見出し画像

【使ってみた】宇宙きぶんはどんな気分?宇宙シャンプーのレビュー


前置き

風呂に入るのは面倒くさいが、せめて髪のべたつきくらいはどうにかしたい。そんなものぐさのための道具はないものかとたまに思案する。

すると、あるではないか。花王が限定販売していた「宇宙きぶん」が。

本製品は宇宙飛行士が水・アルコールの使用が制限される中で、サッパリして欲しいというコンセプトで開発され、実際に「3D Space Shampoo Sheet」という名前で若田宇宙飛行士が国際宇宙ステーションで使用した実績がある。

「宇宙きぶん」自体は一般向けに販売するために、デザインをあしらったものになる。

使用した感触は次の通り。

「お風呂やシャワーのない宇宙ステーションでも本当にすっきりするなという感じがします。凹凸が付いていてマッサージをするように汚れをふき取ることができるので、本当に根元からすっきりするという感じですね。とても爽快な感じが残ります。」
宇宙航空研究開発機構 宇宙飛行士 若田光一
引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000260.000070897.html

また、ワールドビジネスサテライトやJ-SPARCの動画のレビューを見る限り、整髪料も取れるし、似たような感想のようだ。

とはいえ、お茶の間向けの感想だなぁとも思ったので、公共電波で喋りづらい検証をしてみることにした。既に使用例として山登り・体調不良時の風呂の代替があるらしい[1]。

参考文献
[1] https://note.com/kao_creative_pkg/n/n8772e77d6573

宇宙飛行士の洗髪事情

そもそも、なぜ「宇宙きぶん」が開発されるに至ったのか。軽く歴史から振り返る。開発経緯の詳細は既にインタビュー記事があるので、そちらを参照されたし。

本製品の開発以前のシャンプーは「髪に水をたっぷり含ませて、リンス不要のシャンプーを付けてゴシゴシ洗う。洗髪後は櫛ですいて、汚れをタオルで拭う[2]」。微小重力環境では液体が飛散しやすく、タオルで巻き取るなど注意を払う必要があるため、実際かなり大変。

なお、地上の洗髪に要する水は女性平均24L/回、男性平均11L/回に対して、国際宇宙ステーション(ISS)で使用可能な水は食事含めて3L/日[3]。少ない水でもさっぱりするそうだが、地上でシャワーを浴びるほどではないはずだ。

水はかなり貴重なので、使用した水や蒸散した水分は空調設備が回収して飲用水に再利用しているほど。

参考文献
[2] https://iss.jaxa.jp/iss/jaxa_exp/kanai/blog/2018/02/02.html
[3]
 https://www.mitsubishielectric.co.jp/me/dspace/column/c2304_1.html

開発経緯

元々、花王は個の深い悩みに焦点をあてて満足度を高める「N=1(エヌワン)起点のサービス開発」を実施していたり、研究者に自由な研究時間を与えて新たなアイデアの創出を促進している。そこで生まれたアイデアをオープンイノベーション・プラットフォーム「ファンテック Lab&Biz」にてビジネス化する取り組みや文化がある。

そこで研究者から「誰も取り残さないための頭皮と髪の清潔インフラをつくりたい」というアイデアから派生したのが、「宇宙きぶん」もとい「3D Space Shampoo Sheet」である。[4]

前章で述べた煩わしい洗髪ではなく、宇宙飛行士がより簡便に快適に洗髪できる未来を見据えたのである。マイノリティの声を拾いたいという思いが実を結んだ事例の一つともいえる。

ただし、そこで終わることなくビジネス化に向けて動いたのが別のお話。小ロットかつECで数量限定販売にすることで、スピーディーに反響や市場価値を分析を行い、今後の商品開発に生かす姿勢があってこそ、本製品の完成に至るわけである。

