「編集ライター養成講座」の皆さんに聞かれた81の質問に答えました
2週間前に宣伝会議さんの「編集ライター養成講座」に登壇させていただきました。こちらに登壇させていただくのは3回目ですが、毎回、いろんな質問をいただき、講義中にお答えできなかった回答を、受講生の皆さんに後日お送りさせていただいています。
今回は、半年前(前回分)の質問への回答をアップしたいと思います。
↑今回の講義中にいただいた質問の数々
ちなみに、質問は全部で81個ありまして、その回答は1万3000字、A4で17ページ分あります……。
内容は以下になります。あくまで私見の数々ですが、もし、今後ライターや編集者を目指す方の参考になりましたら!
・【取材、ライティングに関する質問】 ・【仕事環境やスケジュールに関しての質問】 ・【キャリアに関する質問】・【仕事の獲得、選択に関する質問】・【編集業や編集者さんに関しての質問】・【ギャランティ関係の質問】・【そのほか】
【取材、ライティングに関する質問】
●速く書くために心がけていること
→常にストップウォッチをかけて、時間を意識して仕事をしています。(この質問への回答は、執筆に2時間 38 分、推敲に 58 分かかりました)
●知識を増やすためにしていること
→本は1日1冊ペースで(流し読みも含めて)読んでいます(ほぼ、仕事に必要な課題図書ばかりですが......)。
事前取材として急ぎ知識を得たいときには、その分野についてまとまった雑誌の特集など を読むのがいいかもと思います。(例えばブロックチェーンについて急ぎ知りたいという場合は、ウェブを漁ったり、本を数冊読み込むよりは、東洋経済さんやダイヤモンドさんなどの雑誌の特集を2冊ほど読むのが全体の相場観を捉えやすいかも、です)
●誰かと共作したいと思いますか?
→自著を書いたときは、まさに編集さんとの共作だなあと感じました。共著の経験も2冊ありますが、楽しかったですよ。
●どのジャンルが好きか
→読者の方々の明日からの行動が変わるような「実用書」は好きです。ジャンルに限らず、今まで誰も言ってこなかったことが伝えられる本に関われたら楽しいです。
●文章力を上げるコツを具体的に(2名)
→正直私も知りたいです......が、赤字をいっぱいくれる編集さんを大事にするのがいいと思います。逆に言うと、そのままスルーで原稿が入ってしまうような媒体でばかり書いているとなかなか文章力って上がらない気がします。
●読みやすい文章の極意(マイルールとは)
→読みやすい文章が書けるかどうかは、想像力と直結しているように思います。読者がどんな人たちで、どんなふうに読むかをちゃんと想像して書かれている文章は読みやすいと思います。
(tipsでいうと、スマホの画面でストレスなく読める文章は、大抵読みやすいと思うので、 最終チェックは 10 万字の原稿だったとしてもスマホでします)
●この人、うまいなあと思うライターさんは?(ブロガー、作家ではなく)
→田中幸宏さん(『人工知能は人間を超えるか』のライティングなど)
でも、正直なところ、誰かのライティングを分析したり勉強したりしているかというと、してません。18 年書き続けてきた私の原稿のクオリティに、あとどれくらい伸びしろがあるかと考えると、それほどドラマティックには変わらないと思うので。文章力を鍛えるより、 別のこと(例えば事前準備など)に時間を費やした方が伸びしろが大きく効果的だと思うからです。
●インタビューの技術を上げるためにしたことは?/取材力の鍛え方は?
→すご腕と言われる編集さんの質問の仕方を観察。あと、自分がインタビューした音声を聞くと、反省事項が明確になります。自分の取材の下手さに消えてしまいたくなります。
●著者の方と関わる上で気をつけていること(2名)
→仲良くなりすぎないこと。知った気にならないこと。編集さんを介さず直接連絡したり会ったりしないこと。
●書籍のライターをするときは、専門知識はどれくらい必要か?
