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【芸術の島】
芸術の島。
それは、瀬戸内海に点在している。
瀬戸内国際芸術祭は、2010年から3年毎に開催されている、瀬戸内海の島々を舞台に開催される現代美術の国際芸術祭である。
瀬戸内海には、直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島、沙弥島、本島、高見島、粟島、伊吹島など、大小様々な島が浮かんでいる。
上記に加え、高松港周辺、宇野港周辺も、瀬戸内国際芸術祭に含まれていて、島のあちこちに、アート作品が、自然と調和するように展示されている。
中でも有名なのが、直島の地中美術館。
地中美術館は、安藤忠雄さんの建築で、その名の通り、地中に建てられた美術館である。
コンクリート、鉄、ガラス、木を使用し、デザインを極限まで切りつめて設計されている。
無機質なのに、どこか温もりを感じる。
館内には、クロード・モネ、ジェームズ・タレル、ウォルター・デ・マリアの作品が恒久設置されている。
その他にも、直島には、李禹煥美術館やベネッセハウス ミュージアム、それに家プロジェクトなど、1日では全部見て回れないほど、たくさんのアート作品が公開されていた。
これらの作品は、瀬戸内国際芸術祭の期間以外でも見ることができる。
直島は、ヨーロッパでも人気が高く、たくさんの観光客がやってくる。
とくに瀬戸内国際芸術祭の期間中は、フェリーが満席で席が取れないほどの盛況ぶりだ。
直島に向かうフェリーの中で、僕は宿の予約の電話をした。
急遽スケジュールが空いたので、突然決めた旅だったからだ。
なんとかフェリーに乗ることはできたが、宿はどこもいっぱいで、予約が取れない。
このままでは、野宿をすることになる。
そんな不安が頭をよぎった時に、一軒のゲストハウスに電話が繋がった。
ベッドが一つだけ空いているらしい。
ゲストハウスというのは、素泊まりの民宿のような宿泊施設で、一部屋に二段ベットがいくつかあり、それぞれのベッドは、薄いカーテンで仕切られている。
僕はそれまでゲストハウスに宿泊したことがなかったので、正直抵抗感があった。
でも、野宿するよりはマシだと思い、そこに泊まることにした。
芸術の島ということもあり、宿泊客は芸大生や美大生、それに工業デザイナーなど、アーティスト気質な人が多く、すぐに打ち解けることができた。
みんなで酒を飲み、旅について語り合う。
こんなにも楽しい時間があったのか!
それから、一人旅をする時は、ゲストハウスに泊まるようになった。
一人旅の魅力は、自由と出会いだ。
この旅で、僕の旅の世界が大きく広がった。
翌日、昨日出会ったばかりの宿泊客数人で、豊島へ移動した。
豊島は直島よりも自然に囲まれていて、より一層自然とアートの調和を感じることができる島だ。
豊島美術館、心臓音のアーカイブ、横尾美術館など、豊島にも絶対に見て、いや、感じてもらいたいアートがたくさんある。
僕が今まで行った中で、一番好きな美術館が豊島美術館である。
豊島美術館や地中美術館は、作品だけではなく、空間を感じるアート。
僕の中の美術館の既成概念を破壊してくれた。
豊島美術館は、まるで母親の胎内にいるような、宇宙空間にいるような、無機質なのに、命の誕生を感じるような不思議な空間である。
訪れた人にしかわからない空間。
アートに触れたくなった時、僕は芸術の島々に足を運ぶようにしている。