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僕らは育児に夢を見た ~前髪とドーナツとクリスマス~

また前髪を切り過ぎてしまいました。笑


園の先生には「可愛いね」とほめてもらい。

友達に見せびらかしていましたが、
ママだけは苦笑いでした。ごめんなさい。



不登校になった日は、
パパは途方にくれました。

学校に行けなくて。だんだん目が
キラキラしなくなるあなたを見ていられず。

パパは学校を嫌いになりました。



このまま自信を奪われてたまるかと、
カフェに連れ出してドーナツを一緒に食べた。



―目のキラキラが戻ると思ったから。

クリスマスは毎年。

「じつは、パパがサンタだよー。」
から始まり。


もちろん信じてはくれなくて。
子供達からは―


「パパはサンタさんじゃない。
だって、魔法を使えないもん。
お空だって飛べない。
今からサンタさんにお手紙を書くの。」



―ただ困った顔が見たかったんです。
喜んでる顔だけじゃなくて。



一年に一度のクリスマス。
全部見ておきたかった。

他人からは
「子供の夢を壊さないで。」
と、言われるけれど―


「僕らも育児に夢を見てもいいでしょう?」



プレゼントはちゃんと枕元に置きました。
夢は壊さないように上手に守った。


サンタへの手紙は大切にとってあります。


困った顔も。笑った顔も。
ぜんぶ写真に撮った。

二十年後のあなた達と見るの。
それはまるで映画のように―



―前髪を切り過ぎたのはわざと。


変な髪型をママに自慢する姿を、
覚えていたくて。


写真を見れば、また前髪の頃の
あなたに会いたくなる。


「涙が出るのは、なんでだろうね」
と言って、今はママも笑うから。

―やっぱり前髪は間違ってなかった。



―パパが学校を嫌いになって。
仕事を休んで、ずっと一緒にいた。


すこし元気になったら画用紙に大きく
「私は自分が大好きです!」
と、書いて壁に貼った。


毎晩一緒に読んで、
それが効いたのか今は学校に行ってる。



でも疲れたらまた休もうよ。
また一緒にドーナツ食べようよ。



―サンタはパパだけど

魔法は使えなくていい。
空も飛べなくていい。

それでも笑い声を聞けたから。
もう一生分聞いた。


「サンタさんから返事が来ない」
と、悲しそうにしてたから―



これはサンタからのお返しの手紙です。
遅くなったけれど―


「パパが今まで生きてきて、
もっとも笑ったのは、
あなた達を育児したあの時でした。」



親は夢を見てはいけませんか?


―いいえ。夢なら見ますよ。
たった一度の育児ですから。



前髪は何度だって切り過ぎる。
嘘つき呼ばわりされてもサンタになる。
ドーナツを片手に夢を描いた。

「私は自分が大好きです!」って。



「パパは上手にできたでしょうか?」


たった一度の育児。

「私たちといる時のパパは、
いつも楽しそうだった」

と、聞けるように。


どうかいつか教えてください―




「僕の育児は楽しかったですか?」