者を思わせる。

なかなか変えることの出来ない体制下で、主人公とは対をなすアーチャーの反抗的な態度や行動は自分を明らかに不利な立場に置いてしまっている。

まあ言えば賢い馬鹿という感じ。

発言も不条理で笑えるジョークだったり、ジョニー・ロットンの様な、荒削りだが彼なりに筋の通った体制批判だったり。

とにかく彼の目的は反抗でしかない。

他人や社会が自分の人権や尊厳の脅威になったときに、自分を守るために出来る事は「郷に入ったら郷に従え」みたいな、波風立たせずに生きる事だけでは無いと教えてくれる。

生き延びる上で正しくは無いのだろうが、彼は人間らしくある事に関して限りなく誠実だ。

変わらないとわかっていても、コンクリートの床でのたうち回りながらでも、嫌だと叫べないと人間らしさを失ってしまう。

私は残虐さとか絶望に頼る様な映画はあまり好きじゃないから暴力描写にはあまり文句はなかった。

面白がって血を沢山出す様な作品というより、あくまで怒れる若者を描きたかった様な感じで、パッケージの宣伝文句よりずっと誠実に感じた。

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