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『クジラがしんだら』
江口絵里 文
かわさき しゅんいち 絵
藤原義弘(海洋研究開発機構)監修
童心社
この目を丸くしている魚たちの上にクジラの死骸が降って来ます。年取ったクジラが死んだのです。
ここは真っ暗な深海。マリンスノーが星のようです。真っ暗な深海にこんなにたくさんの生物がいるのですね。
くじらの死骸はみんなの食べ物になります。ユメザメ、コンゴウアナゴ、タカアシガニ、ウニもやってきてご馳走にありつきます。真っ暗な深海で、彼らはどうやってクジラが落ちて来たことを知るのでしょうか?
なんと、においで集まってくるのだそうです。鮭も、においで生まれた川に戻ってくるというし、海の生き物は鼻がいいのですね。
ダイオウグソクムシという兜のような生き物もやって来ました。何年か振りの食べ物だそうです。何年も食べないで、食べ物を待っているなんて驚きです。
そうやって死んだクジラの体は他の生き物たちの命を繋ぎます。骨だけになったクジラに、今度はホネクイハナムシという生き物が赤い海藻のようにくっついて、骨を食べてスカスカにしてしまいます。そして卵を産んでやっぱり命を繋いでいくのです。
最後の質問コーナーに、潜水調査船「しんかい」が出ていました。ずーっと前に写真絵本で見たことがあります。水深6500メートルまで、人を乗せて潜れるのだそうです。こういうものを使って、深海の様子を知ることができるのですね。
一生知らなかったであろう深海の世界を垣間見ることのできる絵本です。素晴らしい。