マウスピースバズィングに関する2つの立場
(旧サイトの「オンラインレッスン」のコラム記事のアーカイブです。2017-08-15の記事です。)
「マウスピースで曲の全ての音を吹けるように」という立場から、「マウスピースの練習など要らない」という立場まで、それが世界トップレベルのトランペット奏者たちの間でさえ意見が分かれる、マウスピースバズィング。
生徒は混乱することの多いトピックと言えます。
2つの立場の実演
まず動画では、2つの立場を手短に実演しています(ペダルBからハイBまでを使って)。
<前半>
楽器で鳴る→外すとマウスピースは鳴っていない、楽器をつけるとまた鳴る、の実演
(楽器込みでバランスをとる)
<後半>
マウスピースでバズ→楽器をつけると鳴る、の実演
(マウスピースまででバランスをとる)
事実としては、動画の通り、同一人物でも両方できます。
しかしながら、息や唇の状態は異なると言えます。
ではそれぞれの違いを簡単にみていきましょう。
■前者:楽器を含めた全体でバランスをとる
マウスピースだけではなく楽器をも含めた物理的状況で、音が発生するバランスをとっています。
マウスピースまででバランスを完結させているのではないため、マウスピースだけでは、息が通過していくのみで、音(振動)は起きません。楽器を含めた状態ではじめて振動あるいは共鳴が起きます。
■後者:マウスピースまででバランスを完結
マウスピースまでで、音が発生するバランスをとっています。「楽器は単なる拡声器だ」という考え方です。
マウスピースまでで振動を作り、楽器は基本的にそこに介入していません。
どちらが「正しい」のか??
楽器で演奏する、楽器での演奏が目的である(マウスピースでの演奏が目的なのではない)、ということが前提である限り、前者後者どちらでも楽器で音は生まれ演奏が可能である以上、どちらが正解、という内容とは言えないと私は考えます。
「マウスピースで出ない音は楽器では出ない」は必ずしも正しいわけではありませんし、一方で、「マウスピースで音が出れば楽器で出る」は正しいとも言えます。
ただし、前者と後者では、音の発生(sound/tone productionと英語では言われる部分)についてのバランス(特に息や唇)は異なりますから、最終的には、これについてどのように考え、どのようなバランスで捉えるか、どちらが自分の求める演奏を可能にするのか、という個人の選択になるのではないでしょうか。
おそらく健康的な考え方は、どちらかだけを肯定するのではなく、まずはどちらも事実上あり得るという事を受け入れ、その上で、それぞれの違いを理解し、自分の選択をする、ということだと私は考えます。
個人的に私自身は、前者のように、楽器まで全体でバランスをとるようにしています。
(補足をすれば、マウスピースバズィングを行う立場の人々の中にも、ウォームアップの意味のみで限定的に行う人、マウスピースバズィングの時の唇の状態より楽器につけた時の方が唇は緩むという前提のもとで負荷の高い練習法としてマウスピースバズィングを行う人、音程感覚のために行う人、など、実に様々な立場があります。)
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