棘の道を誇らしく ー俺たちとみんなの新しい船出に寄せて
2023年12月、A.B.C-Zは私たちファンの言葉にならない感情を受け止め涙を拭いながらも、「旅はまだ続いていく」と伝え続けてくれました。
新星A.B.C-Z
新“星”A.B.C-Zは「We are Za STARS」を掲げ、100%アイドルとしてこれからも私たちの星であることを宣言。手始めにあの名盤BEST OF A.B.C-Zをサブスク解禁することが発表されました。
これまでの全シングル曲はもちろん、ファン投票で選ばれたシングル以外の名曲までもが手軽に聴けることになり、DVDのおまけでしか音源が手に入らなかった頃から考えれば隔世の感。DVDデビュー、CDシングルデビューに続く第3のデビューとして大いに盛り上がり、特に旧事務所ファンからの再評価も顕著に見られました。
さらに新体制初のシングルとなる「君じゃなきゃだめなんだ」も発売。80年代から90年代頃をイメージしたと思われるレトロ感を全面に押し出した歌謡曲路線は、舞台経験豊富で「演じるように歌う」表現が得意なA.B.C-Zだからこそ現代の音楽シーンで異彩を放っていました。
そして「君じゃなきゃだめなんだ」の発売決定に合わせグループとしてのYouTubeチャンネルも開設。これまではポニーキャニオンのチャンネルでMV等を発信するだけでしたが、本人たちの生配信や最近では五関くんが爪を切るなどメンバーのちょっとした企画動画もアップされるようになり、メンバーをはじめチームA.B.C-Zのサービス精神には頭が下がるばかりです。
そんなYouTubeチャンネルで「君じゃなきゃだめなんだ」の発売に合わせて行われた4人の生配信。シングルの話が一通り終わると何やら発表があると言います。
ニューアルバム「F.O.R 変わりゆく時代の中で、輝く君と踊りたい。」発売&コンサートツアー決定🎉
タイムラインは一気に歓喜の渦に呑み込まれます。戸塚くんの言うようにアルバムを引っ提げたツアーとしてはGoing with Zepher以来実に5年ぶり。新星A.B.C-Zがようやくファンの前で自分たちだけのステージを披露することとなりました。
「ご報告」
ファンクラブからご報告と題したメールが送られてきたのはそれからおよそ20日後のこと。我らが宇宙一の末っ子センターこと橋本良亮くんが体調不良のため一定期間活動を休止すると発表されました。
橋本くんがレギュラー出演している「モーニングこんぱす」では復帰までの間五関くんが代理MCを務め、既に上演が発表されていた升毅さんとの二人芝居「SLEUTH」は昨年の夜曲と同様戸塚くんが代役を務めることとなりました(塚田くんはリカの1stライブツアープロデュースの真っ最中でした)。
塚田くんの休養や過去に橋本くん不在でコンサートが始まったこと、様々な想いが過りながらもただひたすらに回復への祈りが視界を埋め尽くし、涙が止まることはありませんでした。
F.O.R 変わりゆく時代の中で、輝く君と踊りたい。
そして夏が訪れ、五関くんが持ち前の愛され力でもんぱすファミリーの仲間入りを果たし、戸塚くんが信じられない台詞量の二人芝居を立派にやり遂げた頃、ツアーの開始までは1ヶ月を切っていました。
またセンター不在でコンサートが始まってしまうのではないか、新体制の御披露目という今回の意義を考えれば中止も有り得るのではないか。体調を最優先にしてほしいと思いながらも不安が拭えずにいた8月の半ば。
私たちが愛してやまない宇宙一のセンターは、アルバムの発売を前に再びグループに戻ってきてくれました。
代わりのいないアイドルという仕事の性質上、復帰を待ってくれる人がいることは励ましにもプレッシャーにもなっていた筈です。それでも橋本くんは私たちの前に帰ることを選んでくれた。こんなに嬉しいことはありません。
そんな橋本くん復帰の1週間後、「F.O.R 変わりゆく時代の中で、輝く君と踊りたい。」がついに発売となります。
久しぶりのオリジナルアルバムはダブルリード曲「君の隣で目覚めたい」「Jigsaw」といったレトロ路線を引き継ぎながらもバラエティに富んでいて、ソロ曲やボーナストラック含め大ボリュームなのに聴きやすい、大人アイドルポップスのお手本のような仕上がり。優しく力強くボーカルを引っ張る橋本くんを中心に新しい声を手に入れたA.B.C-Zの紡ぐ歌は、暖かさの中に少しだけ儚さが滲むような、柔らかな美しさを感じさせました。
