「『人』を大切にする経営を目指して」池田真裕子さん(1998年卒)
第18回目は、1998年に札幌大学経営学部経営学科(当時)を卒業され、株式会社特殊衣料の代表取締役社長である池田真裕子さんに、大学時代の思い出やお仕事についてインタビューしました。
学生時代のこと
Q:どんな学生でしたか?とくに心に残っていることなどがあれば教えてください。
札幌大学のキャンパスは緑が多く、大好きな空間です。校風も自由な雰囲気があり、元気に楽しく過ごしていたことを思い出します。
「リバティ」というサークルに入り、夏はキャンプ、冬はスキーなどのアウトドア活動を楽しみました。おかげで交友関係も広がり、たくさんの友人ができました。先週も東京に行く用事があったのですが、合間に大学時代の友人と再会してきました。卒業してから大分経ちますが、学生の頃のことは鮮明に覚えています。学生時代の友人とは、久々に会ってもブランクを感じずに昔の間柄に戻れるというのが良いですね。
友人の中には、ロッククライミングをされる方やカフェを経営される方などもいて、今でも刺激をもらっています。
経営学部では、理論だけでなく実用的な講義もあり興味を持って聞いていました。とくに「中小企業論」という講義が印象的で、大手自動車メーカーの生産方式を具体例として取り上げ、企業の経営理念などを学びました。今、経営者という立場になって改めて振り返ると、当時の時代背景と合わせても大変興味深く、面白い授業だったと感じます。
キャリアについて
Q:大学を卒業されてから現在までのご経歴や、現在のお仕事の具体的な内容を教えてください。
大学を卒業し、証券会社の営業職として就職した後、転居や転職などを経て、2003年に株式会社特殊衣料に入社、2018年に代表取締役社長に就任いたしました。
株式会社特殊衣料について
弊社の創業は、1979年に私の大叔父にあたる田中弘がリネンサプライ事業を取り扱ったのが始まりです。創業当時は、主に医療施設などで使用される布製品を回収し、クリーニングしてお返しするといった業務が中心でした。さまざまな施設様に伺い、お取り引きさせていただく中で、現場のニーズに応じて業務内容を拡大し、自社商品の開発および製作や福祉用具の企画製造販売なども行うようになりました。
オリジナル商品の一つである「頭部保護帽《abonet(アボネット)》」の開発も、ご利用者様からの一本のお電話から始まりました。30年程前になりますが、脳障害を患っている女の子のご家族から「娘のために軽くて洗える保護帽を作ってもらえませんか?」というお問い合わせをいただいたのです。当時、重くて硬いヘルメットしかなかった状況で、何度も試作を繰り返し、ご利用者様と一緒に完成させたのがabonetの前身である「愛帽(あいぼう)」でした。その後、2000年10月、産学官連携による「福祉用具デザイン開発・研究プロジェクト」が発足し、「普通の帽子でありながら、衝撃を和らげる機能的な帽子」としてabonetが誕生しました。
▶参考リンク
abonet商品HP「abonetとは」
最近では、福祉用としてだけでなく、通園・通学・体育用や作業現場用、アウトドア・スポーツ用、防災用など、あらゆるシーンで無理なく使える頭部保護帽の企画製作を行っています。また、自転車用ヘルメットが努力義務になったことを受け、規定を満たしたヘルメットの開発にもチャレンジしています。
三代目社長として
前社長(現会長)の母から「三代目として経営を任せたい」と言われた時は、正直なところ困惑の気持ちが大きかったと記憶しています。社交的な性格ではありませんし、当時思い描いていた「みんなを引っ張っていく」というリーダー像と自分があまりにかけ離れていたからです。
そんな中で、2017年に「第7回日本でいちばん大切にしたい会社審査委員会特別賞」を受賞させていただきました。弊社が長年行ってきた障害者雇用や高齢者雇用、さらにグループ会社である「ともに福祉会」のアート活動などが評価いただいたのだと思います。この受賞をきっかけに、改めて会社の経営について考えたり学んだりするようになりました。「日本でいちばん大切にしたい会社」は「人を幸せにする経営」を行います。弊社にとってそれは「人を大切にする」ということです。他の受賞企業の方々と交流したり、勉強会に参加したりする中で、リーダーシップにはさまざまな形があるのだということにも気が付きました。幸い弊社は素晴らしい社員の方々に恵まれています。この会社の将来を見据えた時に、「私にもできるかな」と思うようになりました。
▶参考リンク
「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞
「ともに」をキーワードに
高等養護学校からの依頼で知的障害のある生徒の職場実習を受け入れたことがきっかけとなり、現在では知的や身体、聴覚などの障害を持つ社員30名が弊社で働いています。これは法定雇用率を大きく上回っています。また、当時の実習生は今では勤続32年目の大ベテラン社員になるなど、勤続年数が長いことも弊社の障害者雇用の特徴です。
障害者が働きやすい職場環境を整えることによって、職場改善や安全への配慮、柔軟な勤務体制など、全員が働きやすい会社を実現することができました。さらに、職場環境が整っていたことによって、元ひきこもりの若年者の雇用という新たな企業活動にもつながりました。弊社では「お客様の気持ちが私たちを成長させてくれます」という理念・行動訓を掲げています。これからもお客様や社員をはじめとした「人」を原点とし、さまざまな活動に挑戦していきたいと考えています。
札幌大学の後輩に向けたメッセージ
Q:札幌大学の後輩や同窓生に向けてメッセージをお願いします。
最近、後藤静香さんの「本気」という詩を知り、大変心に響きました。社内での定例会議でもこの詩を話題にして、「何事も本気でやりましょう」と話し合ったところでした。やはり本気で取り組むとお客様にも伝わりますし、何より自分が幸せになります。私たちはお客様から直接「ありがとう」と言っていただける職種なので、それがモチベーションになり、また次も全力で頑張ろうと思えます。
学生のみなさんにも、勉強やサークル活動、遊びなど、何にでも一生懸命取り組むことをおすすめしたいです。
そうは言っても、全力で取り組むのはなかなか難しいものですよね。「好きなことを見つける」ことがポイントになります。弊社の縫製部門の社員は本当に縫うことが好きで、仕事以外の時間でも何かしら作品作りに没頭しているのです。みんなとても一生懸命で「すごいな」と感心してしまいます。それくらい「好き」の力は偉大なのだと思います。
また、いつでもどこでも元気に挨拶すること。弊社では、日頃から社員に「明るく元気に和顔愛語」という言葉を伝えています。挨拶は業種・職種問わず必要なことです。弊社では営業職を希望する学生さんの採用も行っていますので、ご興味のある方はぜひお問い合わせください。
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お洒落な保護帽abonet(アボネット)のメーカー、特殊衣料です。
色々な人が困っている頭の保護を、日常に溶け込むデザインの保護帽でお手伝いします。
「わたしと藻嶺」について
「わたしと藻嶺」は、卒業生の皆さんが大学時代の思い出を共有し、それぞれの卒業後の活躍を応援する場です。さまざまな分野で活躍するサツダイOB・OGの皆さん、ぜひ取材させていただけないでしょうか?取材にご協力いただける方、また卒業生をご紹介していただける方は、札幌大学交流推進部広報渉外課までご連絡ください。本メディアに関するご質問やご意見、ご要望などもお寄せください。
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