プロットつくったのでみんな見て見ての回

アリスが連れてきたヒナと部室で2人きりになってしまったモモイが、自分の得意相性外の人物相手に、人見知りを発動させてしまうおはなし。

才羽モモイは、焦っていた
何故か部室の中央に鎮座するゲヘナ学園風紀委員長、空崎ヒナ、その威光と
何故かその空崎ヒナと二人きりで、沈黙の時を過ごしている自身の状況に

(扉絵)

数分前に遡る。
アリスが驚くべき客人を部室に招くことは、ゲーム開発部にとってはすっかり日常となっていた。元々親交のあった早瀬ユウカに加え、ミレニアムの表の最高戦力美甘ネル、裏の最高戦力飛鳥馬トキを初め、ミレニアム最高の頭脳のひとりである明星ヒマリまでもが時折ゲーム開発部の部室を訪れる。
そして、今日の客人は一際驚くべき人物、ゲヘナ学園の最高戦力にして鬼の風紀委員長、空崎ヒナがゲーム開発部を訪れたのだった。

先の虚妄のサンクトゥム攻略戦、第3サンクトゥム破壊作戦の縁で、アリスとヒナは親交をもっていた。とはいえ、普段は多忙を極める風紀委員長を、たまたまのタイミングでアリスが強引に引っ張ってきた形になる。
それだけなら、いつもの、ありふれた微笑ましい日常だったのだが


「うう、アリス、バステがつきました!!おなかが痛いです!!」
ヒナがたまたま所持していた大量のアイス(シャーレの仕事で冷凍倉庫をアイス大好きギャングから奪還した際にヒナとアリスが大量に持たされた謝礼であった)を「持って帰るにはゲヘナは遠すぎるから」とゲーム開発部に差し入れたこと。今日がたまたま暑い日だったこと。調子に乗ってアリスがアイスを食べすぎた事により、アリスと、付き添いのミドリが中座したことにより……

モモイと、ヒナは2人きりになってしまっていた

(正確には、ロッカーの中にユズもいるんだけど……)
「ご、ゴメンねヒナ委員長……アリスいなくなっちゃった……」
「私こそ、思慮が足りなかったわ、アリスには後で謝っておいて頂戴」

ふたたび沈黙

「ごめんなさい、そろそろおいとまするわね……」
「ま、まってよ委員長、多分すぐ戻ってくるし、居なかったらアリスも寂しがるとおもうからさ」
「そ、そう」
(なんで引き止めちゃったのわたしー!!!)
とはいえ、話題がないのも事実である。
普段は快活に見えるモモイだが、こういった「ゲームの話題がミリも通じそうもない相手」には滅法弱い。
アリスの愛嬌は、その佇まいだけで場にいるみんなを幸せにするし、ミドリはあれでこういった相手への礼儀というものを心得ている。
モモイは、ムードメーカーであるが故に、ムードを作れなかった時のコミュニケーション能力は壊滅的なものとなるのだ。

「……そういえば、モモイ」
「な、なにヒナ委員長」
「あなたがあの、才羽モモイなのね」
「???」

モモイには、正直ヒナに名前を覚えられているような心当たりがさっぱりない。確かに第3サンクトゥム破壊作戦で共闘はしたが、およそ戦闘員としてのモモイの実力は、アリスやヒナ、あるいはその場にいたRABBIT小隊には遠く及ばないからだ。

「いえ、ごめんなさいね。ひとりで納得してしまって。うちのイオリが、そういえば貴方の話をしていたから」
「イオリさんが?」
モモイとイオリは多少面識があった。それというのも、シャーレの仕事で、先生から声がかかる際に、よく一緒になるからだった。
モモイには先生の意図はさっぱり分からなかったが、おそらく運用上でなんらかの相性がいいのだろう。あまりそういったことを意識することはなかったが、確かに自分もゲームならば『そういった』編成をすることがある。

