フリーランスや副業会社員に発注したい!業務委託メンバーと付き合うコツ
フリーランス(個人事業主)や会社員の副業希望者と業務委託契約を結び、プロジェクトベースで仕事をしたいと考える企業も増えてきました。
業務委託メンバーとうまくコミュニケーションをとっていけば、副業をきっかけに人材採用につながったり、低コストで事業を回せたりするなど企業メリットも大きいです。
今回は、複業フリーランスとして数十社と取引をしてきた経験をもとに、フリーランスや副業会社員とうまく付き合うコツをお伝えしたいと思います。
副業・兼業者は増えている
皆さんも実感があると思いますが、副業・兼業にチャレンジしたいと考える人は年々増加しています。
副業・兼業者を取り巻く調査、アンケートは多数ありますが、ほとんどの調査に「副業・兼業者は右肩上がり」と記載があります。
副業・兼業者は増えている一方で、「副業・兼業者と完璧にコミュニケーションがとれている」「適切なタイミングでプロジェクトにふさわしいフリーランスを見つけられている」「業務委託締結後もトラブルなくスムーズに進行できている」と自信をもって答えられる企業は、そこまで多くないのではないでしょうか。
業務委託メンバーにまつわる「よくある課題」
正社員やパートアルバイトと結ぶ雇用形態とは異なり、業務委託は指揮命令関係を持たない契約となるため、さまざまなトラブルが起こり得ます。
よくある課題、トラブルの一例を挙げてみます。
労働時間や業務内容に具体的な指示をしてしまいトラブルになる
報酬の決め方がわからない
ワーカーが音信不通で飛んでしまう
丁度いいスキルレベルのフリーランス、副業会社員が見つからない
業務委託契約書の作成方法が分からない
どこまで仕事をお願いしていいか分からない
どこまで情報開示していいか分からない
社員や社風になかなか馴染まず帰属意識が低い など
このように業務委託の人材を集める側の立場で見ると、複数の課題が出てきます。
業務委託の契約書の作り方や、労働時間管理に関しては、企業とワーカーの知識不足が背景にあります。
通常の社員と同じ感覚で採用しよう(そもそも業務委託は雇用契約ではないので「採用」という表現に違和感ありますが)と気軽にトライする前に、社内で情報整理し準備すべきと言えるでしょう。
フリーランスや副業会社員に発注する際の注意点
ここからは、私の体験や周囲のフリーランスなどの声をもとに、私たちに発注する際の注意点やコツを解説したいと思います。
補足すると、私の経歴は以下の通りです。
会社員時代にクラウドワークスなど活用し副業経験あり
会社員時代にフリーランスのワーカーを探しライティングやデザインのプロジェクトをディレクションしていた経験あり(発注者側の視点)
採用人事の経験(正社員/派遣社員/パートアルバイトなど幅広い採用経験あり)
複業フリーランス(個人事業主)として現在活動中
どの立場も経験したからこそ、とくにこれが大事と考えている内容を解説できればと思います。
注意点1:プロジェクト概要と目的・報酬サイクルを明確に伝える
とても基本的なことですが、フリーランスに依頼したいプロジェクトの概要、目的や達成してほしい目標、予算、納期、関わる組織や登場人物などをまとめて、明確にワーカーに伝えることが重要です。
日本では「人に仕事を与える」スタンスが根強く、「仕事に人を結びつける」いわゆるジョブ型の事業推進が苦手な方が多い印象です。
自社の新卒社員であれば、その日に思いついたタスクを五月雨式に命令しても問題はありませんが、フリーランスや副業会社員に発注する際は、事前に何かしらの納品=ゴール設定をしなければなりません。
NG例
「採用の仕事をお願いしたいのですが、いくらでできますか。実績をください。」
OK例
「〇〇職を中途で~月までに2名採用したいです。過去に~~のやり方で失敗したため今回はダイレクトスカウトを中心に進めたいと考えています。予算は月10万ほどで3か月集中のプロジェクトとして依頼したいのですが、今までの実績でとくにダイレクトスカウトや〇〇職に関するものがあれば教えていただけますか。」
意外にも、上記NG例の発注方法が多いのが現状です。さすがに何の実績を出したらいいか分からないので、こちらからヒアリングを進めなくてはなりません。
最低限として、上記OK例くらいの情報量があれば、こちらもいろいろと予測してヒアリングを重ねやすくなります。
どちらにしてもヒアリングされるからいいでしょという問題ではなく、発注者として最低限のマナーは必要ということです。丸投げで適当な発注者と感じれば、ワーカー側もリスクをとりたくないので断る場合もあるでしょう。
