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具体と抽象をうまく使い分けることで、日常生活や仕事での会話が円滑になる

日常生活や仕事において、具体と抽象が噛み合わないことが原因で、勘違いや認識のズレ、口論が生まれる状況に遭遇することがあります。

たとえば、健康について「規則正しい生活が健康に良いよ。酒とタバコはほどほどにね。」といった一般的かつ抽象的な意見に、「不規則な生活でも元気な人はいる。祖父は大酒のみでヘビースモーカーだったけど100歳まで生きたよ。」と具体的な事例で反論されるケース。

別の例では、投資談義で「個別株投資はリスクが高いから、企業分析が苦手なら分散の効いたインデックス投資のほうがいいよ。」という抽象的な一般論に対し、「でも、個別株で1億円稼いだ人もいるよ。」と特定の具体例で返される状況。

どちらも、よくある会話のやり取りではあるのですが、話の具体度、または抽象度のレベル感が一致しないまま、各々が主張をえんえんと続けると、議論はまったく噛み合わず平行線をたどることになります。ただし、利害関係のないプライベートな場面では特に問題にならず、ただの議論好き、話好きということで、笑って済まされることもあるでしょう。

しかし、職場で噛み合わない議論を繰り返していると、個人の評判、他の社員との人間関係、最悪の場合は会社の業績に響き、株主や取引先など社内外のステークホルダーに影響をおよぼし兼ねません。そこで、次に職場において具体と抽象が噛み合わないコミュニケーションの例を見てみましょう。

仕事における具体と抽象のズレの問題

業務上、具体と抽象のズレが起きる典型的なケースは、一般社員が具体的な事象をそのままマネジメント層に報告してしまう場合です。

たとえば、ある担当者が「月次決算のプロセスで作業ミスが発生しました。売上データが漏れていて、それを修正するために2日間かかりました」といった具体的な事象をそのままマネジメントに伝えようとする状況です。

しかし、マネジメント層にとって重要なのは、「ミスが発生した原因は何か」「それにより影響は何か」「いかに素早く解決するか」「どうすれば再発を防げるか」といったより抽象化された「問題と解決策」です。

このような状況では、具体的な起きた事象を単に羅列するだけではなく、それを抽象化して全体像を整理する力が求められます。自分が会社組織にいた頃は「マネジメント層の立場になり、全体感を意識して、報告内容を考えよう」とよくチームメンバーに伝えていました。

とはいうものの、抽象的な思考は人によっては、訓練が必要であり、習得が難しいスキルでもあります。

抽象のリテラシーを高める学びの難しさ

チームメンバーの具体と抽象リテラシーの向上のため、以下の本を紹介したことがあります。

この本は、具体と抽象の違いをわかりやすく解説し、それらを行き来するスキルの重要性を説いています。私がこの本を読んで気付かされたのが、人によっては「抽象」の概念をまったく理解できないということです。抽象的な思考は、具体的な個別の事象と異なり、より概念的で「目に見えない」からだそうです。

実際に、当時の私のチームメンバーの中には「読んだけれども内容を理解するのが難しく、イメージが湧かなかった部分がある。」といったフィードバックをくれる人もいました。そこで、抽象的な思考を養うために、実際に職場で実践を通して具体と抽象のトレーニングをしてみました。

たとえば、「発生した個別の問題をマネジメント層に報告する際に、どのような抽象化が必要か」を考えてもらった上で、1枚のプレゼンスライドにまとめてもらいます。限られたスペースに直面している複雑な問題を抽象化して本質だけを抜き出してまとめます。これを何度か繰り返すことで、見えなかった「抽象の思考」が見えるようになり、よりハイレベルなマネジメント視点で報告することができるようになるのです。

実際に、私も当時のチームメンバーに「何が起きたか、原因は何か、影響は何か、短期的にどう解決するか、長期的にどう回避するか」をスライド1枚にまとめて、10分後に再度報告してくれるよう、伝えました。最初のうちは、1時間かけても、問題をうまく抽象化して1枚のスライドにまとめられません。しかし、その後、毎日のように経験を積み重ねると徐々に30分、15分、10分と短い時間でスライドにまとめられるようになり、具体と抽象のリテラシーが向上していきました。

チャットやメールでのズレの解消法

仕事のメールで感情的な言い合いのラリーを目にしたことはありませんか。いくつもの具体の事象と抽象論の書かれたメールの応酬。

このような文章のやりとりによる口論はお互いの時間も労力も浪費することになります。よって、議論が噛み合わなさそうと感じたら、文章での反論は一旦控えることをお勧めします。代わりに、対面での話し合いを提案しましょう。

理由は自身の経験上、対面で話し合い、論点の具体度と抽象度を調整すれば、ものの数分でお互いの誤解が解け、分かり合えることが多いからです。

さいごに

具体と抽象を行き来しながら、話の粒度を調整する能力は人間関係を良好に保つためにのスキルと言えるでしょう。具体的な話を抽象化し、抽象的な一般論を具体的な例に落とし込む訓練を積むことで、不要な口論や認識のズレを減らすことができます。先にご紹介した本に加え、より噛み砕いて書かれた以下の本もわかりやすくてオススメです。

また、メールなど文章のやり取りで、議論のズレを感じたら反論を保留し、直接会って話し、具体度と抽象度のレベル調整をすることで、感情的なメールのやり取りを回避できます。

以上になります。今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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Satoshi
ありがとうございます😄