では、周辺の話も交えながら、製品をつぶさに見ていこう。

参考文献
[4]https://r25.jp/article/1182874282566547837

宇宙きぶんをつぶさに見てみる

デザイン

元々は宇宙飛行士が使うようなので、非常にシンプルな包装だったが、一般向けに「わくわく」するようなデザインとしている。アポロオレンジが映えますね。

蓋を開けてみると地球を背景に「ようこそ、宇宙きぶんへ」の文字が。シンプルだが、ゲームの導入かのようなわくわく感がある。表紙の裏には商品説明があるのだが、それはまたあとで。

細かいことを気にするなら、この地球は高度kmから見た地球なのだろうか。低軌道にしては遠い気がする。

更にめくると、利用シーンのイメージ図が。アポロオレンジを使っているからか、サターンV?のイラストが随所にみられる。

また、月を見ながらゆったりと使う様子が描かれており、「宇宙と地球をつなげる」という開発陣の発言[1]が見事に反映されている。

個人的な趣味だが、パッケージの女の子(名前:TIERRA、スペイン語で地球)かわいいなぁって思いました、紫orピンクの髪色が素敵。設定はデザインの紹介記事[1]にある。

製品が入っているパッケージは下記の通り、ほんとは6種あるのだが、人にあげてしまった。

デザイン自体は表紙や箱と基本同じだが、使うときのわくわく感自体は箱と袋では違ってくるので、普通に嬉しい。

参考文献
[1]https://note.com/kao_creative_pkg/n/n8772e77d6573

表面

実際に開封して肌ざわりなどを確かめてみる。

開けたらコスモフローラルの香りが意外としなかった。成分が飛ばないように圧力をかけないと漏れないようになっているっぽい。よくよく香りを嗅いでやっとそれっぽい香りが。

触ってみると湿っているが、べたつくことはなかった。濡れた厚紙を触ってる気分だが、知らずに渡されるとちょっと驚く。

実際、講演で小学生の子に触ってもらった時、「湿ってる...(困惑)」というつぶやきがあった。まぁ、濡れてるようには見えないし、気持ちはわかる。

本体は厚めの不織布で把持するための切れ込みが入れてあり、下敷きのようにペコペコする感じだった。材料はマスクと同じだけど、厚いので独特の感触ともいえる。手を差し込むだけで使える非常に簡単なつくりをしている。

表面を拡大してみると頂点が丸い三角柱のような突起が計21個ついている。雑に拭くだけでもまんべんなく浸透するように配置が工夫されているとのこと。突起自体もまぁまぁ硬く、普通に使う限りならつぶれない設計になってる。根元まで活用しきれるのかな?

割とじっくり見たけど各突起は同じように見える。頂点の曲率や位置とか微妙に違ったりするのかな。

また、ザックリとした説明は表紙裏に書いてある。水・タオル・ドライヤー不要なのが売り。しかも、液漏れしないで、肌触りもこだわったとのこと。

裏面

裏面は手が触れる部分だからか、やや表面と違う。不織布の目の粗さが目に見える程度に異なる。表はサラサラだが、裏は繊維が見える程度には粗い。

これが意図した設計なのか材料によるものかは不明だが、突起も裏面と同じ程度の粗さに見えるので、手の汚れもついでに取ろうとしてるのか、滑らないようにしているのか。色々考えようがある。

なんか勿体ない気がしたので、突起をつぶして裏返して使えないか試してみたが、手がいい香りになるだけで無理だった。しかし、裏側も上手に使えないかは考える余地はありそう。

成分

成分は「水、PEG-60水添ヒマシ油、ラウレス-9、コハク酸、水酸化カリウム、EDTA-2Na、安息香酸Na、香料」らしい。門外漢だが、調べてみる。

・水
意外と水が主成分だったのには驚いた。べたつかないのも、水が主体だからだろうか。

・PEG-60水添ヒマシ油
植物由来のヒマシ油に水素を添加し、参加エチレンを付加重合した非イオン性界面活性剤。配合目的は①親水性乳化②可溶化、①についてはボディケア・メイク製品によく使用されるそう。特に②についてはアルコールの少ない透明の水溶性基剤の中に香料や油性成分を透明かつ均一に溶かし込む目的で使用される[6]。アルコールフリーの製品らしい成分だ。

