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【刀剣鑑賞】2022年4月 名刀は語る展@愛媛県美術館

日本刀に反りが生まれるのはなぜだろうか?

2022年4月のある日。事前に知っていたとかではなく、ただ用事があって愛媛県松山市に旅行に行った際、ちょうど愛媛県美術館で開催中だったからという理由だけで「名刀は語る 展」を見に行ったわたしが抱いたひとつの疑問だ。

https://www.artagenda.jp/exhibition/detail/6018

ゲーム「刀剣乱舞」のキャラクターの元になった「蜻蛉切」「松井江」が展示されるらしいから、というかなりライトな(よこしまな?)理由で見に行ったわたしは、展示とともに記された日本刀のさまざまな説明に大いに興味を惹かれた。
たとえば冒頭でも記した日本刀の反りについては、「製造の過程で材料工学的に反りが生まれるのか」それとも「実用上の理由で反りを生んでいるのか」が理解できず、気になった。また、日本刀の刃に見られる模様「刃文」についても、「直刃や乱れ刃など複数の種類があって刀工や刀派の特徴になっていたり、美的価値を高めている」といった説明はあっても、同様にそれがなぜ生じるのか理解ができなかった。

この展示で抱いた疑問がきっかけとなり、日本刀に関する基礎知識をインターネットや本で調べ回るようになった。とくに、後述する「日本刀の科学」は大いに勉強になる資料だった。


せっかくなので、反りと刃文について、当該資料で調べたことを簡略化して説明させてほしい。

刃文や反りが生じるのは、「折れず曲がらずよく切れる」刀を作るための工程の結果だと理解した。
まず、刃側は切れ味のよい「マルテンサイト」という鋼組織になっており、いっぽうで棟側は延性や靭性に優れた「パーライト」および「フェライト」という鋼組織になっているのだそうだ。この違いを生み出すためには焼き入れの際の冷却の速度が異なっている必要があるらしく、そのために「焼刃土」と呼ばれる土を棟側には厚く、刃側には薄く塗って、それぞれの冷却速度を遅める/速めるらしい(薄く塗った方が、塗らないよりも急冷されるらしい)。
そして反りが生じる理由も、組織構造が異なることに由来している。棟側と刃側とで、それらを構成する組織の体積膨張率が異なるために、片方が引っ張られることで生まれているらしい。
もちろん、その上で美しさ・使いやすさのための反りや刃文の調整も行われるのだろうが、近代科学など一切存在しない時代にすでにこの技法が確立していたということに、驚きと尊敬の念を禁じ得なかった。

どこまでも合理的でいて、それなのに美術品としても一級品。その上、それが今より一千年以上も前から経験則に基づいて技術として確立されている。「そんなうまいこといく!?」というのがわたしの正直な感想である。この感動がトリガーとなって、わたしは刀鑑賞の完全など素人から、ちょっとした素人に足を突っ込み始めたのだった。

ほかにもこの「名刀は語る 展」では太刀と打刀の違い(佩刀と帯刀の違い)、銘と号の説明、刀剣鑑賞の基本としてライティングによる見え方の違いなども丁寧な説明がなされており、完全なる初心者なわたしが初歩を学ぶのにもってこいの展示であった。

このように、完全ど素人なわたしが半年も前の企画展を思い出して記しているので、大変残念ながら刀それぞれの記憶がない……というのが現状だ。おぼろげながら「南北朝時代の刀は鋒がゴツかった気がする」「平安時代あたりの太刀は優美な感じがした」という程度だ。あまりにもお粗末である。
だが、このお粗末具合がわたしに「せっかく刀を見るなら知識をつけないともったいないのではないか」と思わせてくれた。

初めての刀剣鑑賞は、わたしに日本刀という「機能・合理性を兼ね備えた美の結晶」の魅力に気づかせてくれた大切な企画展であった。

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