F.O.Rツアー
晴れて4人のライブが叶うことになり、初日に向けてアルバムを聴き込み、結成日を迎えそろそろ遠征の準備を…と思っていた8月末、またも壁が立ちはだかりました。
後にJR東海から「判断が難しかった」とコメントが出るほどの進路が読めない大型台風が西日本を直撃し、様々なイベント主催者が厳しい状況の中で判断を迫られました。ぽつぽつとイベント中止の一報が流れる中、F.O.Rツアーの初日と2日目は延期の判断が下されました。
大阪のチケットしか持っていなかった私は11月とはいえ休日に振替公演を決めてくれたことに安堵しましたが、楽しみにしていた4人の初日に立ち会えなくなってしまったことに絶望しなかったといえば嘘になります。
しかしサービス精神の鬼ことA.B.C-Zのみなさん、これだけでは終わりませんでした。
Twitterでの塚田くんの思わせぶりな予告から、翌日に掛けて合計3本の動画がグループのYouTubeチャンネルに上がったのです。
①初めて4人で動画撮ってみた
②コンビニへ行くけど何が欲しいの君はゲーム(前編)
③コンビニへ行くけど何が欲しいの君はゲーム(後編)
コンサートが延期になったことから緊急で集合して撮影した①の動画ではアルバム曲「WAI WAI STAY」の歌詞に引っ掛けてコンビニへ行くけど何が欲しいの君はゲームが爆誕。
2日目の昼公演の開始時刻に合わせて投稿された②では塚田くん橋本くんの答え合わせが行われ、奇跡の3連チキンや驚愕のコロコロコミックといった事件が発生します。
さらに③では戸塚くん五関くんの答え合わせが行われ、グループ名がサラダチキンになったりいつのまにか俺が一番五関くんのこと分かってる選手権にゲームが変わるなどしました。
次回トイザらス編も楽しみですね。
そんなこんなで神奈川県民ホールから幕を開けたF.O.Rツアー。
ネタバレ避けの為ここからの流れはほとんど把握していないのですが、名古屋公演にて塚田くんが腰を痛め、大事を取ってダンスパフォーマンスを控える事態が起きてしまいました。レポを見て心配することしかできませんでしたが、誰より悔しい思いをしている塚田くんがそれでもコンサートを一生懸命盛り上げていることが漏れ聞こえてきて、その健気さが報われますようにと祈らずにはいられませんでした。
そして本来オーラスとなる筈だった渋谷公演では、新たに5曲を4人バージョンで新録したデジタルEP「from Z to ABC-Ⅰ-」のリリース、さらに新曲「ヒリヒリさせて」の発売が発表。振付は6年ぶりにご一緒するTAKAHIROさん、製作陣は森浩美さん×馬飼野康二さん×星野康彦さんというあまりにも"ガチ"な布陣です。「攻めのダンスナンバー」という煽り文句も含め否が応にも期待が高まります。
U-NEXTでのライブ映像の配信決定やアルバム購入者を対象としたファンミ(webの部もありがとう)を経てようやく辿り着いた11月。ついに振替となった大阪公演が開催されます。
大阪振替公演
A.B.C-Z
concert tour2024
F.O.R 大阪振替公演
万雷のA.B.C-Zコールがオリックス劇場を埋め尽くすと客席が暗転。下校のタイミングで雨に降られ町の電器屋さんで雨宿りする少女がディスプレイされたテレビで偶然流れていたA.B.C-Zの歌に目を奪われるというオープニング映像が流れます。
君じゃなきゃだめなんだ〜花言葉
シームレスにイントロが流れ真正面の大きな扉が開くとそこにはこちらを真っ直ぐに見据えた4人の姿が。彼らが最初に伝えてくれたメッセージは「君じゃなきゃだめなんだ」でした。
ただハッピーな訳じゃない、酸いも甘いも噛み分ける大人になったからこそ切実に迫るラブソング。橋本くんが「vanillaを超える」と豪語した、今のA.B.C-Zを象徴する一曲です。
派手さや勢いだけじゃない、痛みも越えて大人になったA.B.C-Zが実直に手渡してくれる想いの強さが沁み入る登場でした。
続くRed Beeは戸塚くん激推しの遊び心溢れる上質なアイドルポップ。橋本くんの軽やかなのに艶めいた歌声に会場が惹き込まれていきます。
アウトロをビシッとキメるとみんな大好きあのイントロからもう何年振りか分からないマッシュアップなしファンサなしのFantastic Ride!!ありがとう待ってたよ!!!
