YutaとCanadaの1ヶ月
19の時に、1ヶ月カナダに短期留学をした。クラスメイトのほとんどは日本人で、女子大通いの私には共学の女の子がなんかギラギラしてて怖くて、全然クラスメイトと仲良くなれなかった。
そんな私が教室にずっと通い続けられたのは、同じ大学から来ていた友達と、あっけらかんとした男の子のクラスメイト、特に私を気にかけてくれたYutaの存在が大きかったのだと思う。
Yutaは日本海側出身の東京ボーイで、Nikonの一眼レフを持っていた。初対面から仲良くなれたのは、きっと私たちに「一眼レフ持参の写真好き」という目に見えた共通点があったから。
クラスが始まってしばらく経って、「MINAって1年生なの!?」って聞かれたことがあった。私はあんまり年齢を気にしていなかったけれど、彼にとっては衝撃だったようだった。そして、同い年だと思っていた、と告げられた。Yutaはいくつなの、と聞いたけどなぜだかはぐらかされてしまった。
バレンタインはホストマザーに「クラスメイトに配りなね」って言われて、一緒にクッキーを作ったけれど、配るタイミングも特別仲の良いクラスメイトもなくて、結局同じ大学から来てた友達とその場に居合わせたYutaにだけ渡した。
クラスで写真撮影をした時に最後列の端にいた私に、「その位置だと写真に写らないよ」って肩を抱きよせてくれたことを今でもよく覚えている。
最後の卒業パーティの後、夜遅くまで「パッキング間に合わない」って他愛もないLINEをしたことも。
交換したInstagramの更新も止まってしまった彼の消息を知る由は結局LINEなんだろうけれど、今更話題もないし、ただ元気でいればいいなぁなんてぼんやりと思い出したりする。
彼には確かに恋心とも呼べない淡い気持ちを抱いていたけれど、それを育てる勇気も根性も時間も私にはなくて。
彼がなぜ私に自分の年齢を教えてくれなかったのか、私は今でも分からない。そして私は彼の年齢を知らないまま生きていく。
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