選択肢をもつことの価値を過小評価しない
「選択肢の価値」を常に意識しています。この考え方の背景には金融の「オプション価値(Option Value)」という概念があります。例えば、株式市場で特定の金額で株を「買う権利」や「売る権利」を購入したり売却することができます。権利を買っておくことで選択肢を増やし、リスクヘッジをすることになります。
これは日常生活でも応用できます。選択肢を持つことには、大抵の場合はなんらかのコストや犠牲が伴いますが、不確実な未来に対峙する際には便利なツールになります。
家を買うか、賃貸に住むか
たとえば、家を買うべきか、賃貸を選ぶべきかというのは、多くの人にとって大きな決断ですよね。購入すれば資産になるし、居住空間を自分の好きな内装やデザインにすることで住まいへの愛着も深まります。一方で、購入にはリスクも伴います。例えば、転勤や家族構成の変化などライフスタイルが変わった時に、簡単に住み替えることができない可能性があります。家を買うという選択は、ある意味「柔軟性を狭める選択」と言えます。
一方、賃貸はどうでしょうか?自分の資産にならない他人が所有する不動産に対して、毎月家賃を払う必要があります。ただし、その分、ライフスタイルの変化に対して、柔軟に対応することができます。言いかえると、家賃は掛け捨ての保険のようなものです。ここで重要なのは、自分にとっての「柔軟性の価値」をどう評価するか。
個人的には所有も賃貸も両方経験しています。若い頃に最初に結婚した時に家を購入しましたが、しばらくして離婚した際に手放しました。仕事で忙しい最中、家を売却する手間に辟易したことと、仕事でその後、国内外へ転勤する可能性があることから、柔軟性を考慮し、その後はずっと賃貸です。歳をとった今でも、未来への不確実性を考えると、選択肢を手放さない賃貸が便利で魅力を感じています。
旅行の計画:柔軟性とコストのバランス
旅行でも選択肢の価値を意識する場面があります。例えば、宿泊予約がこれに当てはまります。最近、星野リゾートが経営するホテルに宿泊することが多いのですが、ここでも「選択肢」の関門があります。星野リゾートでは、宿泊日から90日前に予約する際に、通常価格より20%ほどディスカウントしたプランを選択することが可能です。とても魅力的です。しかし、実はこのプランには「キャンセル、返金不可」という条件が付きます。
私たちの場合、妻の仕事や家の都合で急な予定変更が発生することがあります。そのため、90日前割引を選んでしまうと、旅行の計画を変更せざる得なくなった際に一円も返金されないことになります。よって、20%のディスカウントを諦めてでも、通常価格でキャンセル可能なプランを選ぶようにしています。得られないディスカウント分の料金は急な変更にも対応できる保険料と割りきっています。柔軟性の確保が、私たちにとってはそれ以上の価値を持つのです。
子どもの教育と選択肢の価値
この「選択肢の価値」という考え方は、親の教育行動にも反映されていると感じます。よく「勉強して良い学校に行きなさい」と子どもに言うのも、親が無意識のうちに選択肢を増やす価値を見出していると言えます。
良い学校を出ることで、将来の就職先の選択肢は広がります。大企業への就職も可能になりますし、新進気鋭のベンチャー企業を選ぶ道も開けます。さらに、質の高い教育を受けることで、起業という選択肢さえ生まれるかもしれません。より良い学校での教育が、未来における選択肢を広げる「オプション」を作ることだと考えると、親として勉強を勧める理由も改めて納得がいきます。
私自身、子どもの未来の選択肢を広げるために、教育への投資の価値を重視していました。もちろん、子ども自身がどの選択肢を選ぶかは最終的には本人次第です。しかし、選べる可能性をたくさん持てることは、子供の可能性を広げることににつながります。
食品スーパーと柔軟性
スーパーでの食料品の買い物も、選択肢の価値を考えさせられる場面です。大量に購入すれば単価は確かに安くなります。でも、大量の在庫を抱えることで「使い切らなければ」というプレッシャーを感じますし、時には腐らせてしまうことも。例えば、じゃがいもをまとめ買いして、使いきれず芽が育ちまくり、傷んで無駄にしてしまった経験、ありませんか?
それに対して、少量ずつ買うとどうでしょう。一見割高に思えますが、必要な分だけを新鮮な状態で使えるというメリットがあります。この「柔軟性」が、自分にとっては大きな価値をもちます。特に食材の場合、無駄を出さずに使い切れるほうが気分もスッキリしますし。
さいごに
「選択肢の価値」を考えることで、私たちは未来の可能性に対応できる余地を残すことができます。目先の価格や効率だけではなく、未来の自分にとってどれだけの価値を生むかを考える。この視点を持つだけで、意思決定の質は大きく変わると思います。
選択肢を持ち続けるには、それ相応のコストがかかることが多いです。ただし、それでも、選択肢を持つことが未来の安心感や自由、あるいは新しいチャンスを生む可能性を広げてくれるのであれば、そのコストは十分に価値に見合うと言えるでしょう。
これからも、不確実な未来をなんとか生き抜くために「選択肢を持つ価値」を意識しながら、柔軟な生き方をしていきたいと思います。
以上になります。今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。