注意点2: 指揮命令するなら雇用契約を結ぶ
業務委託社員という用語が登場してしまうほど、業務委託を雇用契約と勘違いしている企業は少なくありません。
たしかに便宜上、私も「業務委託を採用しよう」など表現することもありますが、実際にプロジェクトを進める際は「企業と労働者」ではなく「企業と個人事業主」として受託します。
労働法の細かいことを話し出すときりがありませんが、ざっくりでも押さえていただきたいのは、「ワーカーに指揮命令したいなら雇用契約を結ぼう」という点です。
指揮命令の例としては、何時から何時まで働いてねと労働時間に縛りをつけたり、この業務はこうやって進めてねと事細かく指示を出すなどが挙げられます。
自社で雇用契約したくない、スポットで人を入れたいのであれば派遣社員を採用しましょう。業務委託はスポット利用できて便利ですが、指示出しを細々してしまうと労基法の適用可能性が高まり、社会保険加入など手続発生となります。
労基法があるからという話だけでなく、そもそもフリーランスは「時間や働く場所」などを指示されるのが苦手な人も多いです。相手の立場を理解して、契約形態を選ぶよう心がけて下さい。
注意点3: 業者扱いしない
少し矛盾した話に聞こえるかもしれませんが、正社員と同じようにフリーランスや副業会社員にも愛情をもって接していただきたいです。
フリーランスや副業会社員は雇用ではないからといって、業者扱いでドライな接し方をしていいとは思いません。
「フリーランスを使う」「副業はいつでも切れるので」とい発言をしてしまう発注者の皆さんは、けっこう見られているものです。たしかに雇用契約よりも業務委託契約は打切りがしやすいですが、だからといって圧力をかけて「成果を出さなければ今月で解約」というスタンスを貫いていると、ワーカー側に嫌われます。
フリーランスの我々に対してパートナーと呼んでくださる企業もいることは事実です。また、フリーランスや副業会社員にたいして、丁寧な研修機会を提供してくれたり、社員との交流会に呼んでくださったりする企業もいます。
無理にベタベタと愛情表現したり、社内イベントに強制的に参加させようと言っているわけではありません。相手も1人の人間であることを考え、一般常識の範囲内で「業者扱いをしない」こと。
少しの気遣いで、フリーランスや副業会社員との関係性構築がしやすくなると思います。
注意点4: お金の切れ目は縁の切れ目と理解する
フリーランスや副業会社員に発注する際は、報酬まわりの決定を一方的に行わないよう注意してください。
業務委託のワーカーに発注して、希望する成果が得られなかったとしても報酬を100%払わなくていいわけではありません。
また、稼働時間が満たなかったからと言って、一方的に報酬を下げてしまったり、企業都合で検収が遅れて報酬振込日がずれてしまうこともNGです。これらは行き過ぎると、下請法などの法律に触れ、大きなトラブルになりかねません。
数年、業務委託で多数の企業とお取引させていただきましたが、個人的にこんなことで困った経験があります。
こちらが聞くまで報酬支払日を教えてくれない
勝手に稼働時間や報酬額を減らされた
契約期間を一方的に変更された(契約書に期間の記載あり)
そもそも契約書を作成してくれず報酬支払が口約束
源泉徴収の有無を教えてくれない
検収日を数か月ずらされ売掛金回収に苦労した
共同提案が失注となり稼働した分の報酬支払は0円 など
振り返ってみると、取引先の印象が悪い企業はお金や契約にルーズなわりには成果を強く求めてくるケースが多かったと思います。もちろん期待されていた成果を出せないワーカーにも責任はありますが、かといって勝手に金銭面を不利な条件にされると、こちらは泣き寝入りするしかありません。
今でこそ、怪しい取引先には近づかないよう多少の見極め力は身に付きましたが、副業が初めての会社員や、フリーランスなりたての方が心配でなりません。
今一度、発注者側のマナーやリテラシーを高め、お互いに守るべきルールは守り、気持ちよくパートナー契約していきたいものです。
下準備をしてフリーランス・副業会社員に発注しよう
多様な働き方が認められてきた今、フリーランスや会社員の副業は1つのキャリアパスとして確立されつつあります。副業・兼業を取り入れるメリットは多いですが、まだまだ法整備や周辺知識の習得が進まずトラブルが多発しているのが現状です。
フリーランスや副業会社員に発注を考えている企業の皆さまは、最低限の情報収集と下準備をしてから、発注するようにしましょう。もし進め方が分からなければご相談に乗るので、お気軽にお問合せください。
mail to :
jinji.writer@gmail.com