ここでようやくメンバーから一言挨拶があるのですが、ここまでの公演では沈黙を守っていたらしい戸塚くんがこの大阪公演では「みんなで幸せになろう」と言ってくれました。なろうね、みんなで。
そんな戸塚くんのメッセージが伏線だったかのように、次の花言葉のイントロにも会場が湧き立ちます。セトリに出し惜しみが無さすぎる。
I-MI-JI〜Jigsaw
ひとりひとりデザインの違うヒョウ柄セットアップ(五関くんのは単ランて呼んでる)の上着を脱ぎ平成ギャルも真っ青な白いフサフサの尻尾を付けると、一部で謎のムーブメントを巻き起こしたI-MI-JIへ。
最初に聴いた時からあまりの"遺伝子"の濃さに「この曲ジャニワで見たことある…!」という存在しない記憶が蘇るなどしていましたが、ステージで見るとやっぱり自然に太い声が出る合いの手もどこか波飛沫を感じる振付も橋本くんの「遊ぼうよ」に\\ギャーッ//ってなるのも楽し過ぎて、やっぱり前世で見てるんだと思います。巨大な扇子とか、箱から無限にヒラヒラが出てくるやつとか翁の面とか絶対知ってるもん。
拝啓、今日を共に生きる貴方へは少年アニメの主題歌のような、A.B.C-Zにぴったりの力強いアップテンポなナンバー。個人的にはライブでもっと好きになった一曲でした。
アルバム発売時に正式に制定が発表されたグループロロロゴがあしらわれたマイクスタンドが怪しく光り、明転すると4人の首にはRAG FAIR土屋礼央さんばりの白いフサフサが掛かっています。
マイクスタンドとフサフサとモフモフが嫌いなおたくは居ないのでそれだけで百点満点なのですが、事件は落ちサビで発生します。
A.B.C-Zの誇る「技」「体」シンメ、そのままミラコスタ、騙し討ち北海道こと塚田くんと五関くんが顔が触れそうな距離で肩を寄せ合って二人のパートを歌っているのです。
頭が真っ白になり、即「走馬灯で見たい映像」フォルダの仲間入りを果たす光景でした。4人のフォーメーションでは今までのように塚五が端と端に居て視界に収まりきらないことが減った気がして、今回の嬉しい発見でもあります。
続いて暗転が明け五関くんから順にモニターにアップで映し出されたかと思うと、その目にはサングラスが。メイキング映像で一曲目にはしたくないと言っていたJigsawが思ったより早いタイミングで披露されました。
今回後ろのLEDパネルがとても綺麗なのが印象的だったのですが、特にこの曲ではMVと同じ不思議な世界観の映像演出が際立ち、先程までの空気と一変したのが面白く、構成的にも第一部のクライマックスになっていました。
Stay back〜月に行くね、光の連続
五関くんの販促小ネタコーナー(大阪では世界一雑な心理テスト)が終わると回転板式の曲名表示が塚田くんのソロナンバーを示します。
毎度色々な曲で楽しませてくれる塚田くんのソロコーナーですが、今回はストレートにカッコ良さを追求したダンサブルなロックテイスト。腰の負傷により想定していたすべてのパフォーマンスはできなかったようですが、モノトーンな映像と目の前のフィジカルが融合した演出手腕は流石の塚田Pです(リカコンしぬほど楽しかったね)。
そして何より驚きだったのが終盤の映像に表示された「振付:屋良朝幸」の文字。A.B.C-Zとも縁深く以前にグループの振付もしてもらったことのある先輩ですが、屋良くんは今年既に事務所から独立を果たしていました。それでも塚田くんは今回のソロをどうしても屋良くんの振付でやりたいとお願いしたのだそうです。
さらに渋谷公演では屋良くん御本人が舞台の稽古を休んでまで腰を痛めた塚田くんの為に駆け付け、一緒に踊ってくれるという嬉しいサプライズも。今後も御縁が続いてほしいし、屋良くんの振り付ける新しいA.B.C-Zが見られる日が楽しみで仕方ありません。
続く戸塚くんのソロ曲月に行くね、光の連続は、大きな大きな喪失に纏わる慟哭をこれまでより直球に表現した、浮遊感の中に確かに流れる赤い血が見える不思議な一曲。
