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【湖上に浮かぶ島】
琵琶湖の中に、4つの島があることをご存知だろうか?
僕は関西で生まれ育ったが、大人になるまで、琵琶湖の中に島があるなんて知らなかった。
しかもその中の一つ、竹生島は国の名勝および史跡に指定されている。
竹生島は、滋賀県長浜市の湖岸からおよそ6kmに位置し、周囲2km、面積0.14平方kmの小さな島である。
この小さな島には、西国三十三所札所めぐり第三十番札所の宝厳寺があり、島全体がパワースポットになっている。
この宝厳寺に祀られているのは弁財天で、弁天様は交通安全・開運厄除だけでなく、芸能の神様としても有名である。
江ノ島と宮島とならんで「日本三大弁天」の一つとされている。
この島のことを知ってから、役者として芸能に関わる人間として、一度は必ずこの島を訪れたいと思っていた。
宝厳寺は由緒古く、神亀元年(724年)、聖武天皇が夢枕に立った天照皇大神(アマテラスオオミカミ)からのお告げによって建てたものだとされている。
竹生島には、宝厳寺以外にもう一つ、神社がある。
都久夫須麻神社で、竹生島神社ともよばれている。
この神社も祀っているのは、弁財天。
まさに、芸能の島である。
船着場からこの島に降り立った瞬間、僕の身体を神聖な空気が包み込んだ。
芸能の神が、僕を迎え入れてくれているようだった。
小さな島なので、1時間もあれば、全部の場所を見て回ることができる。
帰りのフェリーまで時間にゆとりがあったので、芸能の神とゆったりと心穏やかに心の中で会話を交わした。
目を閉じて、弁財天の声に耳を傾けていると、大きな汽笛が会話を遮った。
目を開けると、帰りのフェリーが出港していた。
次のフェリーがやってくるのは、90分後。
もう何も弁財天と話すこともなくなり、倦怠期のカップルのように、気まずい空気が流れ続けた。