2024/03 英検1級二次試験を振り返り
前回の記事はこちら
前回は気合いを入れて対策とトレーニングしました。
面接の手応えは個人的にあったので、オンラインで合否発表を確認した時は衝撃的でした。
二次試験不合格後のメンタル
一次試験合格後、二次試験を受けるチャンスは最大4回あります。
一次試験から毎回やり直しにならない点は良いのですが、回数には制限があるので、つい「次も落ちたらどうしよう」とか「4回連続で落ちてしまったらどうしよう」というネガティブな方向に考えてしまうこともあります。
自分はリーディングやリスニング、ライティングは英検1級レベルだが、スピーキングが英検1級レベルにほど遠くて、もしかして一生受からないのではないか、など不安になります。
しかも、2024年度試験から英検1級の形式が一部変更になる予定なので、これまでの一次試験と同じではなく再受験時の合格の保証は得られないということも不安材料です。
一次試験に落ちてから、この不安感は地味にキツイと感じました。
私は情報処理技術者試験などで試験に落ちまくっているので耐性がある方だと思いますが、それでもキツイものがあります。
二次試験に複数回落ちているけど、あきらめず挑戦している人の精神力はやっぱり凄いものがあると言えます。
さらに、試験後、合格発表までの約1週間も不安になります。手応えがあっても落ちる可能性はゼロにならないので不安です。
発音問題と Shoko 先生の助言
2 回目の二次試験では沈黙もなくマスク無しで大きな声で話したにもかかわらず発音が4->5にしか上がっていなかったので、もしかして自分の発音はとても聞き取りにくいのかなと思ったりもしました。
こんな気持ちの時にネットの情報を見てしまうと、英検1級の二次試験で自分と同じ中年男性は発音に苦戦している人が多いような情報が目に入ってきます(注:これは正しくない情報です。苦戦する人もいれば苦戦していない人もいます)。
もう、「中年男性の発音は呪われていて、二次試験では高得点が出ないのではないか」という疑心暗にも囚われる始末でした。
そんな時、ひょんなところからすばらしい機会に恵まれます。
模擬試験でお世話になったオンラインスクールから不合格特典(?)として、Shoko 先生との無料オンライン面談の機会をいただきました。
Shoko 先生は英検1級の二次試験に六回不合格してから合格されている方で、複数回不合格者の強い味方です。
面談当日、Shoko 先生に「中年男性は二次試験の発音で不利なのでしょうか?」という質問をしましたが、Shoko先生に一笑に付していただきました。
あなたなんかまだ若い、歳取って発音が不利になるなんて二次試験ではそんなことない、といった感じで励ましていただきました。
実際にShoko先生は英検1級合格後に発音の研鑽も積まれている上でのご発言でしたので説得力がとてもありました。
Shoko先生とお話することで、とりあえず気が楽になりました。
また、その頃 Elsa Speech Analyzer という AI がスピーチを判定・矯正してくれるサービスがあることを知りました。
早速2回目用に練習したスピーチで測定してみると、結果はAdvanced。発音とイントネーションは低めだけど、全体的には悪くない結果が確認できました。
そういえば、以前はボイストレーニング用の発音グッズを使っていたことを思い出しました。
当時はそれほどの効果は感じていなかったのですが、喉の開きや呼吸の深さが良くなっていたかもと思いました。
そこで、発音グッズの後継商品を購入して風呂に入っている時に毎日数分だけトレーニングしました。
その他、Shoko先生おすすめのドクターD先生のYoutube動画をいくつか時々観ていました。
3回目の二次試験に向けた方針と行動
とりあえず「ムリしない」ことを心掛けることにしました。
一次試験と二次試験の2回目までは課題を決めて頑張って学習していました。
しかし、この時点では二次試験合格できるようなイメージが無くなっており、無理して学習しようとしても気力が湧きあがらないですし、逆にポッキリと気持ちが折れてしまい、英検1級の受験自体を辞めてしまうことにもつながりかねない状態だと感じていました。
そこで、勉強時間は思い切って減らし、パンデミックで解約していたスポーツジムへ再度行くようになったり、PlayStation 5 を購入して気になっていた龍が如くシリーズをやりました。
一方で、毎日何もやらないというのも不安です。
何もしなければ英語力は落ちる一方となり、二次試験の合格から遠ざかるだけです。
そういえば、近頃は(自分にとって)むずかしい英文に取り組むことが多く、中学英語レベルの「英語回路」が薄れているような気がしていました。
これを機会に、私の英語の原点ともいうべき下記の本に再度取り組んでみようと思いました。
『英会話・ぜったい・音読 【入門編】』(國弘正雄/千田潤一/久保野雅史著,講談社インターナショナル)
英検1級二次試験の受験者で中学英語から見直す受験者は珍しいかもしれません笑。
下記の記事で触れた頃で、もう20年くらい前にやった本になります。
当時の私は TOEIC200点台でしたが、今は TOEICは900点を超え英検1級一次試験にも合格しているので立場には雲泥の差があります。