→専門書でない限りは、そこまで深い知識は不要のケースがほとんどです。一般の人が読んで理解できなくてはならないので、むしろ一般人の感覚で質問できることが大事かも。
●ライターが入ることを嫌がる著者はいるか?
→いるんじゃないでしょうか。(私に依頼される時点で、嫌じゃない人なので、よくわからないのですが......)。ただ、何かを極めた人ほど、「自分の領域じゃないことは、その道のプロに任せたほうがいい」と考える方が多いように思います。
●作品を生み出すことは辛くないですか。
→(自分が書いているものが「作品」にあたるかどうかはまたちょっと別の話なのですが) 書き終えるまでの辛さはあると思います。でも、それって楽しさと同義かなって思います。
例えばインタビュー取材をしていると「ああ、楽しかった。こうやって話を聞かせてもらうだけで、書かずにすんだらどれだけ楽だろう」と思うことはあります。でも、心が震えるほどの感動やエクスタシーは、「聞いた」ときではなく、うんうん唸りながら「書いている」ときに起こるんですよね。なぜか。
【仕事環境やスケジュールに関しての質問】
●日々ブックライターをする上で、何がモチベーションになっている?
→正直、あまりモチベーションについて考えたことないです。子どもが遊んだりゲームするときに、モチベーションについて考えないのと同じ感じでしょうか。
●書きたくない、煮詰まった時のモチベーションアップ法は?
→ほぼ毎日書きたくないー、面倒だーって思っています(笑)。仕事は好きですし、ライターをやめようと思ったことは一度もありませんが、書き始めるまではおっくうですよね。
コツは何が何でも、最初の1行目を書き始めることでしょうか。やる気を出してから書くのではなく、書いてるうちにやる気が出てくるから。
その意味では、仕事を中断する時、きりのいいところまで書かないようにしています。「PDCAを回すためには、まず、 」みたいな半端なところでパソコンを閉じます。文章の途中でやめておけば、次の日、すぐ書き出し始められるので。
あと、私、普段からインタビュー音声をよく聞くのですが、音声を聞いているとインタビュー時の興奮が蘇ってきて、早く世に出したいって気持ちが高まります。
●原稿はどこで書いている? 集中できる場所は?(3名)
→自宅、カフェ、コワーキングスペースなどいろいろ。本当に集中したいときは、北海道に住む父母に子どもを預けて、ホテルに数日こもることもあります(自著は両方とも3日間ホテルにこもって書き上げました)。ライター仲間と待ち合わせて、カフェなどで一緒に書くことも多いです。デスクトップ(大きな画面)で書いた方が効率いい仕事は自宅でやります。
●1日のスケジュール(5名)
(取材なしの日)
→6:30 起床→7:30 子どもの送り出し→8:00 から 17:30 執筆やらメールやら(途中だらだら家事やりながら正味5~6時間くらい)→18:00 子どものお迎え→19:00 夕食→20:30 読 み聞かせと寝かしつけ→21:00 読書など→22:00 就寝
取材や打ち合わせはなるべく固めます。1日5本とか。固められない場合は、できるだけ 15 時以降にしてもらっています。朝から 14 時くらいまではなるべく書く時間。 仕事とプライベートは全く切り分かれてないです。30分書いて 10 分洗濯物干すとか。そんな感じ。
●休日はどれくらいある?
→まるっと 24 時間休みという日はあまりないですが、数時間しか働かない日は月に5~6 日くらい。
●睡眠時間は?(2名)
→平均 8.5 時間。体が弱いこともあり、ロングスリーパーです。
●かなりハードスケジュールですが、体調面で気をつけていることはありますか?
→会社勤めしている友達の3分の2も稼働していないので全くハードスケジュールではないと思いますが、体調面では定期的に整体とリハビリ(持病があるので)に通ってメンテナンスしています。あと、嫌な人と関わっているとストレスがたまるので、嫌な人は好きになるようにします。 (どうしても好きになれない場合は、最大限距離をおきます)
●ブックライターをしていて一番楽しい瞬間は?
