【殺人企業~実録・裏社会の人間との闘いの日々~】第一章:伝説 /引退
2013年ー。
私はお水人生で最高の最後を迎えていた。
全グループで断トツの歴代記録を達成。
最終日はお店に入れなかった指名客がシャンパン代やドリンク代を置いて行ってくれた。
それ以外にも他の女の子のお客様から花束やプレゼントを貰って指名客だけでなく女の子達からも惜しまれながらの引退。
本当に充実した最後だった。
お店で妹の様に可愛がっていた美咲ちゃんは一番淋しがってくれていたと思う。
最後に「大切な人と使ってください」と美咲ちゃんから貰ったティファニーのペアカップは勿体無くて数年経った今でも使えないよ。
あの頃は女の子からも慕われて…
記録も達成し…
今思うと、人生で一番輝いていた瞬間だったと思う。
だけど、それも全て幻想だったのかな………
最初はやる気のなかった仕事。
父親のガンをキッカケにこの世界で生きていくと腹を括った。
毎日、綺麗なドレスを着てヘアメイクをして、
ランキングの上位にいる事は毎日、頑張った証。
風邪の悪化で声が出なくなっても出勤した。
声が出ない時は指名客と筆談で会話した。
何がそんなに私を奮い立たせていたのか……
今思うとプライドだったのかもしれない。
大学を卒業して…
大学のゼミの同期は大手や、ちゃんとした企業に就職していた。
私は就職活動で100社落ちて、所謂《いわゆる》、ゼミで言うと落ちこぼれだった。
だからかな……
世の中を見返したかったのかも………
こんな私でも誰よりも大金を稼いでいるって。