しかし、改めて本を購入して國弘先生や久保野先生の解説を読んでみると、全く色あせない内容で驚きました。
とりあえず、本で指示されている通りのトレーニングをすることにしました。
なお、音源は Elevenlabs で生成することで大人向けな音声とスピードにしました(このままだと速いので主に0.75倍速で聴いていました)。
英語力は昔と比べて各段に上がっているはずですが、音読筆写のトレーニングは心地よい負荷を感じました。
自分の「英語回路」が刺激されていく感じがしました。
また、音読を毎日続けていると、英語のイントネーションの付け方がうまくなっていく気がしてきました。
何回も音読筆写している英文を音読していくので、イントネーションに意識を向ける余裕ができたのかもしれません。
その他、これまでの面接で不合格になった時の面接官と万が一にも再会しないようにしたいと考えました(もし、3回目の面接で再会してしまったら、それだけで気持ちが折れそうになることが予想されたためです)。
今回は仙台で受験することにしました。
仙台の面接官の方が良い方(※採点が甘いという意味ではなく、発音がちゃんとしている等)らしいという噂をネットで知ったので、旅行がてら仙台へ行くことにしました。
「理由」について試行錯誤
これまでの二次試験で不合格になった理由は、コミュニケーション力や発音の前に、そもそも内容が良くなかったのではないかと思い、スピーチで使う理由について試行錯誤していました。
SDGs なら目標が17個あるし、具体的な数字も豊富に挙げられると思い、入門的な本を何冊か購入して読みました。
しかし、結果として私には合わないことが分かりました。
他にはなんでもエンジニアの視点で答えようと ChatGPT も活用して検討しましたが、どんなトピックでもエンジニアの視点で答えることは難しいことが分かりました。
その後、「13の万能な理由」と出会うことによりこの理由を改善することができました。詳しくは↓の記事をご参照ください。
今回はムリしない方針で始めた学習ですが、ラスト2週間はムリではないのですが時間などの各種リソースを集中して投入しました。
自分のモードが試験モードになっていたと思います。
プライベート時間の自由度は下がるので、いろいろ犠牲にすることが生まれます。
同じ社会人受験者もきっと少なからず色んなことを後回しにして試験に集中していると思うと、皆さんの挑戦する情熱はやはり凄いと思います。
忙しかったですが、前回までに作成したToDoリストを参考に試験準備を整えられたと思います。
ラスト2週間で勉強の合間によく聴いた曲が下記の曲です。
後半からの盛り上がりがすごいですね。
試験前
予定通り仙台で受験しました。ホテルに前泊です。仙台の気温は体感で都心より2,3度低い感じでした。
仙台は東北地方の中心地のため、たくさんの若者と観光客でにぎわっていました。
会場は東北高校です。
そう、あのダルビッシュ投手の母校です。
控え室は1級と準1級の兼用でした。2人または4人ずつ面接教室に呼ばれていきます。控え室には一時間くらい居ました。
自分の番になり移動です。
面接教室は2教室ありました。
前の人が面接している時に、自分は三回目の面接試験なので緊張感が以前よりも減っていることに気づきました。
試験本番
面接官は、ネイティブと日本人の2名で共に中年男性でした。
両者の発音はクリアで聞き取り易かったです。
自己紹介ではちょっとしたネタを仕込んでいましたが、無事に笑いが起こったので雰囲気が良くなりました。
次にトピックカードをめくってスピーチの準備時間になりました。
が、ここで困りました。どのトピックも準備したトピックとは異なるものでした。
なお、後日X(Twitter)の投稿を読むと、午前中の試験のトピックの選択にはみなさん苦戦したようでした。
それでも比較的答えられそうなトピックとして、ポップカルチャーを推進すべきか、というトピックを選択しました。
しかし、準備時間の1分間内では理由が思い浮かんで来ませんでした。
それでもスピーチは開始されるので、とりあえず話し始めます。
Yes の立場を明確にしてから以降理由を挙げるという準備した型から始めました。
ここまで話してもいい理由が浮かばなかったので、経済を最初の理由としました。
日本には鉄鋼や自動車の産業があるけど、もっと漫画やアニメの産業があってもいいよねという感じです。
完全にアドリブですので英語力が試されます。
中学英語を復習したおかげか、簡単な内容かもしれませんが止まらずに話せました。
ここまで話をしたら用意した理由が部分的に使えそうな感じがしてきました。
二つ目は人気を理由にして、日本人は人口が多いし市場があるから漫画やアニメは老若男女に受け入れられるしいいよねみたいなことを挙げました。
三番目の理由はテクノロジーで、AI のおかげでクリエイターの創造力が刺激されてコンテンツがさらに良くなる可能性があるという話も出せました。
三番目の理由の最後の方でタイムアップしましたが打ち切りはありませんでした。
スピーチの後はQAタイムです。