→この著者さんのメッセージをどう料理したら一番美味しく食べてもらえるかなって考え ている時。
●集中法
→わりと集中してないです。いつも気が散っていて、いろんなこと考えながら書いています。
●書籍は売り込みが成功してからどれくらいで販売になりますか?
→ものによるのですが、早くて半年くらいでしょうか。売れっ子の編集さんほどノルマをもっていないので(売れる本を作っているのだから、年間好きな冊数だけ作ればいいよと会社に言われている)、発売までの時間が長くなる傾向がある気がします。
●私生活とのバランス
→講義でも話しましたが、あまり「私」生活と「公」生活を分けていません。どちらも「ただの生活」。その時々で公私ごっちゃ混ぜで優先順位をつけています。優先順位の指標は「私 にしかできないかどうか」「私がやったほうがインパクトがあるかどうか」。
講義でご紹介した記事はこちら→仕事と家庭の両立なんて、無理に目指さないほうがいい (石角 友愛)
●仕事を早く終えるための、効率化の工夫(2人)
→自分がやらなきゃいけないことと、人がやってもいいことを見極めること。下準備(取材前のリサーチや、執筆前に音声を聞きなおすこと、などなど)をサボると結果出戻りがあって時間がかかることが多いので、わりと準備に時間をかけます。あとは何より体調とメンタ ルの管理。
●出産前後の仕事とプライベートの時間管理はどんな感じでしたか?
→講義でもちらりお話ししましたが、自分以外でもできることは結構外注しました。
・自分しかできないこと→産むやつ。産むまでできるだけ安全にお腹の中にいれとくこと。授乳。毎日大好きだよって話しかけること。
・自分以外でもできること→家事すべて。ミルクをあげること。病院や健康診断に連れていくこと。とか。そんな感じで。
●育児との両立方法
→「両方立てよう」とは思いませんでした。その都度、その場面ごとに優先順位を考えて行動していました。 あと「子どものために」って思ってやった行動が、本当にいいか悪いかなんて、子ども本人にすらよくわかんないないし、効果検証ってしにくいなって思って。だったら、今現在はっきりとわかるっているほうの大人の気持ちを優先していいと割り切ることに決めました。
・例えば「子どものために母乳育児(or ミルク育児)する」ではなく「私の都合で母乳育児(or ミルク育児)する」
・例えば「子どものために早期教育する(or しない)」ではなく「私たちの趣味で早期教育する(or しない)」 と考えるとすっきりしました。
(みなさんに押し付けるつもりはないです。我が家の場合)
●子育てしながらフリーで働くのは大変じゃないですか?
→うーん、そうでもないです。フリーって、仕事の時間を自分で決められるから、逆にフリーでよかったなあと思いました。 仕事に飽きた頃に子どもの顔見て癒されて、子どもに飽きた頃に(いや、申し訳ないけど言葉がしゃべれない子どもの育児って速攻飽きるんですよ)仕事に戻るって感じで、わりといい感じのバランスでした。
あと、これは産んでから思ったんですけれど、私の場合は、産んで「できなくなったこと」 よりは、「できるようになったこと」の方が 10 倍くらい多かったなあって思います。
●人がやらない下準備をしたら時間がかかりませんか?
