[Re:] Re-try; オールドレンズの楽しみ -- (4) Zeiss社 Biotar 58mm --
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[Re:] Re-try;少年の頃、大好きだったこと -- オールドレンズの楽しみ --
第5回目の投稿です。前回 Yashinon DX 50mm の楽しみを投稿してから随分時間が経ちました。今回は、老舗中の老舗、Zeiss社製のレンズに挑戦したのですが、相手が巨匠故、写真選び、言葉選びに予想外に時間を費やしてしまいました。
取り上げるのレンズは、Zeiss社の Biotar 58mm f2.0。Carl Zeiss 社(カール・ツァイス) は1846年創業の老舗。第二次世界大戦後、ドイツの東西分割で会社も分断され商標をめぐって国際司法裁判所で争ったりもしました。
今回は、東ドイツのカール・ツァイス・イエナ (Carl Zeiss Jena) 製レンズ。アルミ製の鏡筒が美しいです。黒のカメラボディーに銀色の鏡筒、意外に格好良く見えるんです。
弾け飛ぶバブルボケ
Biotar 58mm f2.0 @神代植物公園 (2021年8月)
このレンズ、何と言ってもバブルボケからはじめなければなりません。後ろに配置したピンク色の薔薇や薔薇の葉に反射する太陽光が点光源となってバブルボケが弾け飛んでいます。周辺に向かうに連れ、バブルの形は円周方向に延びる楕円となり、バブルが中心に向かって渦を巻いて引き込まれていくように見えます。
このぐるぐる渦巻状のバブルボケは非点収差の補正が甘いからですが、この個性、味、魅力をどう活かして写真を撮るか を考える。これがオールドレンズを使うときの私の楽しみです。
Biotar 58mm f2.0 @立川市 昭和記念公園 (2021年9月)
さて、バブルが弾け飛び、時に背景が煩すぎるこのレンズも、光線の向きと背景を選ぶとグラデーションの綺麗な落ち着いた写真になります。この写真は背景から葉っぱの反射光が入らないようにして、白とピンクのコスモスを被写体の周りに配置して撮影しました。
背景の柔らかさは狙い通り。一方、全体に暖系色が乗っているためか緑の鮮やかさが少し失せて残念でした。もう少し軽やかなパステル色が豊かな写真を狙っていたのですが。まぁ、もう少し腕を上げて今後の課題です。
Biotar 58mm f2.0 @JR新橋駅 高架橋下 (2021年9月、この写真はAdobe Light Room でシャドウ部を暗く、ハイライト部を明るくする補正を加えました)
ピントの合焦面はキリッとして、周辺のボケと相まって立体感のある写真に仕上がりました。暖系色が乗るのはこのレンズの特色ですね。
意図した訳ではありませんが、バブルの形を確かめられる写真になりました。ご覧の通り周辺部に行くに従って、円周方向に伸びた楕円形になっているのが分かります。楕円というより扁平したレンズみたいですね。このバブルの形の変化が、ぐるぐる渦巻きを想起させます。
Biotar 58mm f2.0 @井の頭公園 (2021年8月)
真夏、太陽光が道端の葉っぱに反射してギラギラと輝いて、この無数の点光源をバブルボケにしてみたいという意図で、どんなのが撮れるのだろうと数種類のオールドレンズで試してみました (Yashinon DX 50mm f1.7 で撮影した写真はこちらから確認できます)。
バブルが多すぎて逆に印象が薄れてしまい、ぐるぐる渦巻きも辛うじて認識できるレベルの写真ですが、私には大いなる可能性を感じさせてくれました。露出に注意して、あるいは、Adobe の力を借りれば、とても印象的な写真に仕上がるのではないかと。
被写体が浮き上がるこの立体感
Biotar 58mm f2.0 @コピス吉祥寺 (2021年9月)
開放 f2.0からピント合焦面はキリッとしています。背景のボケが煩くならないように選んで、紫色の花がポッと浮かんだような立体感が表現できました。ピントの山を掴むのはそんなに難しくないレンズです。
Biotar 58mm f2.0 @吉祥寺 中通り商店街 (2021年9月)
葉脈の線が太く力強く写り、葉っぱのエッジも立っています。これが立体感を表すのに寄与しているのでしょうか。
Biotar 58mm f2.0 @吉祥寺 中通り商店街 (2021年9月)
立体感。私の中では『被写体がホッと浮かぶ』みたいな極めて曖昧な表現で理解しているのですが、これに色々調べたことを加えて、私なりに文書化してみました。あくまで私見と言うことでご理解ください。