そういえば、あの時もモモイは会話の糸口が掴めず困っていた。
「お前たちが、才羽モモイとミドリだな。ゲーム開発部の」
「よろしくお願いしま〜す」
「あまり戦闘が得意そうには見えないが……先生の考えることはわからん」
(感じ悪っ!!)
あまり良い印象はなかった、とはいえ指摘の通り喧嘩をして勝てる相手ではないし、先生の顔を潰すのも本意ではなかった。となれば……
「イオリさんは、ゲームとかする!?わたしたち、作るのもやるけどもちろん遊ぶのも好きでさ!!」
こういう時に、相手の懐に入り込もうとする勇気と明るさは、モモイにあってミドリにはないものではあったが
「やらん。そもそもよく知らない」
「じゃあさじゃあさ、名前ぐらいは聞いたことない?『ゼル伝』とか『ファイファン』とかさ」
「興味無い。そもそもわたしたちは忙しいんだ」
「ふーん、そうなんだ……」
撃沈、である。

まあそうならば仕方が無い、誰とでも仲良くできる、という事は現実では無理なのだ。気持ちを切り替えたモモイはミドリに話しかける。
「ねえミドリ、次のバトルさ、勝負しない?」
「報酬はアイスおごり」
「乗った!!でね……」
「そこ、うるさいぞ!!!」
「「はいっ!!💦💦」」
ごもっとも、ではあるが釈然とはしない。

銀鏡イオリは、苛立っていた。
自分はゲヘナ風紀委員として厳しい訓練を積んできたエリートだ。その辺で遊んで過ごしてきた連中とは違う。
今日先生との任務を共にする春日ツバキは音に聞こえし百鬼夜行の眠り姫。こうは見えても実力は本物だ。
問題はもう一組、同じく先生が連れてきたミレニアムのゲーム開発部とやらからやってきた二人である。
先生の意図は全く理解できないが、どうせ遊んで過ごしてきたような連中だ。適当に撃ってくれればそれでいい。大事なところは自分が何とかする。
とはいえ、釈然とはしない。

「おい、先生!!!敵が多いぞ、こんなの聞いてない!!捌ききれない!!」
イオリはスナイパーである。獲物はボルトアクション、自然、数に頼る雑魚は苦手になってくる。
そこをフォローできる技量をイオリは持っていたが、何度も、という訳にはいかない。
先生からの応答はない。
「おい、聞こえないのか!?」
「大丈夫、イオリさん。お姉ちゃんが行ったよ」
「あいつが!?おい冗談だろ!?」

カバーから弾丸のように飛び出していくモモイ、実際素人そのものである。
「あんのバカ!?」
イオリの目には確かにそれはバカの行動に見えた、しかし。
「今回の勝負、武器でいえばミドリよりわたしの方が断然有利、アイスもーらいっ」
実際それは敵も同じであり、モモイの照準もなにもない乱射に、好き勝手に布陣していた敵は次々に倒れていく。
その光景は、たゆまず学び、厳しく鍛えてきたイオリには確かに素人の振る舞いに見えた、だが……

「素人のくせに、中々筋のいいヤツがいるって」
「なっ、褒めてなくない!?」
吹き出すヒナ
「ふふっ、ごめんなさい。でもあの子、あれでも結構褒めてるのよ」
「そーなんだ、イオリさん、いっつもイライラしてるし、わたしのこともムカついてるのかと思ってた」
「そんなことないわ、あの子、人付き合いがへたなの」
「わっかるー」
「モモイ、イオリと一緒に戦ってくれてありがとう。貴方のような子と一緒にいたら、あの子にも何か学びがあると思うわ」
「じゃあ今度、ここにも一緒に来てくださいよ。わたしからも、イオリさんに教えたいこと、いっぱいあるの!」
笑い合うふたり。

「はい、アリス、ただいま帰還しました!!」
「ただいまー。お姉ちゃん、ヒナさんと仲良かったんだ」
「あーっ、絆イベントが発生したんですね!!アリスも見たかったです!!」
ふたたび騒がしくなる部室。たのしい午後は続いていく。

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