去年の冬にどこかで見たような白い階段がステージの中央に設置されると、緑色のパジャマを着た戸塚くんが光の中から現れ、時に激しく、時に無邪気な笑顔で咆哮します。
戸塚くんの負った傷。それは喪失の寂しさかもしれないし、パンフレットで明かされた修正前の歌詞のように直接伝えられなかった後悔なのかもしれません。
それでも私たちの涙を拭い「大丈夫」と伝え続けてくれる彼の流す血が、ほんの少しでも減っていきますように。傷痕が消えることは無いかもしれないけど、それすら誇りにしていけますように。
じゃない方讃歌〜火花アディクション
カジュアルな衣装に着替えた五関くんが下手から登場して歌い出すとモニターにはアイドルを夢見てオーディションを受けるものの上手くいかない女の子のアニメーションが流れます。落ち込む女の子に駆け寄る五関くんをはじめ、上手から登場する橋本くん、2番で登場する塚田くん戸塚くんも優しい眼差しで女の子に寄り添い、ラストシーンでは赤青黄色ピンク、そして白い星が五つ揃って宇宙に輝きました。大切な「君」の為だけに歌を届けるA.B.C-Zの優しさが光る一曲。
そのまま突入したのはこの夏初出演を果たしたお台場冒険王でも披露したWAI WAI STAY。どちらかというとクールな歌い出しから戸塚くんのラップ、1!2!3!のコールを経てみんなで声を揃えて盛り上がるサビまでリズミカルに展開していきます。塚田くん先導の声出しがすごく気持ち良くて新鮮でした。
会場にも笑顔が満ちると聴こえてきたのはまさかの火花アディクション。緩急の効いた構成に思わず悲鳴があがります。ショートバージョンではありましたが曲の持つパワーが凄まじかった。勢いではだけた上着を直しもせず歌う五関くんがめちゃくちゃかっこよかったです(小並感)。
Crazy Accel〜SPACE TRAVELERS
前半戦クライマックスは往年の名曲メドレー。デビュー前の楽曲ながらベストアルバムの人気投票でもトップ10入りしたCrazy Accelが流れると会場のボルテージが更に一段階上がります。スタシカ、イナビと切り替わっても勝手に身体が動いてしまう振りコピ大好きなえびコンの一体感は時を重ねても変わることはありません。
終電を超えての客降りで季節さえも飛び越え(これ夏からやってたんだよね?)チートタイムで塚田コーチに師事したあとはロケットに乗り込みスペトラでいよいよ宇宙へ飛び立ちます。
宇宙旅行〜MC
スペトラ第2章との呼び声も高い宇宙旅行。曲調は全くトンチキじゃないのにA.B.C-Zは真面目な顔して「僕のエンジンは君だけ」なんて言いながらやっぱり宇宙にだって連れて行ってくれるのです。
そしてこの曲には、コンサートが始まる前にTikTokやYouTubeショートで出された宿題がありました。発売前のペンライトを極めて雑なモザイクで隠しながらも五関先生が見せてくれたお手本は、振付と色変えが一体となった新しいペンライト芸。もはや「せーの!」の掛け声ではなく事前に覚えて来いというスパルタな教育方針も五関くんにお願いされればきちんとやってきちゃうえび担のチョロさ勤勉さが微笑ましいひとときでした。
さて、ここまでの公演では宇宙旅行が終わるとMCだったそうなのですが、4人が一度袖にハケていくとモニターに例の回転板が現れ、表示されたタイトルは「????」。客席が悲鳴にも似たどよめきに包まれます。
次の瞬間モニターに映ったのは揃いの紫スーツを着た4人の撮影風景。サイケな色遣いの様々なフォントであのタイトルが表示され最後に「Are you ready?」のメッセージが残されるともはやオリ劇は期待に爆発しそうです。
全体が暗転して暗闇が広がると、一階前列から\ギャッッ/という声が上がり、何かと思えば次の瞬間明転したステージには親の顔より何度も見てきたアクロバットスタンバイ体制のA.B.C-Z。
