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雪に舞う唐辛子の発酵調味料「かんずり」

日本では珍しい、唐辛子の発酵食

唐辛子を発酵させる食品には、タバスコや、辣椒醤などがあります。日本では唐辛子を保存する文化といえば、沖縄のコーレーグスですが、和食にそれほど唐辛子を用いないことから(七味唐辛子くらい?)、唐辛子を保存する文化はそれほど根付いてきませんでした。(ちなみに韓国のキムチ博物館によると、唐辛子を持ち込んだのは豊臣秀吉らしいですが!)

そんな中、新潟県の「かんずり」は、下漬けの塩漬けと、麹による本漬けという世界でも珍しい二段階発酵で作られています。

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かんずり作りは、「寒造り」と書き、大寒の日にスタートします。秋の収穫から5〜6ヶ月間塩漬けされた唐辛子を3〜4日雪にさらします。一面の雪に舞い落ちる赤い唐辛子から、甘い香りが漂ってきました。まるですでに麹で熟成したかのような匂いがします。少し試食させてもらうと、かなりの旨味成分がでているのに驚きました。雪さらしの前に、すでに乳酸菌や酵母で唐辛子が発酵しているのでしょうか。

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雪にさらすメリット
1.塩抜き
2.アクをとってくれる
3.甘みが増す
4.繊維が壊れ、まろやかになる

「雪が多いか、少ないかよりも、雪の質が大事。この地区は、標高が高く、よい雪が降る。パウダー状でさらさらしているのがいい」

と語るのは「有限会社かんずり」の社長。 

「ナス科の植物ってアクが強いでしょう? 雪はアクをとってくれるんですよ。人のアクも同じでね、上越に嫁に来たらアクが抜けるよ」

雪にはいろんなものを変化させる魔法がある。天からの贈り物を活かした雪国ならではの知恵ではないでしょうか。 ウィットのきいた社長のトークがもっと聞きたくなって、かんずり工場にも伺い、お話を聞いてきました。 

もともとかんずりは、上杉謙信が陣中に持ち込んだ保存食だったといわれ、秀吉が朝鮮出兵のときに持ち帰った唐辛子がはじまりだと伝えられています。以来、上越では唐辛子を塩漬けしたものに、柚やまたたび、秘伝の調味料を混ぜて家庭の味を作ってきたのだそう。工場では、かんずりができるまでの工程がパネルで紹介されていました。

昭和30年代、家庭の味だったかんずりを商品化しようと炉端で試作しているところ

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寒の時期にすりつぶすから「かんずり」というらしい。
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かんずり工場は今の社長のお父さんが始められたそう。戦後、だんだん失われていく食文化、家庭の味を残そうと、10年かけて商品化に取り組んだといいます。当時は、お父さんが一人で近所のおばあちゃんたちに聞いて試作を続けていたそうです。

”モノがあふれていた高度経済成長期。こんなものを商品化するのか。と人は笑った。お父さんにあとは頼んだ、と言われ、試作を重ね「かんずり」を商標登録し、社名にした”という社長。

「脇役でも、ずっとやってたら、いつか主人公になれるのかなあと思って。なりたくても、なれないんだけどねえ……」

手仕事の味、それも、かんずり一本。十分、ヒーローです。社長!

かんずりの仕込み3〜4日雪の上にさらしたあと、ヘタをとって刻み、麹、柚、酒を混ぜて3年寝かせます。吟醸酒を使って6年熟成させた「吟醸生かんずり6年仕込み」は、数量限定であまり出回らない社長のオススメ商品。

かんずりの使い方

辛みの効いた調味料として、肉じゃが、きんぴら、焼き肉のタレにつけたり、おでんのからしやラーメンの一味として重宝します。

右は、吟醸六年仕込みの超熟成かんずりに少し醤油をたした「醤油かんずり」。かなり濃厚で、焼き肉やカツなどと合わせるとパンチの効いた調味料になりそうです。左は、生かんずりにマヨネーズをブレンドしてみました。こちらはスルメイカと相性がぴったりでした。

日本の発酵食は日本酒と合わせるとよく合うことが多いですが、かんずりを使うとお酒がすすむアテになること間違いなしです。

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※数年前の取材記録です。今年は新型肺炎の影響で、雪晒しの回数にも制限があるそうです。


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