其の三【わたしと落語と】太神楽
寄席の定席で香盤表に太神楽(だいかぐら)があるとわくわくしてしまう。ちなみに定席というのはテレビの帯番組みたいなもの、香盤表というのは芸人さんの出演する順番表のこと、大神楽とは染之助・染太郎師匠のような傘の上で球や桝や急須を回したりするおめでたい曲芸のことです。
わたしは大神楽が大好き。おめでたい芸なだけあって、雰囲気も明るいし、専用のグッズ…棒とか傘とか球とかにフリンジがついてたりして見た目にも楽しい。口に咥えた棒にあれこれ乗せて、もう無理でしょ?と思ったところから3段ぐらい上に乗せてしかも最終的に回ったりする。異次元のすごさ。見ている方は「すごい!」しか言えなくなるんだけどそれもまた良さのひとつだと思う。演者さんが手を広げたりヤッと掛け声をかけたりして、「はい、ここで拍手」というタイミングを作ってくれるのでただひたすら「すごーい!」って拍手で応えていればよい。演者さんの異次元級の集中力とは裏腹に、ものすごく気楽で誰でも楽しめる芸なのだ。
落語を聞きながらちょっと集中力を欠くと「ここ笑うとこだった?」「笑わないと意味が分かってないと思われるかな?」なんて考えてしまうことがある。「意味がわかってないと思われる」なんてのは過剰な自意識が生み出した幻でしかないのだけど、「ツウ」ではない私などはどこか引け目があることも確かだ。そんなアウェーな気持ちを掛け声と拍手の一体感でホームにしてくれるのが大神楽なのかなと思う。