使い勝手の良い分子模型は・・・?
講義の準備の関係でいろいろな分子模型を試してみました。有機化学者としては昔ながらのHGS分子模型が定番ですが、海外製品も含め、最近ではいろいろな分子模型が出ています。コスパの観点からも使い勝手などをレビューしていきたいと思います。
※あくまで個人の感想です。
定番モデル
HGS分子模型
言わずとれた定番模型。一度は制作元の事情で廃盤になっていたけど、最近復刻した。
有機化学者の中で何故か人気が高い(?)。
・かくかくの原子に穴が空いていて、それに棒(結合)を突っ込むスタイル。
・価格は標準の有機化学学生用セットで3300円。まあまあな値段。
・元素の違いは色分けで表現。水素原子は白い球。原子サイズの差はわかりにくいかも?
・二重結合は弓形の棒を2つ突っ込むスタイル。
個人的にはこのスタイル、歪ませにくいので苦手です。
・結合長は異なる長さの棒で表現。これがバリエーションが豊富なので、マニアにはウケがよいのかも?
・棒は硬めのプラスチック製なので割と頑強。
総評:分子を組み立てる、初学者のための分子模型として優秀。頑強なので、持ってもその形が崩れにくい。結合の回転も結合が外れずにできるので、分子の動きをみるのには良い。ただ、それが仇となって歪んだ構造はつくりにくい。
個人的感想:歪ませられないので使いにくい・・・。
モル・タロウ
これも定番。大きさはHGS分子模型よりも小さく、原子の大きさが異なるのが特徴。透明でキレイな色で分けており、出来上がった分子模型がインテリアとして飾れるような感じになる。
・原子に突起がついていて、それにプラスチックの筒(結合)を接続するタイプ。
プラスチックの筒の結合は割と壊れやすい(特に三重結合)
・原子の種類は色分け、かつ、大きさも異なる。水素原子は緑色の小さい球。なくしやすい。。。
・炭素は直径1.1cm程度。
・価格は基本Aセットで5,500円。これだけで大抵の分子はできる。
・多重結合は突起の形が異なる。結合の色分けで多重結合を単結合と分けているが、これはこれでわかりにくいかも。
・柔軟な結合を用いたタイプがある。
総評:組み上がると綺麗な模型ができるので、部屋に飾るにはいいかも?多重結合も一本のプラスチックで表現しているので、分子自体は柔軟性がある。ただし、結合が破れやすいので回転させる、とかは難しい。あと、小さい。
個人的感想:柔軟な結合タイプと組み合わせると歪んだ構造も作れてよい!ただ、小さいので人に説明するには不向きかな。球とかが透明でキレイなので小学生とかに組み立ててもらうのには良いかも。
モリモッド分子模型
海外の人にはこれが定番?
・原子に穴が空いていて、突起のある棒を突っ込むタイプ。つなげるときに若干抵抗があって、一度くっつくと簡単にはとれない。
・原子同士は色分けで表現。水素は白い。結合は灰色。混成状態の違いは異なる球を用意して表現している。
・炭素は直径2.5cm程度。
・学生向けセットで7.260円!高い・・・。これで全部が表現できる数でもないんだな・・・。
・多重結合はHGS分子模型と同じで湾曲した棒を複数組み合わせることで表現。HGSとの違いはこの棒が柔軟性がある。
・結合長は実際を反映していないので、とりあえず分子を組み立てるにはいいのかな。
・結合の回転にはよさそう。ただ、原子の大きさに対して結合が短いので、構造の変化はわかりにくいかも。
総評:上記2種類と比べてでかい。中途半端なspace filling modelみたいな模型ができあがるので、見た目はザ・分子模型になる。科学館とかで飾っていそう。
組み上がったら構造は安定しており、結合の回転も柔軟なので、分子の立体配座とかを説明するにはよさそう。
個人的感想:結合長が微妙なところ以外は使いやすいかな!もう少し大きいモデルがあれば講義で使えそう(ただし、ない)。
他のモデル
コクラン分子模型
講義で見せられるような大きい模型はないか、と思って探してみた模型。とりあえず、でかい。
・他では類をみない、原子の球にいろいろな種類の穴が空いており、それにいろいろな種類の結合をくっつけるスペーサーをつけていくタイプ。
・結合は金属製の筒。割と軽い。
・結合とスペーサーははめ込むだけ。これが外れやすい・・・。
・混成状態の違いはスペーサーをつける場所で表現。sp2炭素はなんと、球を半分に割ってスペーサーをはめ込む。
・値段は3万円近いんじゃなかったかな・・・。
総評:でかいけど、もろい・・・。結合の回転はそのせいでやりやすいけど、実際に使ってみるとぽろぽろ外れるので安定性は低い。
個人的感想:誰だ、使いやすいって言ったの・・・。