【ノクターナル・アニマルズ】
脳ではなく、感性に語りかけてくる映画。
まるで、美しい死体を観ているようだった。
監督は、グッチやイヴ サンローランを手掛けた、ファッションデザイナーのトム・フォード。
オースティン・ライトの小説「ミステリ原稿」が原作。
リッチな生活を送る主人公と彼女の元夫が書いた過激な小説の世界がリンクしていく。
主人公を演じるのは、エイミー・アダムス。
眠ることも、愛されることもない、夜の獣。
美しく着飾る主人公が、美しい死体のようだった。
近代アートと荒野のコントラストが美しく、心が騒つく。
煌びやかであればあるほど、空虚に思えてくる。
共演は、いま一番注目している役者、ジェイク・ギレンホール。
ギレンホールの演技には、気迫を感じる。
愛なのか、復讐なのか。
心の奥底にしまい込んだ、過去の恋愛がフラッシュバックした。
切ない復讐。
今年のアカデミー賞を獲得した『パラサイト』とは、また違った意味での消せない匂いが、主人公には纏わりついていた。
自分が出演するなら、マイケル・シャノンが演じた、刑事役をやってみたい。
鋭い眼光と、含みのある演技。
正義感と、排他的な雰囲気を併せ持ち、危険な香りがする演技が、この映画をより面白くしていた。
そしてもう一人、絶対に欠かせないのが、この映画でゴールデングローブ賞の助演男優賞を受賞した、アーロン・テイラー=ジョンソン。
彼の狂気が、この映画の世界観を作り上げていた。
もし日本人の俳優が演じるなら、窪塚洋介さんのような雰囲気。
整ったマスクと、狂気を併せ持つ俳優。
この4人が織りなす、空虚で美しい世界。
心に鮮烈に残る。
衝撃のオープニングで始まり、エイミー・アダムスの表情で幕を閉じる。