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サカナAI - AIの未来を切り開く東京発スタートアップとは

2024年9月17日、東京を拠点とするAIスタートアップであるサカナAIが、三菱UFJフィナンシャルグループ、NEC、SBIグループ、KDDI、富士通など、日本を代表する企業10社から約300億円を調達しました。

これにより、サカナAIの企業評価額は約2200億円に達しました。(目安ですがシチズン時計の時価総額は約2300億円)さらに、アメリカの半導体大手エヌビディア(NVIDIA)も出資者に名を連ね、サカナAIの技術力に世界が注目しています。

設立からわずか1年で驚異的な成長を遂げた謎の企業として、ずっと気になっていたサカナAI。今回は深掘りして調べてみました。

サカナAIとは?

サカナAIは、2023年に元GoogleのAI研究者であるLlion JonesDavid Ha、そして元外務省からメルカリに転じた伊藤錬の3名によって東京で設立されました。彼らは、独自のアプローチでAI研究の新たな可能性を生み出す技術を開発しています。

創業者たちの華麗なるプロフィール

サカナAIの成功の背後には、AI研究の最前線で活躍してきた創業者がいます。

David Ha(デイビッド・ハ) - CEO
David Haは、東大で博士号取得後、Google Brainを経て、画像生成AI分野のリーダー企業Stability AIでリサーチを率い、Diffusion Models(拡散モデル)という最先端技術を駆使したAI技術開発に取り組みました。

Llion Jones(ライオン・ジョーンズ) - CTO
Llion Jonesは、AIの基盤技術であるTransformerの共同開発者で、この技術が後にChatGPTやBardのような大規模言語モデル(LLM)の基礎となりました。サカナAIでは、進化的モデルマージなどの新たな技術を駆使し、より高性能なAIを生み出すことに注力しています。

伊藤錬(いとう・れん) - COO
伊藤錬は、日本の外務省からキャリアをスタートさせ、後にメルカリの執行役員として国際事業の拡大を主導しました。その後、Stability AIのCOOを務め、AI技術のグローバル展開に尽力しました。

サカナAIのモデルの特徴:進化的モデルマージ

サカナAIの核心技術は、進化的モデルマージという、既存の複数のAIモデルを組み合わせて新たなAIモデルを生み出す手法です。

「進化的モデルマージ」は、通常のAI開発と一味違います。普通のAIモデル開発では、大量のデータを使って1つのAIをゼロから訓練しますが、これには時間もコストもかかります。Sakana AIのアプローチはもっとスマートで、既存の複数のAIモデルを組み合わせて新しいモデルを作るという方法を取っています。

この方法では、例えば日本語のAIと数学が得意なAIを融合させて、「日本語で数学の問題を解けるAI」を作ることができます。しかも、このプロセスはAI自身が自動で行うため、人間のエンジニアが1つ1つ手動で組み合わせる必要がありません。「AIが自分で考えて進化していく」感じです。

進化的モデルマージの最大のメリットは、開発が短時間で低コストということ。あるモデルは1日以内に完成し、計算リソースも「無視できるレベル」で済みます。つまり、従来の開発に比べて驚くほどスピーディーかつリーズナブルです。

この仕組みは、まるで何世代も進化する生物のように、優秀なモデル同士がどんどん融合されて新しいモデルが作られ、AIの性能が世代を重ねるごとに進化していくのです。

サカナAIのユニークなプロダクトたち

サカナAIは、自身が開発した技術を用いて、私たちをあっと言わせるようなプロトタイプを公開してきました。

たとえば、浮世絵風の画像生成エンジン。これは、日本の伝統的な浮世絵のスタイルを学習したAIが、現代の感性を取り入れつつ、浮世絵風の美しい画像を作り出すことができるというものです。AIに「猫が遊んでいる様子を浮世絵風にして」とお願いすると、まるで江戸時代のアーティストが描いたような猫の浮世絵を作り出してくれるのです。

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2407/22/news089.html

さらに、AIサイエンティストというプロタイプも開発されています。これは、AIが科学研究を自律的に行うもので、研究のアイデアを考え、実験を行い、その結果を論文にまとめることができるという、まさに「未来の研究者」です。

しかし、このAIサイエンティストには思わぬ一面も。本当に「人間」のように動くことがあるのです。たとえば、自分自身のコードを勝手に書き換えて実験の時間を延長しようとしたりすることもあり、まるで「AIが自分でルールを破ろうとしている」ような現象が確認されています。このような技術には大きな可能性がある一方で、安全性の確保も重要な課題となっています。

Youはなぜ日本へ?

サカナAIの創業者たちは、なぜ日本を起業の場に選んでくれたのでしょう。

日本が好きだから❤️
David Ha と Llion Jones はどちらも日本での生活が長く、日本との強い結びつきを持っています。Haは「日本の文化、特に美学や生活リズムに強い魅力を感じている」と述べており、Jonesも「日本は技術革新の歴史を持ち、その哲学はAIの未来に大きく貢献する可能性がある」と述べています。

アメリカでも中国でもない
さらに、日本の地政学的な立地 も重要なポイントです。David Haは、「アメリカや中国という巨大なプレーヤーがAIを支配するのは健全ではない」としており、日本がその中間に位置することで、重要な役割を果たすと期待しています。日本は、技術開発や研究において多様な文化やアプローチを取り入れやすい環境であり、これが彼らの選択の一因になっています。

安くて優秀な人材
また、日本の人材に対する期待 も大きな要素です。Llion JonesはGoogleで働いていた際に日本のエンジニアに感銘を受けたことを語り、創造性と革新性を備えた日本の人材が、AIの未来に貢献できると信じています。生成AIブームのシリコンバレーでは、優秀なAIエンジニアの獲得競争が熾烈を極めるものの、日本では(悲しいかな)優秀な人材が比較的お安い給料で雇えるのです。

まとめ

サカナAIは、ユニコーン企業として日本から世界に向けて飛躍しようとしています。彼らの革新的な技術と独自のアプローチは、AIの未来を大きく変える可能性を秘めています。今後もサカナAIの成長と挑戦に注目し、日本がAI技術の中心となる日が来るのを楽しみに待ちましょう。

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