『色や形状の変化が大きい領域 (被写体と背景の際、構造物のエッジ、細かい構造物が写し込まれている領域など) をどれだけ緻密に再現できるか、また、その領域とぼかした背景のように変化の小さい領域との差異を再現できるか』で立体感が決まるのと思われます。特に私は後者を大切にしたいと思います。
立体感の定量化は取り組んでみても面白いかな。
ここまで整理して、改めて上の写真を見てみると、、まずまずの出来具合です。もっとピントに拘らないといけませんね。
こってりとした色のり
Biotar 58mm f2.0 @JR有楽町駅、東京交通会館の前 (2021年9月)
ご覧の通りこってりとした色彩が表現されます。実物は、定性的かつ情緒的表現ですが、もう少しさっぱりした感じ、赤はもう少しマゼンタより、白はもっと白でした。暖系の色が乗ってこってり感が増幅されたように見えます。
しかし、不思議ですねー。これはこれで納得できるんです。流行の Food Track なのにどこか懐かしい。『オールドレンズだからノスタルジックな写真が撮れるハズ』と言う心理的バイアスか、、。 ともかく好きな写真です。
Biotar 58mm f2.0 @JR吉祥寺駅付近ハモニカ横丁 (2021年8月)
ここはオールドレンズのボケ、色乗り、色合い、合焦面の具合を確かめるための私の定番の写真スポットです。奥側のグラスに焦点を合わせてみました。前ボケも綺麗ですね。何種類もある赤が識別できるこの再現力は凄いと思います。
やはり暖系色の色が、この写真では茶色が乗っています。もともと昭和の雰囲気を漂わせるこのハモニカ横丁、オールドレンズで撮るとその個性で一層ノスタルジックに写ります。
ちなみにオールドレンズを楽しむときはいつもAWB (Auto White Balance mode) で撮ります。レンズの色味は補正されてしまうのでしょうか? それも含めて、色乗り、色味の違いとは、何ぞや をレンズの仕様に紐づけられたら面白いですね。
オレンジ色〜茶色の発色が生み出すノスタルジー
Biotar 58mm f2.0 @JR有楽町駅 YURAKUCHO Concourse (2021年8月)
雨の日はいいですね。傘がアクセントになって。壁には黄色から茶色にかけた色が乗っていて、奥側には緑の信号で照らされた道路やガラスが、この一枚に見事に再現されています。落ち着いた美しさです。
Biotar 58mm f2.0 @JR秋葉原駅 京浜東北線高架下のSeek Base にある中古カメラ 2ns BASE (2021年9月)
いつも AWB (Auto White Balance mode) で撮影するのですが、もしかして、このモードでは色の個性がキャンセルされてしまうのではないか? そう思ったらカメラボディーも AWB 機能非搭載のカメラを使ってみたくなりました。
書棚で眠っていた Canon FTb を引っ張り出してチャレンジします。で、露出計の復活と標準50mmレンズが欲しくて、ここ2nd BASEへ。とても渋いショウケースを Biotar で撮ってみました。
Biotar 58mm f5.6 @吉祥寺 中通り商店街 (2021年9月)
明暗のはっきり分かれたシーンです。ハイライト部には黄色が乗って、そのノスタルジー感がいいですね。ところで、このレンズの特徴をもう一つ。シャドウ部分にしっかりと階調が残って再現されています。黒潰れしにくいレンズです。
茶色が得意なこのレンズ
暖系色の色乗りが生み出すノスタルジー、このレンズ、そもそも、黄色〜オレンジ色〜茶色の発色が優れているのでしょう。様々な『茶色』の再現力に目を見張りました。
Biotar 58mm f2.0 @吉祥寺 プチロード (2021年9月)
Biotar 58mm f2.0 @吉祥寺 中通り商店街 (2021年9月)
Biotar 58mm f2.0 @マロニエ通り (2021年8月)
ますますオールドレンズの虜に
ここまで読んでいただき、ありがとうございます
Biotar 58mm f2.0 のレポート、いかがでしたでしょうか?
立体感を極めて主観的ではありますが、書き下してみました。立体感とレンズのスペック、もう少し調べてみたいと思います。
色乗り、色味とレンズのスペックや AWB との関係も気になるところです。さらに、この先フィルムカメラに踏み込んでいったら、、、もう泥沼だぁ。
さて、次回のレンズは何にしよう。
Schneider社製 Xenar 50mm f2.8 はどうかな。
Xenar 50mm f2.8 @キラキラ橘商店街 (2021年7月)
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