今回の面接ではネイティブと日本人が交互に質問してくるスタイルでした(このスタイルは初めてだったので、最初にネイティブの質問が1個で終わった時は「あれ、もう終わり?」と思いました笑)。
おぼえている質問を挙げると、
・海外の人とコミュニケーションをとる際にポップカルチャーって役立つと思う? -> Yes。海外の人はマンガやアニメを見て日本に興味を持つから、コミュニケーションで共通の基盤ができるということ。これってコミュニケーションにとても役立つよね
・あなたは3つの理由を言ってくれたんだけど、三番目のテクノロジーの理由がよくわからなかったので説明してもらってもいい? -> AIたとえばDALL-Eはオリジナルの画像をテキスト記述をもとに作成してくれる。これがマンガやアニメのクリエイターの創造力を刺激するんだ。
・アメリカのポップカルチャーの影響は強すぎると思う? -> Yes。ディズニーとかアメコミとか強いよね
・日本語を海外に広めるべきだと思う? -> 難しい質問だと思います。もちろん、海外の人が日本語を習得してくれることは嬉しくて市場も広がるんだけど、日本語ってむずかしい。特に英語やフランス語とは全く別の言語だから難しいんじゃないかな。
こんな感じのQAをしているとタイムアップの音が鳴り、二次試験が終了しました。
面接官にこれで試験は終了です。良い1日をお過ごしください。と言われて、あれっと思いました。
これまでの面接で have a nice day みたいに終わったことがなかったためです。
後でネットで調べると have a nice day と言われると合格、いや単なる偶然だ、などという意見が見られます。
これは、have a nice day と言われるぐらい充実した面接なので、結果的に合格している場合が多いということなのかもしれませんね。
会場運営の方々は東北らしい温かさのある人が多く、気持ちよく受験させていただきました。ありがたいです。
帰りは仙台駅の商業施設で、ひとまず休憩した後に東北各地のおいしいものをお土産でたくさん購入しました。
英検受験と旅行の一石二鳥です。
試験後の感想
中学英語の復習がまず役立ちました。
難しくない簡単な英語でスムーズに話せました。
これは前回までにない感覚でした。
また、私の発音も伝わるレベルだったと思います。
面接官はスピーチの理由を明らかに認識してQAしていました。
さらに、「13の万能な理由」の中から今回は経済、人気、テクノロジーという3つの理由を挙げることができました。
13の理由に絞ってトレーニングしていたので、発想が自然に13の理由寄りになっていました。
狙い通りトリッキーな理由ではないため、面接官が比較的理解しやすい理由を挙げられたと思います。
感触としては、前回までのひどい点数を上回ることは確実だと感じました。
スピーチも3つの理由を挙げて沈黙はなく、QAも主張の一貫性は保ちつつやりとりできたので、これは合格ではないか??と思いました。
結果発表を待つ
前回までオンラインで合否結果を確認していました。しかし、今回は郵送を待つことにしました。
前回、自分の予想に反して、オンラインでひどい点数が表示されたことがさすがにショックだったからです。
情報処理技術者試験などで不合格をたくさん経験してもこの衝撃は大きなものです。
心が折れるリスクを増やす必要は無いと考えました。
オンラインで確認しなくとも合否結果は変わらず、結果は郵送されてきます。
結果を待つ間は長く感じました。
今回は手ごたえがあるけど、前回も手ごたえがあったと思い込んでヒドイ結果だったので臆病になります。
また、二次試験対策の方向性は合っていると感じましたが、この手ごたえで試験に落ちるのならさらにどれだけレベルアップしなければいけないのだろうと焦ります。
しかも、今回落ちたら次回は一次免除のラストになります。
3/12 のオンラインでの合否発表後に、たくさんの方がX(Twitter)上で結果を報告してくださっていました。
今回は、これまで二次試験で不合格だった方もついに合格をつかんだという投稿が多く見られ、私もとても嬉しかったです。
そんな投稿を見ると、自分の結果も悪くないはず、いや前回のこともあるのでわからない、などと結果が郵送されてくるまで期待と不安がないまぜの状態で過ごしました。
そんな状況でよく聴いたのがサカナクションのネイティブダンサーです。
暗い気持ちに沁みる感じでした。
結果
ついに二次試験を突破できました。しかも、前回までの低得点がウソのような高得点です。
前回のショックもあり、なかなか心のバリアが解けませんでした。
結果を見ると、Shoko 先生にご指摘いただいた通り、中年男性だから発音の得点が伸びないということは全くありませんでした。
私のこれまでの二次試験では沈黙したり理由がテンプレートだったり主張と矛盾したりで内容がダメだったので発音も低い結果だったのでしょう。
もし、内容と完全に独立して純粋に文法語彙と発音の項目採点する運用にしてしまうと、トピックとは全く関係ないスピーチを入念に練習した上で臨んで4,4,10,10の計28点で合格ラインを超える戦術が理論上は取れてしまうことになります。
これでは二次試験の目的から外れるので、独立項目になっていないと推察します。
本記事が含まれるマガジンの目次記事です。