ジャケット写真で見たスーツだ!と気付く間もなく怒涛のアクロとダンスが進行し客席を阿鼻叫喚の渦に飲み込んだのは新曲「ヒリヒリさせて」でした。
光GENJIのような圧倒的に煌めく力強さと少年隊のようにハイクオリティなストイックさが融合したダンスナンバーはまさに攻めの一曲。一般的にはキラキラしていると思われがちな旧事務所の本質が「憂い」と「力強さ」の危ういバランスにあることを思い出させてくれます。
帝国劇場の煌めく光の中に消えていったあの「青春」が二度と板の上に還ることはなくとも、彼らは夢と夢を繋ぐことを諦めてはいませんでした。それはただのリバイバルではなく、今新たに紡ぎ出す「伝説」に他なりません。
しかし本当に難しいこの振付、2日目の昼には一度やり直しになってしまったのですが、「失敗」をすかさず「経験を積んだ」と言い換えたり、成功した後にすらステージ上で即改善に向けた話し合いを始めたり(橋本くんが「良いグループだなあ」と呟くまでがセット)、ステージではいつも完璧なA.B.C-Zが新たな挑戦に目を輝かせる瞬間を見られたことはライブの醍醐味でした。TAKAHIROさんが新星A.B.C-Zの道を示してくれたという振付の全体像をYouTubeで何度も見られるのが今から楽しみで仕方ありません。
そして突入したMCではこの日を2ヶ月待ち侘びた私たちにお待たせしましたと微笑んでくれたかと思えば「大谷選手にも欠点はあるのか?」といった謎議題まで様々な話をしてくれましたが、五関くんが積極的に話を振って広げようとしているのが正直意外でした。こうやってひとつひとつA.B.C-Zに新しい形ができていくのでしょう。
リマレンス〜浮遊
楽しいMCを終え後半一発目はまさかの五関くんソロ。それまで青いペンラを振っていた各位の動きが止まり静寂が会場を支配します。
その人の動きに合わせて寒色の蝶が羽をひらめかせたかと思えば耽美な蕾が花開き、流星さえも逆に流れる様子はさながら宇宙の法則そのもの。
失った人を想う精神世界が全面のLEDモニターで表現されどこまでも広がる中で、未だ肉体を持つ主人公は彼岸と此岸を繫ぎ止めるように祈りを込めて舞い踊ります。
時にキーが高すぎて涙を浮かべながらも(本人談)丁寧に届けられる歌に心を奪われたのはもちろん、果てなく空間を広げる映像演出に惹き込まれ、ダンスを超えて表現を追求する振付に酔い痴れ(両膝つくとこ大好きでした)、またもペンラを振る暇もなく終わってしまった五関くんのソロですが、今回も本当に大好きでしたありがとう。なんで越中さんと20代の頃からの飲み友達なのかだけ後でこっそり教えてください。
五関くんが去り余韻が満ちる中で上手花道に登場したのは塚田くん。いろんなグッズを身に付けて楽しもうのミニコーナー(まろやかな表現)です。詳細は省きますがそれはもういろんなグッズのいろんな身に付け方を教えてくれる塚田くんはどこまでもエンターテイナーでした。
ざわめきの残る客席をものともせず(後で若干小言は言ってた笑)、登場したのは真っ白な上下の橋本くん。シャツのボタンは留められておらず鍛え抜かれた上半身を惜しげもなく披露しています。
意味深にベッドが運び込まれたステージ上段には大きな白い布が掛けられ、エアーが送り込まれて一気に浮遊感のある空間へと変貌を遂げます。
内心を絞り出すように歌いながらゆっくりと階段を登っていく橋本くん。最上段のベッドに上がって踊ったあと、なんとその場に寝転んで歌い始めます。前から、そして上からのアングルでカメラがその表情を捉えると溜息のような悲鳴が漏れていました。
全体を覆っていた白い布が天井付近に上がって天使の翼のように広がっているのも含めどこかイノセントでありながらどうしようもなくコケティッシュな世界観がハイセンスな橋本くんのソロにぴったりで最高の演出でした。
渚のBack in your heart〜世界一