→講義でお話したこと(表記の閉じ開き表をつくる、対抗誌を読むなど)は、特に暇だった新人時代に集中的にやりました。今ももちろんざっとやりますが、下準備にかける時間は当時に比べて減っています(ダメですね……)。下準備の時間が限られている時は、ビジネスインパクトが強い (やっていた方がアウトプットの向上につながりやすい)ものは何かと考えて優先順位をつけています。
●インタビューの音声を聴いているなど、かなりの時間を仕事に割いていますが、疲れませんか? 上手なリフレッシュ方法があるのでしょうか。
→うーん、趣味みたいな感じで仕事をしてるので「疲れる」という感覚はあまりないです。先ほども書きましたが、子どもが一日中ゲームしてても疲れを感じないのと同じ感じでしょうか。(睡眠を削ると眠くてしんどいとか、書き続けると肩がこるなどの感覚はあります)。
仕事より、日常生活の方が疲れるし苦痛です(お皿洗ったりとか、メイクしたりとか、電車に乗るために駅まで歩いたりとか、電車乗ったりとか、法事に出たりとか、学校行事に出たりとか)。 リフレッシュ法というか、料理を作るのが好きなので、ひたすらみじん切りしてるときとか、幸せです。
●仕事をする上で、生活リズムで必ず守っていることはありますか?
→あまりなかったんですけれど、老化とともに無理がきかなくなってきているので、そろそろ規則正しい生活をしようと思い始めています。徹夜は年に数回しかしなくなりました。
【キャリアに関する質問】
●テレビマンを辞めてライターになった理由は?(3名)
→1)講義でもお話したように自分なりの正義(義理)がとおせなかったこと。
2)もともとライターor 記者志望だったのですが、エントリーの作文を見てくださった是枝裕和監督に「テレビ業界で書く仕事をやってみない?」と声をかけていただいて入社したという経緯がありました。でも、自分の力不足でなかなか書く仕事を生み出せず、あまり興味の持てない映像の仕事ばかりやらなくてはいけなかったこと。
3)上記に関わるのですが、あまりにも是枝監督を尊敬しすぎて、このまま近くにいると思考停止しそうだと思ったこと。
4)職場結婚で夫に「職場変えてほしい」と言われたこと。
●ヘアライターというジャンルを選んだ理由は?
→雑誌で一通りいろんなジャンルを書かせてもらったけれど、美容師さんと仕事しているのが一番楽しかったし刺激的だったから。
●取材が生じない仕事(原稿を書くのみ)は、あまり実績になりませんか?
→質問してくださっている方がどの媒体でどんな原稿を書きたいかによると思います。 私見ですが(といってもここに書いているのは全部私見ですが)、「取材力があるのに原稿が書けない人」はまあまあいるような気がしますが、「原稿力が素晴らしいのに取材力がない 人」は存在しない気がします。
●普段から人脈を広げるためにしていることはありますか?(おすすめの集まりとか)
→(まず、個人的に「人脈」という言葉が苦手です。なので、自分で「人脈」という言葉を発することはないです。でも、なんで苦手なんだろう。今度考えてみますね)。
パーティや交流会みたいな場が嫌いなので、ほとんど行きません(目安としては6人以上の会には出ません)。
ただ、宣伝会議さんみたいな勉強会で長く過ごした(共通言語を持った)仲間との約束やつながりは大事にしています。ポイントは集まりをする際に参加者ではなく「幹事」をやること。 あと、何より大事なのは、目の前の一つ一つの仕事を一生懸命にやることだと思います。
人脈って「私があの人を知ってる」じゃ、ほぼ意味ないと思うんですよね。例えば「私がホリエモンさんを知っている」は、人脈でもなんでもないと思うんです。 人脈が仕事に生きるとしたら、「私が知られている」状態。それも「信頼できる状態」で「知られている」ことが大事なわけです。だとしたら、今の仕事をコツコツ丁寧にやって、その仕事相手に「信頼できる人」として認知され、 その人(や仕事)を通して「知られる」ことの方が大事じゃないでしょうか。
●人脈として仕事のつながりとプライベートなつながり、どちらが多いですか?
→ちょっと質問の意味がわからなかったのですが、書籍の企画を持ち込んだ著者さんは、「仕事の知り合い:プライベートの知り合い」が「5:8」でした。 仕事として知り合った人とプライベートでも仲良くなることもあるし、その逆もあるので、 どちらの友人が多いかという質問だったとしたら、自分でもよくわからないかも。
●副業から始めるのと、いきなりフリーランスを始めるのはどちらがオススメですか?
