たった一面


目の前には縛られた中国人の死刑囚。

銃剣で心臓を突けという上官からの命令。

躊躇して、あばらで止まった銃剣。

自分を睨みつけるその顔が、60年経っても忘れられない…


蟻の兵隊というドキュメンタリー映画の主人公、
奥村和一さんのお話。
私の恩師がご本人から直接聞いたらしく、その話を昨日聞かせてもらった。

私は戦争経験者にはどんどん経験談を語ってほしいと常々思っていた。(戦争経験者が少なくなっているから)

だから以前親戚の集まりの際、70代の大叔父に
「お父さんから戦争の話とか聞きましたか?」
と質問したら
「全然聞かなかった。たぶん言いたくなかったんだと思う」
と言われた時に、
未来のためには経験談をどんどん伝えていくべきと思っていたけど、言いたくない場合もあるのか…なんでかな…難しいな…と思っていた。

そして昨日奥村さんの戦争経験を聞いた時に分かった。
戦争は加害の側面があるということ。

いくら国のためや上官の命令であったとしても、
国に帰れば人殺しと責められることもある。

奥村さんは帰国後結婚して子どももいるが、
自分が人を殺したことをずっと言えなかったらしい。

わからんけど、きっと、めちゃくちゃしんどかったのではないかと思う。

戦争で生き残っても、帰国後に自殺してしまう人も多い。

自分はこういう被害を受けた、というのは言いやすいけど、
自分はこういう加害をした、ということを人に言うのは勇気がいると思う。

その人の立場や環境なんて何も考えず、たった一面だけを見て軽蔑する人や責め立てる人なんて、どの時代でもどこにでもいるやろうから。

そのまま誰にも言えずに消えてしまった戦争体験がめちゃくちゃあるのやと思ったら、、自分は寛容な心でおりたいなぁと思う。

それが良いか悪いかをジャッジするのではなく、
ただ、受け止める。
その上でどうすればいいかを考える。

物事も、人も、色んな面を見るように意識したい。

さっとん

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