塚田くん五関くんが2階と3階の客席に降り立ち始まったのは渚のBack in your heart。たくさんのライブで歌われてきた思い出の一曲です。オリ劇の低い天井に苦戦する五関くんもモニター映りを気にしてしゃがんでくれるおたくの優しさも何もかもかわいかった。
さらに戸塚くん橋本くんが畳み掛けるのは5周年のコンサートを象徴する世界一でした。橋本くんが大好きと言っていたこの曲は戸塚くんがエモ大爆発の演出を手掛けた55コンを想起させ、渚の〜と併せて過去の大事な思い出も決して手放さないと言ってくれているようでした。
One way blue〜FORTUNE
深い緑に天の川のように散りばめられた銀色のラインが特徴的な衣装で再びステージに揃った4人。届けてくれたのは「君じゃなきゃだめなんだ」のカップリングOne way blueです。運命すら感じる恋に夢中になる大人のラブソングはとてもグルーヴィーで、上質なパフォーマンスに心地よい痺れすら感じる時間でした。
そのまま続いたのは大名曲Enamel Slow。待ち望んでいたライブでのパフォーマンスがようやくの実現です。サイケでメロウなモニター映像とイントロアウトロの少し不思議な動きの融合がとても印象的でした。
静かな熱をもう一度じっくり燃え上がらせるように橋本くんの歌い出しから始まったのはDance Monster。ビートの効いたサビのユニゾンが会場をトランスに誘い、クライマックスに向けますますボルテージは高まっていきます。個人的には五関くんの伸びやかな歌声も大好きな一曲。
そして怒涛のダンスセクションを締めくくるのはやはりFORTUNE。イントロからブチ上がったテンションはサビ前に戸塚くんが放った「踊れ!」で限界を超えていきます。会場が揺れる感覚に身を委ね何もかも忘れる刹那。A.B.C-Zのステージが与えてくれるカタルシスはここに絶頂を迎えたのでした。
Twilight Blue〜君の隣で目覚めたい
4人が光の向こうへ去ってもアウトロは止まず、赤、青、黄色、ピンクの細胞のような光が拍動する映像が流れます。激しい鼓動は止まることなく続き、細胞が日々分裂することで生きながら生まれ変わっていくA.B.C-Zを象徴するシーン。輝いた過去を大切に抱えながらも新しい日々を進んでいく、彼らの決意が滲んでいました。
そしてオープニングと同様に真正面の大きな扉が開くと、巨大な船の船首に乗り込む4人は格式高い真っ白な型違いのスーツを纏いこちらを見据えています。船がゆっくりと前進し、流れてくるのはTwilight Blue。未知の航海へ漕ぎ出す彼らの顔には、焦燥でも悲観でもなく穏やかな自信と覚悟だけが浮かんでいました。
「この船、4人乗りじゃないですから。船首しか作っていないけど、想像を広げれば何人でも乗り込めるんです」
大阪初日の挨拶で戸塚くんはそう教えてくれました。彼らは新たな航海への決意を示すだけでなく、私たちファンまでも一緒に船出させてくれたのです。
切り拓き進んできた道は確かに後ろにあって、それを忘れる必要も無かったことににする必要も無い。振り返ったっていい。泣いたって構わない。だけど歩みは止めずにいるから、広大な海だって宇宙だって恐れず船首に立ち続けるから、これからもそばに居て欲しい。
世界で一番優しいアイドルの、穏やかで誠実な想い。この1年間に流れたたくさんの涙に彼らが出してくれた答えは、海よりも深く宇宙より広大な愛でした。
戸塚くん五関くん塚田くん橋本くんの順で本編ラストの挨拶が終わると、最後に歌われたのは君の隣で目覚めたい。奇跡の出逢いから始まった最高の恋はやがて闇を照らす愛となりました。
大歓声の中4人が去っていくと、オープニング映像の少女がA.B.C-Zに恋をして夕焼けに染まる海沿いの道を駆けていく映像をバックに日本語表記のエンドロールが横方向に流れます(【振付】五関晃一かっこよすぎた)。ドラマのような映画のような、美しい終幕でした。
EC.怪奇な美少女〜頑張れ、友よ!