→うーん、私、前者やってないのでわからないです。退路を断つことが不安になる人は前者、 モチベーションになる人は後者がいいのでは。
●「ライターと作家は別の仕事」とおっしゃっていましたが、作家を目指すためにライター をやるのは遠回りでしょうか。
→作家に必要なのは、
1)物事を見る視座(どこから見るか)もしくは視点(どこを見るか) のユニークさと
2)文章力だと思います。それを意識しながらライターをやるのはいいのではと思います。
ファッションスタイリスト出身の人が服のデザイナーになることがあるように。 ただ、ライターとして成功したら作家になるというものではないと感じます。(ライターの上位概念が作家ではないということ)
●作家とライターの違い。作家、エッセイストになるためには(2名)
→今はこの違いがわりと曖昧になっているかなとは思いますが、作家は自らテーマを「作って」書く人。ライターは何らかのテーマに沿って書く人でしょうか。
私自身は、美容の分野では作家性を持って書いています。この分野では、エッセイやコラムも書いて納品しています。これはライターとして長年専門的に美容分野で取材と執筆した結果、一般の人が知り得ない情報をたくさん知って、独自の視点を持てたことに根ざしています。そういう作家性の持ち方はひとつの道かもしれないですね。(もちろん、それ以外の道も多々あると思います)
●本名とペンネームを別にする選択肢はなかったのですか? ペンネームのデメリットは?(自分はペンネームで活動しています)
→いやー、ライターになる時に、ちゃんと考えればよかったですよねー。当時何も考えてなかったんですよね。今、戻れるなら、最初からペンネームにするかもなあという気がします (もしくは旧姓のまま)。
ペンネームでやるデメリットは、海外取材時の多少の面倒くささ(パスポート関係)、大学で教えたり論文を発表するときは本名が求められる(私、大学で客員准教授をしていたので)、郵便物のごちゃごちゃ、くらいでしょうか。メリットのほうが多いように思います(とくに、セキュリティ面で)
●肩書きとプロフィールはどのように考えていますか?
→まず執筆者プロフィールに関しては「この文章を私が書く必然性」が大事だと思いますの で、媒体によってプロフィールは使い分けています。(書評コラムなら「なぜこの人が書評を書くのか」。ヘアスタイル本の著者としてなら「なぜこの人が髪について語れるのか」などなど)
実際にはコンサル的なことやプロデューサー業などもやっているのですが、名刺の肩書きは、ずっとエディター&ライターでやってきていました。私、圧が強いキャラなのと、お目にかかる方々も歳下の方が多いので、あまり名刺で威圧感出さないほうがいいなあと思いまして・・・。
肩書きは、キャラにもよるかなあと思います。
●自分よがりではない、市場での強みはどうやって見つければいいですか?(3名)
→人から頼られたり、感謝されること、よく聞かれることが強み。
●なぜ文章で食べていこうと思ったのか
→講義でもちょっとお話ししましたが、自分の趣味(考えること)が、そのままインカムになる仕事をしたかった。ライター以外にもそういう職業はあると思いますが、私にとっては ライターが身近でした。
●フリーランスの魅力は?
→自分の人生を自分でハンドリングできること。働くも休むも自分次第で決められること (本当はフリーじゃなくても決められるはずなんですけれどね)。あと、苦手な人と二度と会わなくていいこと(自分が苦手だと思った人は大抵相手もそう思っているので、二度と仕事がきません)。
●今後一緒に仕事をしたいと思う人は?
→(具体的にであれば)是枝裕和監督、ミシマ社さん
(抽象的にであれば)30 歳前後の方々
●ブックライターを目指すなら、まずは何をすればいい?