・ラウレス-9
PEG-60水添ヒマシ油と同様、非イオン性界面活性剤で、配合目的は親水性乳化[7]。

・コハク酸
うまみ成分としても知られる成分。酸性であるためpH調整や血管を縮め、肌を引き締める収れん作用を与える目的で化粧水や乳液に使用される[8]。さっぱり感の一因だったりするかも。知らんけど。

・水酸化カリウム
アルカリ性であるため、主にpH調整や石鹸合成に用いられる[9]。

・EDTA-2Na
金属イオンによるキレート作用として用いられる[10]。金属イオンが含まれたまま使うと泡立ちが悪くなったり、酸化しやすくなるため、本成分のようなキレート剤が用いられる。水を使う関係上、硬水みたいにならないようにしているのかな。

・安息香酸Na
食品関係でもよく見る成分で、防腐剤としての役割を果たす[11]。化粧品に防腐のイメージがつかないが、成分的にコハク酸とか食品に使われる成分もあるので、必要なのかも。

参考文献
[1]https://note.com/kao_creative_pkg/n/n8772e77d6573
[5]https://www.mitsubishielectric.co.jp/me/dspace/column/c2304_1.html
[6]https://cosmetic-ingredients.org/surfactants-emulsifying-agents/2066/
[7]https://cosmetic-ingredients.org/surfactants-emulsifying-agents/1452/
[8]https://cosmetic-ingredients.org/ph-adjuster/3091/
[9]https://cosmetic-ingredients.org/ph-adjuster/2488/
[10]https://cosmetic-ingredients.org/chelator/894/
[11]https://cosmetic-ingredients.org/preservatives/2810/

使ってみた

検証事項・環境・条件

まず、前提として気まぐれでやってるので、感想以上の何物でもないことを念頭に置いて欲しい。

検証事項

  • いつまで乾かず使えるか

  • 本当にさっぱりするのか(どのくらい使えば十分か)

  • 髪のオイリー感(テカテカしてるか)が拭えるか

  • かゆくならないか

  • 他に使える場所がないか

環境

  • 室温:エアコンで15~20℃を維持、そのため部屋は乾燥しがち

  • 外出をほぼしないで家で生活(3日ほど):自宅作業可能な環境持ち

  • 外出の必要上、シャワーは2日経た後に1度浴びた

  • そもそも製品を買って、11か月くらい経過している(未開封)

条件(被験者)

  • 26歳男性

  • 髪:スパイラルパーマを掛けたショート(眉毛にかかるくらい)

  • 皮膚は弱め、金属アレルギー持ち

  • 汗はそこそこかく

  • 風呂上がりに乳液、化粧水、ヘアオイルはつける

使い方

使い方は単純、指を通して頭に当てるだけ。しいて言うなら、髪の流れに沿うように拭きとる必要があるため、髪をわしゃわしゃとはできない。

個人的には豪快にわしゃわしゃしたいが、流石に髪や頭皮を痛めるのは明白なのでやめた。

1~2日目

始めに触ってみるとしっとりとしていたが、べたつくこともなく、水を含んだ厚紙を触っている気分になった。

使ううちに突起の先端が黄ばむらしい。1〜2分使用しても色が変わらなかったが、非常にさっぱりした。明らかに違うのを実感する。ただし、髪のオイリー感は拭えなかった。シャワーを浴びた後に比べると明らかではあった。(写真はない)

使った後の突起をよく見ると頂点付近で細かいごみや髪を拾っているし、潤いも全く失われていない。公式では一度で全体を使いきれる分量とあるが、まだまだ使えそうな予感。液漏れも一切しないので、良く作られている。

