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羽をもがれた妖精は復讐を謡う:小噺①

これは、ナギが任務で異世界に行く前の話。

ーールカ…
とナギが俺の名前を呼ぶ。ギュッと俺の首に腕を回した。
「ナギ…」
誘(いざな)われるように、俺はナギに顔を近づけた。

 ナギに火、水、風そして土の4ヶ国と対アルカナ同盟を締結してくるよう辞令が出た。
まぁ、ナギが出した提案なのだから当然と言えば当然なのだが。
しかし、さすがのナギでも長期間の滞在になる筈だ。と言うことで、ナギはここ数日、業務の引継ぎやら手回しやらを行なっている。
俺は軍の人間ではないが、殆ど顔パス状態で城とナギの執務室に出入りしていた。
今日は手土産に、ジュレを持ってきた。
ここ数日、ずっと真夏日が続いており、クリーム系のケーキより、ゼリーやジュレの方が喜ばれると思ったからだ。
「この間、無理させたからな…」
具体的に何をさせたかは言わないが。
賄賂ではないが、またと言う思いはある。
なかなか品の無い事を考えつつ、俺は執務室に入った。

入室すると、ナギとレイがいた。ナギはどこかと電話しており、レイは顔を真っ赤にして怒っている。
「何かあったのか?」
「酷い中傷よ!!」
感情的になっているレイの代わりに、ナギがタブレットを渡してきた。画面はイントラネットに載せられた広報である。
【レイチェル中尉、朝帰りか!?】と言う見出しと共に、某ホテルの入り口付近で歩いているレイの写真が載っていた。
見方によっては、ホテルから出てきたかのように見える。問題はそこでは無い。
「ふざけるなよーー!」
一緒に写っていたのは、なんと俺だった。本文にも、【ミネルバの梟、ルーカスと】と書いてある。
「一緒に写ってるアサガオから、朝だと分かるってさ」
電話を切ったナギは、ニヤニヤしながら記事を読む。俺はつい、ナギを睨んだ。
「これは任務で出掛けた帰りに通っただけだ!」
「そうよ!!それにここを通ったのは朝じゃないわ!」
今こそ、ナギと同じ能力が欲しいと思った事はない。
と言うか、ナギは俺の事を信じないのか!?と逆ギレに近い感情を抱いた。その様子に、ナギは「信じてはいるよ?」とおかしそうに笑う。
「ただ、主張だけしかしないから馬鹿だなぁって」
「どう言う意味よ?」
レイが首を傾げた。俺はナギの言葉に反応し、写真をよく見る。そして俺は疑問を口にした。
「もしかしてこれ、ヨルガオか…?」
軍との共同任務で、此処を通過したのは夕方だった。それを証明出来れば、この写真の信憑性は下がる。
しかし
「さっき問い合わせたら、どっちも植えてあるらしいぞ。客入りが多い時間帯に咲くよう配慮しての事みたいだな」
客がホテルに訪れる時間帯(夕方〜)と、帰宅する(朝〜)に入口に咲いているよう考えて植えられたらしい。
つまりこの写真に写っているのが、アサガオなのかヨルガオなのかは判断出来ない。
「けど、着眼点はいい線いってる」
ナギは片目を閉じて得意げに言う。悩む俺達に、ナギはヒントとして写真の地面部分を示した。
ここ数日、雨は降っていないのに地面が濡れている。これって打ち水じゃないか?」

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