→ブックライターは、他の分野のライターさん以上に、何をやっているかがわかりにくいので、まずはブックライターやっている人の話を聞いた方がいいと思います。『職業、ブック ライター』は必読。上阪さんの塾も、とてもおすすめです。
●今現在の夢は? →その時々に、住みたい場所で、仕事したい時間だけ仕事して、生きていく生活。(つまり、 自由を獲得したいということかなと思います)
●フリーランスの辛いことは?
→一番怖いのは病気や怪我です。あとは、金銭的な不安定さ。これと自由とをバーターして、不安が勝る人は組織が向くと思いますし、自由が勝つ人はフリーが向くと思います。私、お金の多寡に対してそれほど興味がないので(稼げても稼げなくても別に生活に不自由を感じないタイプ)、フリーが向いていると思います。
ただし、金銭的な「不安定さ」はありますが、金銭的な「リスク」という面では、企業に勤めている方が高リスクかもしれません。フリーであれば、リスクを感じたら、軸足を変える ことが比較的容易なので。
●「年齢とともに積み上がる価値になる仕事」をするために意識していることは?
→「長く残る考え方」か「深く残る考え方」のどちらか(両方だともちろんベスト)を伝えられる仕事をしたいな、ということを意識しています。そういう仕事を優先的に受けるとい うこともありますし、取材中や執筆中に、そういうコンテンツになるような努力もします。
【仕事の獲得、選択に関する質問】
●最初の仕事はどうやって獲得した?
→講義でお話ししましたが、大学時代のクラスメイトの編集者を訪ね「ライターになりたいけど何すればいい?」と聞きました。結果、紹介してもらった売れっ子ライターさんのお手伝い、紹介してもらった同期の編集さん周りの仕事で依頼が増えていきました。
●仕事を取ってくる方法
→これを、2時間の講義でお話ししたつもりなんですが......。お役に立てていなかったらごめんなさい。
●売り込みのアポの取り方
→知り合いや人に紹介してもらう際はメールします。人によっては手紙にする場合も。ツテがない場合は公式のルートで連絡先を聞くこともあります。
●企画を出すのはメールでもあり?(編集者とのコネがないので)
→人によるんじゃないでしょうか。メールのほうが、時間がとられなくていいという人もいるかもですね。私が過去に初対面のライターさんにお会いすることを決めたときは、どれもメールでご挨拶いただき→直接お会いして企画を拝見する、でした。
●売り込みのコツ
→講義でも触れましたが
1)自分を売るのではなく、企画を売る
2)1本だけではなく2本、3本、バージョン別などを持っていく
3)どこが良くないか、改善点を聞いてくる
いずれも、編集さんの立場に立って編集さんになんらかのメリットがある(可能性を)設計をしたいところ。
●企画を作るときのコツ
→編集さんからの受け売りですが
誰もが常識だと思っているけれどプロから見たら非常識なこと
誰もが非常識だと思っているけれどプロからみたら常識なこと
昔は常識だったけれど今は非常識になりつつあること
昔は非常識だったけれど今は常識になりつつあることに、
企画のヒントがある気がします。
●企画が思いつかないときの解決法は?
→企画が思いつかないということは、書きたいことや伝えたいことがないということなので、無理に作らなくていいと思うんですよね。
●強みをどこでアピールしている?
→仕事のプロセスそのもの、もしくは、アウトプットで。 仕事をご一緒する前の場合は「これが得意です」と直接言う場合もありますが、強みが発揮されたアウトプットが積み重なれば口に出さなくてもよくなっていくはずです。
●ブックライターとしての企画の立て方
→1)そのテーマを解説するのに日本で一番ふさわしいと思われる著者さんと
2)その著者さんが書くのに一番ふさわしいテーマ
が掛け合わさったもので
かつ
3)そのテーマについて、お金を払ってでも読みたい人がたくさんいることを意識しています。
1)と2)はクリアされていても3)がなくて企画にならないケースが多いです。
●仕事を断る際に気をつけていること
→やりたくない仕事は、スケジュール NG を理由にせず、別分野であればお受けしたいという旨を伝える。ギャラのみが NG の理由であれば、それも伝える。 こいつ、今売れてるからって、調子に乗ってるなと思われないようにすること。なるべく丁寧に。 過去に失礼をなことをしちゃった相手からは、だいたい後から刺されて痛い目を見ていますので、歳を重ねるほど、謙虚になる気がします。
●コンテンツを持っている人は、何をすれば1冊目の本を出せますか?