私は肌が弱いので成分には気を付ける方だが、全くかゆみもない。しかも、スッとしたさわやかな石鹸っぽい香り(コスモフローラル)。

難点を挙げるなら、不織布が固いので個人的には硬く痛く感じて、いい塩梅で髪を拭くのに少し慣れが必要だった。けど、それなりに当てないと拭けない気もしたので、難しかった。

注意点にも拭く力の調整は個人で異なるとあるので、優しく拭くのが最初は大事かも。

3~4日目

袋に入れてはいたが、エアコンの風に当たる場所に誤って置いてしまった。そのためか、やや表面が乾燥していたが、軽く力を掛けると水分が染み出してきたので、意外と長持ちすることが分かった。

ショートヘアに使っていたからか、割とさっぱりするし、汚れも多少落ちる。が、日に日に成分がどっかに行くので、そんな何度も使うものでもなさそうというのは体感的にわかる。

ちなみに、包装に入れたまま更に5日ほど放置したら、流石にカサカサになって流石に使えそうにはない。それでも、押してみるとフローラルな香りはする。結構持つものだ。

おまけ

貴重な品なので、使えるだけ使おうと思い、使える箇所がかないか探してみた。

もじゃもじゃの部分…

あ、股間だ。

そうだ、股間に使ってみよう。レビュー動画はいくらあっても、これをやって公開する奴はいまい。

ということで使ってみた。もちろん、文章だけで語りますとも。

イメージ図(イラストACより)

〇〇で体感した所感

使ったタイミングはシャワーを浴びて1日経過したくらい。めっちゃ汚れが取れる。宇宙きぶんがすぐに黄ばんだ。正直ビビった。トイレに行く回数はままあったので、小便の跳ね返りとか蒸れとか意識しない汚れが多く付着したのだと実感した。

がっつり使ってみて、そのまま寝てもみたが、痒くなることもなくフローラルな股間が出来上がっただけだ。むしろこっちの方が目に見えてきれいに爽快になった気がする。

更に使ってみると汚れ自体は下記写真まで取れるが、頂点付近だけ極端に汚れているので、根本までもれなく活用するには難しそう。

まじめに考えるなら、成分はともかく介護とかにもかなり役立ちそうな気がした。が、全体的に恥部を拭く場合、皮膚の伸縮性のためか、結構ブツを手で押さえないと厳しめ。

ちなみに、長期的なレビューをしようと思ったのに、一度股間に使ったことであきらめたのは想像に難くない話である。

正直に言うと、こちらの利用の方が効果は大きいかもしれない。でも、メディアに出すうえで、陰部に特化したとは言いづらい気もする。

まとめ

検証事項

  • いつまで乾かず使えるか

    • ショートヘア程度なら4日(日に一回)くらいは全然持つ

    • 袋に入れて口を閉じれば長持ちする、香りのみに着目するなら1週間以上は持つかも(製品として利用可能な状態ではないが)

    • 表面が乾燥していても、内部に浸透する液体が残っている可能性があり、更に長く使えるかも

  • 本当にさっぱりするのか(どのくらい使えば十分か)

    • 1分前後の使用でもだいぶ頭の気持ち悪さが拭えてさっぱりする

  • 髪のオイリー感(テカテカしてるか)が拭えるか

    • 鏡で見る限りテカテカしてる気がする、さっぱりはしてるので不思議な感覚

  • かゆくならないか

    • 髪や陰部で実験してみたが問題なし

    • むしろ、不織布が硬いので、皮膚が弱い人は優しく使う必要がある(注意書きにもある)

  • 他に使える場所がないか

    • 陰部は頭皮よりも汚れがちなので、介護やかゆみ・感染症防止には良いかも

忙しい時に髪だけでもさっぱりしたいときには普通に使える製品。ただ、使ってさっぱりする分、体の汚れの違和感が強調される感じもするので、体全体の掃除もセットで使った方がいいかも。

いずれにせよ、つぶさに見て体験することで得られたものは結構多い気がする。

詳しく知りたい人向け

関連する資料を面倒なので全部のせ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?