拍手はやがてA.B.C-Zコールに切り替わり、今か今かと彼らの再登場を待ちます。
客席の期待に応えるように明転すると、2階3階に橋本くん戸塚くん、1階に塚田くん五関くんが登場しました。流れ出した印象的なイントロは在りし日の土曜9時ドラマの主題歌にしか聴こえないと話題の怪奇な美少女。ちゃんとパフォーマンスしているのを見たかった気持ちもありますがセトリ落ちするよりは全然良かったです(いつかやってね)。
今回は上階の住人だったので橋本くん戸塚くんがきてくれたのですが、導線的にどうしても近くに行けないブロックも含めて丁寧に丁寧にひとりひとりと目を合わせて通路脇だけでなくできるだけ多くのファンと触れ合おうとしてくれたのに感動しました。ホールコンだからと言って客降りは当たり前ではなく、スタッフさんの尽力やこれまでの態度で信頼を勝ち得てきた全てのファンのお陰なので、今後もこんな関係を続けていきたいですね。
そのままの勢いで最後の最後に彼らが選んだのは頑張れ、友よ!でした。最近では名刺代わりに披露されることも多い人気曲で、頑張っているからこそ上手くいかないこともある全ての人の背中を押す応援歌です。
戸塚くんが間奏に突如感謝カンゲキ雨嵐のラップを挟み込むなどもうなんでもありの自由な雰囲気で笑顔が溢れるオリックス劇場。
ついに別れの時が訪れ、4人がステージ中央前方にギュッと集まると恒例の
俺たちとみんなで〜???
\\A.B.C-Z!!!!//
で銀テープが発射されコンサートは大団円。もう一度全員に手を振って4人がハケていきます。
何度倒れても負けない貴方へ
私は2日目の昼で帰らなくてはいけなかったのですがこの日の夜、結果的に全体のオーラスとなった公演では、入場時にスタッフさん達からのお願いが書かれた紙が配られ、ダブルアンコールで客席からのサプライズが行われました。
様々な困難を乗り越え新体制でのツアーを完走したA.B.C-Zに贈られたのはサポーターズ!。夢の為に何度でも立ち上がる貴方のそばには必ず私が居ることを忘れないでというメッセージは、彼らの示してくれた愛への完璧なアンサーでした。
私も含め今回のツアーは「自分の目で確かめに行く」というモチベーションの人が多かったように思います。新譜やYouTubeで4人の活動は始まっていたけれど、本当にこれからも応援していけるのか、情だけじゃなく4人の彼らを愛していけるのか、彼らが彼らの手で届けるコンサートを見るまで分からないというのが偽らざる本心でした。
そしてきっと、彼らも不安だったことでしょう。戸塚くんが挨拶で言っていたように彼らが私たちファンの生の声を聞けるのはコンサートだけです。それに近い機会だったラジオ番組も今はありません。会社の変化、自分たちの変化、12月に流れたたくさんの涙。自分はもちろん周りの大勢の人の人生も懸ったこの夢を、手放した方が楽なのではと思った日だってあったのかもしれません。
それでも4人の選んだ道は、押し付けがましく腕を引っ張ることでもなく、背中に追い縋ることでもなく、ただまっすぐに誠実に、覚悟と自信を滲ませたパフォーマンスを届けることでした。誇り高く、優しく、だからこそ誰よりも強い、私の愛するA.B.C-Zがそこに居ました。
だから私たちはもう一度この船で何処へだって行ける。月だって土星だって、まだ見ぬ景色を一緒に目撃しながらこれからも今日という日を共に生きていくのです。
御伽噺のようにこれで全てが上手くいくわけではないでしょう。足跡のない道を進めば茨に行く手を阻まれ、高い波が押し寄せ立っていることもできない日があるのかもしれません。それでも私たちの愛するA.B.C-Zは、きっとその日も気高く笑っている。そんな未来を信じたいと思えたから、私はこの船に乗り込もうと思います。
答え合わせなど朽ち果てるその瞬間でいいのですから。