→発信する。 その発信が多くの人が読みたい内容であるとわかれば(アクセスが多い、話題になるなど)、 編集さん側から「本にしてほしい」とお願いされます。今の時代、本当に世の中に出るべきコンテンツが埋もれて発掘されないことは、9割方、ないと思います。
著者ゼミや著者プロデュース塾などにいくのも手です。自分が持っているコンテンツが、世の中に価値を生み出すかと判断されるかどうかの相場観が養われると思います。が、こういった塾は玉石混交です。(そこからヒット作が出ているかどうかを目安にするといいと思います)
●次の企画(将来やりたいこと)
→著者さんが絡むものは守秘義務があるのでお伝えできないのですが、私自身は今年の年末から、ライト文芸(小説)の分野に取り組みたいと思っています。ラノベとライト文芸は違うというのをこの間初めて知ったばかりですが、数年がかりでトライしたいと思っています。
【編集業や編集者さんに関しての質問】
●この編集者なら多少の無理は聞いてしまうみたいな、仕事のしやすい編集者ってどんな編集者?
→ゴールがはっきりしている編集さん(こういう読者にこういうメッセージを届けたい、が 明確だと仕事はしやすいです)
●どんな編集者がいい編集者だと思うか?(ほか1名)
→ビジョンやミッションを持って、本づくり(コンテンツづくり)をしている編集さんは素敵だなと思います。
●一緒に仕事をしない方が良い編集者は?
→コンテンツに愛や熱量のない人。あと、先輩のライターさんに、深夜や土日にメールを送ってくる編集さんはトラブルが多いから要注意と言われて驚いたことがあるのですが、振り返ってみると、たしかにその傾向はあるかも、と思いました。
●広告仕事と編集仕事での違いや、気をつけていることはありますか?
→広告仕事も編集の仕事と同じだと考えて取り組んでいます。なぜなら、広告主はその媒体のプロの編集者の相場観(どう発信すれば読者に響くか)を知りたくて依頼していると思うので。
広告主の訴求要素を押さえることはもちろん大事ですが、広告主の希望も「自社の顧客になりうる人に効果的に届けたい」なので、広告主の方を見て仕事をする必要はないと思いますし、それを求められることもないです。
●編集者>ライターなのか(編集者さまさまなのか)
→この質問面白いですね。「編集者さまさま」と思ったことは一度もありません。ただ、コンテンツに関しての議論は対等にしますが、最終的な「売り」に責任を持つ(責任を取らされる)のは編集さんなので、最終決定権は編集さんにあると思っています。
とはいえ「編集者(発注者)>ライター(受注者)」と感じている人が(双方に)多いこと も事実なので、編集者として仕事をお願いするときはできるだけ丁寧に、ライターとして仕事をするときはできるだけ目線を上げて仕事するように心がけています。それくらいでちょうどいいバランスになるかなと思います。
●編集からの良いフィードバックとは
→私の場合、文章の構成に関してご指摘や修正をもらえると、とても勉強になるなと感じま す。(もちろん、文章そのものに対する指摘もありがたいのですが)
【ギャランティ関係の質問】
●強みといっていた「全部やる」の見積もりの内訳(雑誌の場合)はどうしているか?(原稿料、企画料、ディレクション料)
→雑誌で見積もりを出したことはないです(よく考えたら、どの仕事でも見積もりを出した ことない......)。
雑誌は雑誌ごとにページ単価が決まっていることが多く、企画を立てようが撮影ディレクションをしようが、全てライター原稿料に込みとして払われます。(だからこそ、同じ値段でそこまでやってくれるライターが重宝されたということですね)
あ、でも、それで思い出した! 講談社さんで撮影ディレクションや美容師さんとの打ち合わせを全部やったときに、「構成料」という名目の費用が別に払われたことがありました。 が、「私、打ち合わせや撮影ディレクションはどの媒体でもライターの仕事の一環としてやるので、それに対しての費用は不要です」と伝えた記憶があります。
●お金払いが良い/悪い評判のメディアはどこですか?
