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最先端の経営学論文から - F1の現場に学ぶ、周囲からの助言の受け方

経営学のトップジャーナルに掲載された最新論文から、ビジネスパーソンが使えるアイディアを学ぶこの企画。

あなたは、重要な締め切りが迫っているのに、誰に助言を求めるべきか分からず、時間を無駄にした経験はありませんか?今日は、そんな悩みを解決するヒントをフォーミュラ1の技術チームの研究からお届けします。

今回取り上げるのは、"Organization Studies" に掲載されたアンドリュー・パーカー氏(ダラム大学)の論文「時間的プレッシャーが組織間の非公式な助言関係に与える影響:フォーミュラ1レーシングチームにおける共同作業の研究」です。


フォーミュラ1から学ぶ時間管理の秘訣

この論文は、フォーミュラ1の技術者たちが、時間的なプレッシャーにどのように対応し、他部門との助言関係を構築しているかを分析しました。

具体的には「低い時間的プレッシャー」と「高い時間的プレッシャー」の2つの異なる状況で、助言ネットワークがどう変化するかに焦点を当てています。

低い時間的プレッシャー(通常の業務中)

低い時間的プレッシャーの状態は、レースがない日常業務をやっている時が当てはまります。技術者たちは他部門と時間をかけてじっくり意見交換し、知識を共有することができます。時間的に余裕があるため、助言を求める側も提供する側も、互いに深く考え、時間をかけて問題を解決することができます。

この状況では「互恵的な関係」が重要になります。互恵的な関係とは、お互いに助け合うことを前提とした関係で、例えばAさんがBさんにアドバイスすれば、Bさんも後でAさんにアドバイスを返す、というものです。このような関係を新たに築くことで、周囲と信頼感が生まれ、互いに助けを求めやすくなり、その後も知識がスムーズに流れるようになります。

高い時間的プレッシャー(レース前・レース中)

一方、高い時間的プレッシャーの状態は、レース直前やレース中のような非常にタイトなスケジュールで行われる時を指します。この状況では、すぐに結果を出さなければならないため、他部門と時間をかけて丁寧に話し合う余裕がありません。ここで重要になるのは、「効率的なネットワーク」です。

効率的なネットワークとは、既に構築されている信頼関係や、あらかじめ決められたワークフローのことです。フォーミュラ1の技術者たちは、すでに確立されたネットワークを通じて、他部門から素早く正確な情報を得られるようになっています。これにより、迅速な判断を下すことができます。

この論文で示されているのは、プレッシャーが高い時には、互恵的な助言関係だけでは不十分で、迅速に対応できる効率的なネットワークが必要だということです。フォーマルなワークフローや、既存の信頼関係がなければ、緊急時に対応が間に合わず、結果的に仕事の進行が遅れてしまうのです。

両者のバランスがカギ

この論文の核心は、低い時間的プレッシャーと高い時間的プレッシャーに応じた助言ネットワークの使い分けが重要という点です。時間的に余裕がある時には、じっくりと互恵的な関係を築くことで、知識やアドバイスを共有し合え、新しい発見が生まれます。一方、時間がない緊急時には、既存のネットワークを活用し、素早く助言を得て迅速に対応することが求められます。

ビジネスパーソンにとって、このバランスは非常に重要です。時間的余裕があるときには、同僚や他部署と積極的にコミュニケーションを取り、互恵的な助言関係を育てることが、いざというときの大きな助けとなるでしょう。また、プロジェクトの終盤や締め切り前の高いプレッシャーの状況では、すでに築いておいた効率的なネットワークを活用し、スムーズに仕事を進めることができるようになります。


明日からできるライフハック

このフォーミュラ1の研究を基に、日々のビジネスシーンで使えるライフハックをご紹介します。

1. 頼れる"ピットクルー"リストを作る

まずは、困ったときに相談できる人のリストを整理することから始めましょう。F1のピットクルーのように、すぐに助言を得られる人たちをリストアップしておくと、いざという時に迷うことなく行動できます。この「頼れる人リスト」は、あなたがすぐに行動に移れるサポート役になってくれます。


2. 時間がある時は無駄話を

時間に余裕がある時は、新しい助言ネットワークを構築するチャンス。例えば、休憩時間に同僚と気軽にコーヒーチャットをして、お互いの悩みをシェアしてみては?こうした日常的な交流が、いざというときにスムーズな助言のやり取りを助けてくれます。


3. 助言をもらうだけでなく、提供する

互恵的な関係を構築するカギは「ギブ&テイク」。どちらが欠けてもいけません。助言をもらうだけでなく、自分も積極的にアドバイスを提供しましょう。相互に助け合うことで信頼が築かれ、より強力な助言ネットワークが形成されます。


まとめ

フォーミュラ1の技術者たちのように、信頼できる助言ネットワークを構築することで、忙しい日々でも効率よく動けるようになります。適切なタイミングで適切な助言を得ることで、あなたの仕事もスムーズに進むはず。今日のちょっとした工夫で、明日の大きな変化を生み出しましょう!


出典


Parker, A., Lomi, A., & Zappa, P. (2024). Effect of time pressure on informal advice relations across organizational units: Evidence from a study of collaboration within a Formula One racing team. Organization Studies, 1-25. https://doi.org/10.1177/01708406241261448

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