ダブルバズ(ドッペル)に関する一見解

(旧サイトの「オンラインレッスン」のコラム記事のアーカイブです。2017-06-02の記事です。)

「ダブルバズ」、「ドッペル」等と呼ばれている現象に悩む方は一定数いらっしゃるのではないかと思います。

意図しない高さのピッチも同時に鳴ってしまったり、汚い振動が同時に鳴ってしまったり、というような、「ダブルバズ」または「ドッペル」などと呼ばれている現象。

まず、次の動画をご覧いただければと思いますが、この動画では、ダブルバズを意図的に起こしたり消したりを繰り返してみました。いくつかの音の高さでそれをしています。

なぜダブルバズは起きるのか?

さて、なぜダブルバズは起きてしまうのでしょうか。
これについても様々な意見が存在していると思いますが、ここでは、私の一見解を書いてみたいと思います。

私の見解は、ダブルバズの主な原因は、息の「流れ」の不足である、というものです(息の「量」と「流れ」を私は区別して捉えています。これについては後述)。そして息の流れの不足に伴い、唇が潰れざるを得ない(唇が柔軟でフリーな状態では振動が成り立たないバランスになっている)・喉が締まらざるを得ない状態になり、ダブルバズは起きる、と考えています。

先ほどの動画では、どのようにしてダブルバズを起こしたり消したりしていたかと言うと、その方法は単純に、息の流れを不足させたり元に戻したりしながら、というものです。息の流れを不足させれば、唇はつぶれ、喉は締まりがちになり、ダブルバズは起きます。そして息の流れを充分にしてやれば、ダブルバズは消えます。
唇や喉その他の部分は意図的には全く変えていません。息の状態によって、それらは影響され状態は変わりますが、あくまで影響される受け身の側であるということの理解は重要であろうと思います。

息の「量」と「流れ」の区別

では、その息の「流れ」とは一体どのようなことを言っているのか、ということが疑問になるかと思いますが、特にこのトピックにおいては示唆を含むだろうと思うのは、息の「量」と「流れ」を区別してみるということです。
息の量が少なくても、流れが充分であれば、ダブルバズは起きないでしょう。
一方で、息の量が多くても、流れが不足していると、ダブルバズは起きるでしょう。

以下の動画では、スピロメーターという器具を使って、このことを実演しています。
スピロメーターは、息の流れが充分だと白いボールが上がる仕組みになっています。

■息の「量」が多いことは同じながら、息の「流れ」が充分な状態と息の「流れ」が乏しい状態の比較

息は比較的豊かな量を吐き出しながら、ボールが上がる状態と、ボールが上がらない状態との比較です。
どちらも息の量としては普通に吐き出していますが、流れがありボールが上がる状態と、流れが乏しくボールが上がらない状態とがあります。

■息の「量」が少ないことは同じながら、息の「流れ」が充分な状態と息の「流れ」が乏しい状態の比較

息の量としては少なめにし、ボールが上がる状態と、ボールが上がらない状態との比較です。
どちらも息の量としては少なく吐き出していますが、流れがありボールが上がる状態と、流れが乏しくボールが上がらない状態とがあります。

以上の比較によって、「量」と「流れ」が異なる意味であることはご理解いただけたでしょうか。

続いて、次の比較によって、「量」が変わっても「流れ」は存在し得ることを示してみたいと思います。

■息の「量」を変えながら、しかし息の「流れ」は保たれている状態

息の量は、1)多い 2)普通 3)少ないという順で減らしていきながら、しかしボールは上がり続け、流れは保たれている状態の実演です。

このように、私は、息の「量」と息の「流れ」とを区別して理解しており、一般に音の発生に関する諸問題は、「量」による問題ではなく、「流れ」による問題が大半であろうと考えています。
ダブルバズに関しては、流れが乏しい場合にそれが起きてしまうと私は考えます。

もちろん、マウスピースの大きさ等が原因と考えられるケースもあると思います。
しかしながら、最初の動画で示した通り、同じ人間が全く同じマウスピースを使っていても、ダブルバズは起きたり消えたりさせることができるものであることから、必ずしも道具が問題とは言えません。根本的な原因としてはまず息の流れについて見直してみる、そしてそれによって唇や喉のバランスが変わっていく、ということを検討する価値はあるのではないでしょうか。
その上で、息の状態が良いにも関わらずダブルバズが発生してしまう、ということであれば、マウスピースが小さすぎる、などの可能性を疑うことができるでしょう。

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