→雑誌でいうと、講談社、集英社、小学館の御三家は良いと聞きます。ウェブメディアは媒体ごとに値段があるのではなく、ライターの技量によって値段がついていることが多いと聞きます。 あと、こちらの質問って、たとえ「ここが悪い!」というのを知っていたとしても、こういった公の場には書かないかなと、思いました。(質問してくださった方に直接であればお伝えすると思うのですが)
基本的に、良いことは名指しで公開、悪いことは一般論として公開、もしくは一般論として批判するようにしています。 自分のことを聞かれる分にはタブーはありませんが、私の発言によってどちらかに迷惑がかかることに関しては、その限りではありません。
●ウェブメディアは PV 数に応じて原稿料が変わりますか?
→私はそういった仕事をしたことはないです。でも、そういう媒体さんもありそうですね。
●書くこと以外の収入は?(2名)
→講演料、メディアへの出演料、コンサルティング料、商品開発アドバイザー、などでしょうか。昨年だと、収入の2~3割くらいかなと思います。
●アシスタントはいるのか? 何をしてもらっているのか?
→今は専属はいなくて、つどつど、アルバイトをしてくださる方を頼っています(5~6人 の方にお願いしています)。テープ起こし、資料集めなどのリサーチ、取材データの整理(アンケート集計など)、精算まわり、校正(自分でもしますがダブルチェックしてもらうために)、表記統一表作りとチェック、などをお願いしています。
●収入を上げる方法
→1)単価を上げる、2)時間を減らす、3)不労所得を増やす、のいずれかになるかと思います。
【そのほか】
●熱狂できるものはありますか?
→狂うほどのものはあまりないですね。恋愛とか?
●ブックライター以外で今後やってみたいことは?
→書店員
●その根拠なき(?)自信の理由は?
→スポーツと違って、NO.1 になる必要がない業界だし、年齢的な引退が決まっている業界でもないので、ちゃんと考えながら働いていれば、どうやってでも食べていけると思っていたから。
●美容室での上手な髪型オーダー法。本当に上手くいくのか。
→ぜひ『女の運命は髪で変わる』をご覧ください。
●これからの時代に生き残るライターは?
→自己肯定感が高く、変化を恐れない人。
●(ご自身にとって)一番心に残った本
→『星へ行く船』シリーズ(新井素子さん)
→『自由をつくる自在に生きる』『「やりがい のある仕事」という幻想 』 『夢の叶え方を知っていますか? 』(以上森博嗣さん) 仕事の仕方、選び方という点では、森博嗣さんにかなり影響を受けていると思います。
●一番読んでほしい自分の本は?
→自著では『道を継ぐ』
→ブックライティング本では『めんどくさい女子の説明書』
●AI の時代に編集やライターの仕事は残ると思うか?
→今、とても興味があることです。まだ暫定解に至っていないので、またいつか答えさせてください。
●ライターの醍醐味は?
→取材させていただく方は、だいたいにおいて、なんらかの分野で秀でた方なので、魅力的な方が多いですよね。そんな方のお話を 1 時間も 2 時間も、特等席で聞いた上に、質問までできて、それをどう伝えようかとわくわくして、お金を払うならともかく、お金もらえる 仕事って、醍醐味しかないです。
↑半年前(前回の受講者の皆さん)の質問の数々
みんな元気に書いているかなー?
[本日のさとゆみ]
・執筆 5時間
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