
『て なにしてるの?』
みやにし たつや 作
金の星社
手が、ギターを弾いています。
「て なにしてるの?」
と書いてあります。
ページをめくると、
「おんがくはさいこうだぜ!ジャジャジャーン」と男の人がギターを弾いています。
そして、手と手を強く握り合っている絵が出てきます。ページをめくると
「まけるもんか!」
「まけねえぜ!」
と、腕相撲をする人のセリフが書かれています。
「て、なにしてるの?」と、この手を握っている絵が出て来た時に、きっと子どもなら
「握ってる」
「握手してる」
「うでずもう」
などと言うでしょうね。そしてページをめくるとそう言う答えを外した腕相撲で戦っている人のセリフが書かれています。
きっといろんな答えを言ってもいいように、はっきりした答えではなく、手を使って何をしているかが描かれているのだと思います。一つの答えをはっきり書いてしまうと、読者がそれ以外は不正解と受け取ってしまうので、色々な正解を許したいんじゃないかな、と勝手に考えました。
手がどんな動きをしているか?
なども絵を見ながら考えることができますね。
人間は、ほとんどの仕事を手を使ってします。
コンピューターを操作するのも
スマホを操作するのも
お金を払うのも、
お釣りをしまうのも
書類を渡すのも
受け取るのも
お茶を入れるのも
飲み物を飲むのも
本を読む時本を持つのも
ページを抑えるのも
ノートやメモを書くのも
ペットに餌をあげるのも
洗濯機のスイッチを押すのも
ご飯を作るのも
……
書いていくとキリがありません。そのくらい人間の仕事は手を使ってするものが多い。
だから手に注目することは、人間の広い意味での具体的な仕事〜つまり、給料をもらう仕事だけでなく日常の動作まで含めた人間の営み〜に注目するということです。手に注目することは、子どもが人間の仕事というものを観察するためのとても有効な手段です。
だから、この絵本を見て子どもが「手がなにをしているのかな?」と注目することは、とてもいいことだと思うのです。そういう意味でこれは面白い絵本だと思います。